CloudflareのデベロッパーリレーションのVPが来日、デベロッパーアドボケイトのKPIを解説
Cloudflareのデベロッパーリレーション&コミュニティ担当VPが来日。それに合わせてThink ITでは、日本のデベロッパーアドボケイト同席のもとにインタビューを行った。来日したのはRicky Robinett氏で、日本のデベロッパーアドボケイトを担当するのは和田裕介氏だ。和田氏のCloudflare入社は2023年4月、Robinett氏は2023年3月入社ということで、お二人とも新しく設けられたデベロッパーリレーション部門に新戦力として迎えられたということだろう。
CloudflareはCDNのベンダーとして知られているが、現在は1.1.1.1のようなセキュリティ分野の製品もリリースしている。またデベロッパー向けにCloudflare Workersというサーバーレスプラットフォームなども提供しており、すでにCDNの枠には収まらない企業ともいえる。
さらにRobinett氏は以下のブログの著者でもあり、デベロッパー向けにCloudflareを認知させていくのが仕事だ。
和田さんの肩書きを教えてください。
和田:私はデベロッパーアドボケイトという肩書きですが、実はデベロッパーでもあるんです。デベロッパーとしてはCloudflare入社前から開発を行っていたHonoというオープンソースのWebフレームワークの開発を今でも続けています。デベロッパーアドボケイトとしてはイベントでの講演などが主な仕事になりますね。
Robinettさんに伺います。デベロッパーリレーションのトップというわけですが、チャレンジは何ですか?
Robinett:やはり認知を拡大すること、ですね。
エンタープライズ系のITのイベントで多くのエンジニアとも接しますが、AWS、GCP、Azureなどを使っているという話は聞きますが、CloudflareをCDNではなくて開発のプラットフォームとして使っているというのはあまり聞きません。やはりエンタープライズ向けにはまだまだこれからということですか?
Robinett:そうですね。ただ最近では生成型AIの流行に乗ろうという企業が多くありますので、開発用のプラットフォームの中でもAIをどうやって開発、運用するのか? という課題については、Cloudflareは良い位置にいると思います。今、注力しているのはWorkers.AIという製品です。これはAPIを通じて生成型AIを使うためのツールですが、それをちゃんと理解してもらうことが必要です。生成型AIにはハルシネーションという欠点がありますが、Workers.AIによって多くのモデルにアクセスすることが可能です。
ハルシネーションを防ぐために単一のLLM(Large Language Model)ではなく分離されたモデルに企業が独自にデータを追加してドメインスペシフィックはモデルを作るというのがありますが、それはCloudflareで可能ですか?
Robinett:可能です。生成AIの使い方の最近の傾向としてはRAG(Retrieval Augmented Generation)としてチャットボットを作るのではなく、電子メールの問い合わせに対して回答を生成するというスタイルが見直されてきています。これはチャットだと瞬時に回答を生成してそれを返す必要があり、その場合、人間がその内容を検証するというのが難しいという側面があるからです。その点電子メールであれば、人間が後から質問と回答をレビューすることが可能になります。チャットで変な回答を返して顧客の信用を落とすよりはずっと良い方法ですよね。
パブリッククラウドのベンダーがさまざまなAIのサービスを発表していますが、Workers.AIの差別化のポイントはなんですか?
Robinett:GoogleやAWS、そしてAzureなどは自社のサービスの中で完結させようとしているように思えます。つまり自社のサービスにロックインさせるという発想なんじゃないですかね。これに対してCloudflareの発想は、どのモデルもCloudflareのプラットフォームで実行できますし、スケールアウトさせることができます。特にユーザーに近いエッジで実行させられる点がポイントだと思います。
また良くある課題ですが、生成AIはモデル生成のために大量のデータが必要になります。パブリッククラウドのケースですとそのデータサイズに対しての課金の他に転送量についても課金が発生します。一方CloudflareのR2というCloudflareのストレージではそれは発生しません。この差は大きいと思います。
デベロッパーアドボケイトの仕事を評価するKPIはなんですか? 最近は多くのプラットフォームベンダーがデベロッパーアドボケイトの役割を作っています。Cloudflareの指標を教えてください。
Robinett:デベロッパーアドボケイトのKPIは3つあります。一つ目はCloudflareのドキュメントサイトへのアクセス数です。製品やサービスへの認知が拡がれば、デベロッパーはまずドキュメントを読んでみようと思いますので、ドキュメントへのアクセス数増加はひとつの目安になります。二つ目は直接的に製品のダウンロード数が増えているか? ということですね。そして三つ目はセミナーへの参加者の数などのエンゲージメントの数値です。これが増えることでデベロッパーアドボケイトの評価となります。
1年後にまた日本に来てインタビューをした時にそのKPIがどうなったのかを教えてください。
Robinett:そうですね。日本での認知が変わっていることを願っています。
Cloudflareとして新設したデベロッパーアドボケイトのチームがどのような結果を残すのか、注目していきたい。
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