図解からユースケース抽出する!
VGAの調整
「3.2 統合」「3.3 分解」は、これまでの作業で読み取った業務内容に基づいて分析者が判断し進めていく。ただし、分析者が「3.2 統合」「3.3 分解」の作業を進めていく上で、「この名詞は一体何を意味しているのか?」「この名詞とこの名詞は本質的には同意語ではないか?」「この動詞は複数の作業を含んでいるのではないか?」などといった疑問点が多数出てくるはずである。
分析者は基本的に業務手順書の範囲内でしか業務を理解していないため、それ以外のことを知らないと上記の疑問に対する判断ができない可能性がある。
このような時、SBVA法では実際の業務担当者である記述者と作業しているため、すぐ確認できるわけである。もしかしたら、記述者自身も分からない可能性もあるかもしれない。その時はさらに業務に詳しい上司へ確認するなど、記述者自身も改めて自分の業務に対する理解を深めていくことができる。これがさらに良いシステムを作っていく要因になるのである。
それではここで、前回の「大学における事務処理(成績処理)業務」の分析の続きを進めよう。同じ名詞要素と関係する複数の動詞要素や、業務手順書における意味的な共通性を持つ動詞要素は、統合の候補になる。前回の業務鳥瞰図を見て欲しい(図2)。
大学における事務処理業務の分析
動詞要素「請求する」「支払う」は、名詞要素「手数料」に関係するため、これらの動詞で動詞要素群を作成して統合する(図2の囲み)。また、名詞要素「学生証」「用件」「担当窓口」「履修申込書」は、「初めて講義履修登録をするのに必要な情報」であると判断したため、名詞要素群を作って統合する。
この名詞要素群を作成したことで、動詞要素「提示する」「聞く」「決める」「移動する」「記入させる」が「1つの名詞要素につながる複数の動詞要素」の条件に該当するようになったため、これらの動詞要素を統合する。
次に分解の例を示す。名詞要素を分解するためには、その名詞要素につながっている動詞要素が手掛かりとなる。その名詞要素が主語としてつながっている動詞要素においてどのような役割を担っているかを考える。1つの名詞が主語として複数の動詞とつながっている場合、複数の役割を担っていることが多い。これを役割ごとに分解するのである。
今回の例では、「学生課担当」と「教員」が多くの動詞と主語としてつながっているため、これらを役割ごとに分解する。「~係」となっている黄色の名詞要素は「学生課担当」を分解したもの、水色の名詞要素は「教員」を分解したものである。
以上のような作業を業務鳥瞰図上の要素について1つ1つ検討していく。ただし、動詞要素の分解を行うと、業務手順書に作業記述文の追加が必要となる。これと前回の「図解化によるフィードバック」で解説した孤立した名詞要素の修正がSBVA法の全体プロセスにおける「4. 修正」に該当する。