流行色はなぜ生まれるか
「流行色」は感じるもの
「流行色」とは、書いて字のごとく流行している色、あるいは、これから流行すると予測されている色のことを言います。
トレンドカラーという方がなじみのある人もいるでしょう。いずれの呼び名にしても、「流行色」とは何と聞かれて明快に答えられる人は少ないと思います。
デザイン関係者の中には「デザインをする時、流行(色)を一切考えない」と豪語する人もいます。「流行色」に深くかかわる筆者としては、声を大にして「そんな人はいないはずだ!」と叫ばなければならないところでしょうが、実はこの考え方は一理あると思っています。
というのは、誤解を恐れずに言えば、「流行色」とは頭で分かることではなく、感じることなので、感じていてもうまく言葉では説明できません。前述のデザイナーは、「流行色」を感じているけれど「考えて」いないために、色を決定した理由を「流行」のせいにはしたくないのでしょう。
とはいえ、私たちはこの地球上で同じ時代を生きていて、情報網は日々発展し情報は瞬時に世界を駆けめぐります。情報の網の中に地球全体がすっぽりおさまりつつある現代では、あらゆることにおいて互いに関係し合いながら生きていて、その網の中に暮らしている人々は、多かれ少なかれ「流行」の波に浴していることになります。
つまり、情報網が行き渡った先進国に住む人であれば誰でも「流行」をカラダと心で感じながら生きていると言えるでしょう。逆に言えば、「流行色」とは人々の気持ちの表れであり、「時代の気分」が現れ出たものです。
何%を占めれば「流行色」になるのか
ある色が流行していると感じる時、その色は市場の中でいったい何%位を占めるものなのでしょうか。
図1-1は、JAFCA(財団法人日本ファッション協会 流行色情報センター)で1980年代中ごろからの調査結果を総合し、分析したものです(文化女子大学色彩学教授 大関 徹氏により分析)。白、黒、紺、茶色(ベージュ、ゴールドを含む)、グレー(シルバーを含む)で75%を占めています。この結果は服飾市場の動向ですが、プロダクツにおいてもほぼ同様です。
よくマスコミなどで「流行色」と言われる、オレンジとか紫色は、大ざっぱに言えば残り25%の中にあります。そしてその25%はたくさんの色で分割されるわけだから、各色の比率はとても小さくなります。
2008年冬晩秋の現在、東京、ミラノ、パリで紫色が大流行していますが、実際の市場ではどのくらいの割合になるのでしょうか。JAFCAの調査結果と長年色事に携わってきた筆者の感覚から、誰が見ても「流行している」と感じる状況で、おおむね3%~5%程度です。
時代や商品分野によっては、白や黒が大流行することがある。白や黒は前述したように全体の75%の中にある色なので、流行すると非常に大きな数値を示します。
図1-2は、日本市場における自動車の色彩動向です。その中の1980年代中盤に注目すると、なんと市場の9割近くを白が占めるという結果になりました。トヨタ自動車の「スーパーホワイト」が自動車市場に白を流行させた火付け役となったわけです。
スーパーホワイトが登場するまでの白は、黄みがかっていて純白ではなかったので、純白のスーパーホワイトは自動車市場に驚きを与えました。当時はちょうどディズニーランドがオープンしたばかりの時期で、大きな駐車場を上から見た写真が本当に「白」かったのを覚えています。
図1-2の日本市場の色彩動向の波は大きく変動していますが、ヨーロッパや米国の色彩動向でこのような極端な動きは表れません。欧米では、例えば、赤好き、青好きといった層が常に存在し、日本のように何かの理由で一斉に同じ方向に動くと言うことが少ないからです。
言い換えれば、日本の市場は「何かの理由」に対して敏感に反応する市場とも言えます。
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