Open Source Summit North America 2026レポート 第2回

【OSS Summit North America 2026】ドローンのグラウンドコントロールシステムであるQGC(QGroundControl)に関するセッションを紹介

OSS Summit North America 2026、ドローンのグラウンドコントロールシステムであるQGC(QGroundControl)に関するセッションを紹介する。

松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

6:00

Open Source Summit North America 2026からドローンのグラウンドコントロールシステムであるQGC(QGroundControl)に関するセッションを紹介する。カンファレンスにはEmbedded Linux Conferenceが併催されていたことからドローンおよびその周辺に関するソフトウェアのセッションも実施されていたということだろう。QGCはマルチプラットフォームのアプリケーション開発のためのフレームワーク、Qtの上で構築されたドローン操作を行う地上局用アプリケーションだ。

QGCの最新アップデートを紹介

Qtはトヨタが車載システムのアプリケーションフレームワークとして採用していたが、今はGoogleが開発してオープンソース化したFlutterに移行している。Qtもオープンソースではあるが、商用ライセンスが複雑であるという。しかしながらQtにはリアルタイム通信や組込システムでの長い実績があり、ドローンの地上局の用途では最適ということだろう。

この稿ではQGCの最新情報と、ドローンの利用では最先端の中国の状況をSIGGRAPHのセッションと合わせて考察する。

QGC(QGroundControl)の最新情報をAscend EngineeringのAndrew Wilkins氏が紹介

QGC(QGroundControl)の最新情報をAscend EngineeringのAndrew Wilkins氏が紹介

QGCについての概要を解説したこのスライドでは「QGCとは何か?」について簡潔に解説している。

QGCとは何か?

QGCとは何か?

オープンソースのアプリケーション開発フレームワークであるQtをベースにしてWindows、macOS、Linux、Android、iOSというマルチプラットフォームで実行できるというのが最初に語られたポイントである。しかしセッションの中でWilkins氏は「iPhoneでQGCを使っている人には会ったことがない」と語っており、ドローンのコントローラーとしては圧倒的にAndroidが優勢のようだ。

iPhoneおよびiPadに向けてはDJIがプロプライエタリなドローンの完全なシステムを提供しており、ホビー向けにはDJIの製品が、それ以外のドローンと地上管制用にはAndroidとQGCの組み合わせが使われるという棲み分けのようだ。

さまざまなドローンを操作する基地局としてのQGC

さまざまなドローンを操作する基地局としてのQGC

この画面はGoogle Mapのような地上の写真に行き先や高度などのパラメータが設定されているのがわかる。

QGCのインターフェースを見せる

QGCのインターフェースを見せる

また実際のデバイスの写真も紹介し、ゲームコントローラーのような外見の機材が使われていることがわかる。

コントローラーのUIを紹介

コントローラーのUIを紹介

最新バージョンで追加された多くの新機能が紹介された。

さまざまな新機能を紹介。ジョイスティックの制御にはSDL3を使う

さまざまな新機能を紹介。ジョイスティックの制御にはSDL3を使う

コントローラーのジョイスティック関連のソフトウェアを全面的にリファクタリングして書き直したという。これによってタッチパッドやトラックボールも使えるようになり、コントローラーに付属するLEDの制御、バッテリーのモニタリングなども可能になった。これまで2系統必要だったAndroid向けのコードベースを書き直して統合したという。

SDL3を使ってコントローラーのジョイスティック回りのソフトウェアを書き直した

SDL3を使ってコントローラーのジョイスティック回りのソフトウェアを書き直した

アーカイブフォーマットの追加

アーカイブフォーマットの追加

これまではxzとzlibアーカイブだけがサポートされていたが、zipやtarなどのアーカイブフォーマットを追加。これによってファームウェアなどの更新が容易になると説明。これはlibarchiveというライブラリーのサポートを追加したことで可能になった。

