多言語化を支援するWovnがプライベートカンファレンスを開催。その概要を紹介
企業や組織の多言語化を支援するサービスを提供するWovnによるプライベートカンファレンスが、2023年2月16日に東京タワーの足元にあるスタジオで開催された。「GLOBALIZED」と題されたカンファレンスでは菅元総理大臣をスペシャルゲストに招いた訪日ビジネスに関するトークを皮切りに、株式会社TOKYO TOWERや東横イン、八芳園、三越伊勢丹、トリドールなどのエンドユーザーがセッションを担った。テクノロジー系のカンファレンスとは異なり、エンジニアよりもビジネスパーソンが多く参加しており、セッション後には名刺交換のための長い列ができるなど関心の高さを感じさせる一幕もあった。今回はそのカンファレンスの概要と丸亀製麺を展開するトリドールのセッションを紹介する。
●参考:GLOBALIZEDのアジェンダ
菅元総理のトークは、撮影も録音も不可という内容だったが、インバウンドを活性化し海外から日本にやってくる人に対してこれまでは来日人数でしか評価していなかったが、これからは「訪日客がどれだけ日本でお金を使うか?」という金額に指標を変更したことを踏まえて、人数に注目するのではなくもっと顧客単価を上げるための努力をして欲しいという内容だった。そのために必要な道具として多言語化が必要というのが、Wovnが用意したシナリオだ。
カンファレンス自体は2つのトラックに分かれ、それぞれ20分から30分という時間の中で訪日ビジネスや多言語化についてのセッションを行った。
「すべてのデータに母国語でアクセスできるようにする」WovnのCxOらによるセッション
WovnのCOOである上森久之氏と東京タワーの管理運営会社である株式会社TOKYO TOWERの代表取締役社長である前田伸氏のセッションでは、東京タワーのビジネスに触れつつ、Wovnのミッションなどが強調され「すべてのデータに母国語でアクセスできるようにする」というメッセージを確認した形になった。
またWovnのCEOである林鷹治氏と上森氏が行ったセッションでは、訪日ビジネスの推移などについて上森氏が紹介。ここでも菅元総理のスピーチを再度確認する形で「インバウンドビジネスは人数重視から訪日客が日本で使う売り上げ(5兆円)重視にシフトしたこと」などを紹介した上で、林氏はWovnが提供する今後の新機能などについて概要を説明した。
ここでは従来の多言語化が主に中国からの旅行者に注力していたものを北米、東南アジア、ヨーロッパなどにも拡げることを挙げていることが注目される。すでに多言語化は中国向けからより広い言語、文化に適用することが必要となっていることがわかる。
このセッションで紹介されたAutopilotは、機械翻訳と人力の修正を組み合わせた言わば機械と人間の利点を組み合わせた新しい翻訳機能だ。Wovnは自身では機械翻訳そのものの機能は保持しないが、すべてを機械翻訳に任せずに人間がチェックと修正を行うことで、速度に勝る機械翻訳と速度ではコンピュータには勝てないが正確性や妥当性に勝る人力を組み合わせているところがポイントだ。
単にWebサイトの翻訳だけではなく社内で使用する文書にも適用できることは、企業の多言語化においては大きな意味があると思われる。
また会場には展示ブースも用意され、Wovn自身の展示に加えてStripeなどがパートナーとして展示をしていたが、参加者がエンジニア主体ではなかったためか、それほど賑わっていなかったようだ。
トリドールによる「『二律両立』を目指す飲食店DX」
後半はユーザーによるセッションとして株式会社トリドールホールディングスのCIO/CTOである磯村康典氏のセッションを紹介しよう。これはオンプレミスの自社サーバーを100%クラウドにシフトさせた事例紹介となった。トリドールは丸亀製麺を展開する外食企業である。
セッションタイトルとなっている「二律両立」についてはセッションの後に行った磯村氏へのインタビューでその意図を訊いているが、ここではレガシーなオンプレミス環境からいかにクラウドネイティブなシステムに移行したのか? という点に注目したい。
最初に解説したのはトリドールのデジタルトランスフォーメーションのビジョンだ。ここではレガシーなオンプレミスシステムの廃止を主たる目的として挙げている。
通常、デジタルトランスフォーメーションと言えば、既存ビジネスからITを活用した新規ビジネスへの参入などが注目されるが、何よりも既存のシステムがビジネスそのものを阻害しているならば、その障害を排除するというのもデジタルトランスフォーメーションであるという解釈であろう。
また域外と域内を区分するVPNではなく、域内であっても無制限に特権を付与しないゼロトラストの実装、バックオフィスを社内に抱えるのではなく、グループ企業が運営するBPOセンターにアウトソースするなどのポイントが挙げられており、何よりも社内で開発を行わないというのがクラウドネイティブなDXとは大きな違いだ。
このスライドの下半分に書かれているシステムの移行については、トリドールのDX戦略に関するトリドールの公式サイトに詳しく情報が掲載されている。
●参考:DX推進の主な取り組み 株式会社トリドールホールディングス
より具体的には2020年に自社データセンターが廃止され、パブリッククラウドやSaaSにシステム移管されたことがわかる。
またSaaS選定の基準についても汎用性が高い業務は自社のやり方に拘らずSaaSの仕様に合わせること、自社独特の業務はBPOセンター側に集約することなどを行っているという。
デジタルコンテンツに関するスライドでは、さまざまなテクノロジーが使われていることがわかる。ここでも多言語化はWovnだが、大きなDXの流れの中の要素の一つに過ぎないことがわかる。
コンテンツもCloudflare、Fastly、AWS CloudFrontなどが使われており、単にデータセンターを廃止しただけではないことがわかる。
以下の図はトリドールのDX戦略に関するPDFからの引用だが、データセンターだけではなく社員が利用するPCやPOSについても自社で保有しないなど徹底している。
またDXの進め方も責任者とDXチームに分かれて解説され、費用面や社内外への告知にも気を配っていることから、レガシーを廃止することによる抵抗やコスト面でのマイナスポイントを解消することなどかなり具体的に説明している。
Wovnの1 Dayイベントでは多くのユーザー企業がビジネスからみたインバウンド戦略を解説していたが、トリドールのレガシーを徹底的に廃止し、内製開発をしないというデジタルトランスフォーメーション戦略は、IT人材が少ない中小企業の参考になる内容だったように思える。より詳細に掘り下げた内容は、公開予定の磯村氏へのインタビュー記事に期待して欲しい。
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