Lua言語によるスクリプティングも可能に

Lua言語によるスクリプティングも可能に

Lua言語によるスクリプティングも可能になった。これはArduPilotというドローン上で稼働するsoftwareに限定した機能であると説明。

他にもプロ用とノービス用に機能の見せ方を変えられる設定などについても説明を行った。

ビデオストリーミングもプラットフォームごとに最適なソフトウェアを使えるように

ビデオストリーミングもプラットフォームごとに最適なソフトウェアを使えるように

ドローンから送られてくる動画データについても、これまではOpenGLがすべてのプラットフォームで唯一のソフトウェアだったが、これからはWindowsであればDirect3Dが、LinuxとAndroidであればVulkanが使えるようになったという具合だ。ただしこちらに関してはSoonという単語が使われていることからわかるように現時点で可能になっているわけではなく、これからの予定ということになる。

GPUとCPUでデータをやり取りしていたものがGPUのバッファーからゼロコピーで送信されるようになる

GPUとCPUでデータをやり取りしていたものがGPUのバッファーからゼロコピーで送信されるようになる

2025年12月のSIGGRAPHで見た中国のドローン事情

ここまでドローンを単体で動かす発想で地上局、ドローン本体のソフトウェアなどについて解説を行ってきた。

筆者が2025年12月に香港で行われたSIGGRAPHに参加して衝撃を受けたのは、中国ではすでにドローンを社会のインフラとして捉え、地上1000メートル以下の空間を多数のドローンが飛び交うことを想定して、管制システムを作り上げていることだ。つまり「単体の機体がどう動くか、その制御のための新機能は何か?」といういわばミクロ的な視点ではなく、社会の交通網(配送網)の一つとして捉え、それが産みだす経済に注目していることだろう。

QGCが1台のドローンの制御を主眼としている間に、中国では多数のドローンが飛び交う状況を地上の自動車、トラック、タクシーなどによる経済と同等かそれ以上の経済的インパクトがあると考えて、インフラ整備を行っている。1000メートル以下で飛び回るドローンを安全に管制しなければいけない、そのために通信事業者もドローンメーカーも規制当局も一丸となって邁進しているのだ。

ちなみに深センで行われているドローン管制システムは、移動通信事業者が5Gのネットワークをドローン用に提供、深セン市街の建物などのデータをデジタルツインとしてコンピュータ上に実装し、ドローンの管制を行っているという。

この管制システムがあるおかげで、視線外(Beyond Visual Line of Sight)での飛行が許可されているという。つまり肉眼でドローンを確認できなくても管制システムによっていつ・どこにドローンが存在しているのか? これが把握されているからこそ可能になった飛行方法である。

これによって食品の配送などが月間数万件というレベルで実現しているという。同時に医療の現場でも効果を出しており、血液や検体の輸送も地上経路での渋滞を避けられることで効果を出している。

また官民一体のシステムという意味では、飛行に関する許可についても管制システム上でドローンの機体情報と飛行計画をあらかじめ提出することでAIが安全性を検証し、ワンクリックで承認が下りる仕組みが実装されているという。また中国を訪れた人なら眼にしたことがあるであろう、竹を組み合わせて足場を作る建設現場などについて、ドローンの飛行を妨げる可能性がある機材を利用する場合には必ず届け出が必要になっており、竹の足場も例外ではないという。しかも竹の物理性質上、ドローンの赤外線センサーでは障害物としての認識が難しいため、竹の足場がある現場には原則、近寄らない、10メートル以上離れた航路を飛行するという。

この中国の進化の凄さを知ってしまうと「ドローンの地上局の新機能が何か?」というのが小さなトピックに思えてしまうのは仕方ないだろう。

深センの低空エコノミーに関する記事は以下を参照されたい。

●参考:SIGGRAPH Asia 2025開催。キーノートから低空ドローンの管制システムを解説するキーノートを紹介

実際のところアメリカのテキサス州ではAmazonがドローンによる配送を実験的に行っているし、WalmartとGoogleの親会社Alphabetが共同で提供する配送サービス、Wingも注目されている。この点深センは、政府主導でさまざまなステークホルダーを強力に束ねて推進していることが違いだろう。

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