色が引き出す感情効果とは
「意味」のイメージ
今回、紹介してきたことは、カラーデザインの技術と言えますが、最終的に人の心をつかむためには、そこに「意味」があるかないかが大切です。
私たちの脳は、見えたものに意味を見つけ出そうとします。そして、それは自分にとって安全か、危険か、好きか嫌いかなどを評価します。つまり、商品の色彩や、伝えたい画面の色彩に、どのような「意味」を持たせるかによって注目される度合いが変わってくるのです。
ここで、色彩イメージの表現方法を整理しておきましょう。大きく分類すると以下の4つに分けられます。
1つ目は、色彩の「見栄え」に関するイメージです。
それは、ある色が派手であるとか地味であるとか、軽く見える、重く見えるといった色彩の「見栄え」に関する単純反応を示すイメージで、さえた色調は派手に映り、にぶい色調や暗い色調は地味に映ります。明るい(明度が高い)色は軽く見え、暗い色は重く見えます。
2つ目は、色彩の「情緒」を示すイメージです。
それは、人が感じる喜怒哀楽の感情を示すイメージで、喜怒哀楽のイメージは主に色相の違いで表現されます。喜びや、楽しい感じは、黄色、赤からオレンジの暖色系、怒りは暗い紫や黒、暗い赤などで表現される場合が多く、哀感はどちらかといえば寒色系(ブルー、紫系、青緑系)で表現されます。
3つ目は、生活環境とのかかわりを示すイメージです。
それは、都市、田舎などの場所のイメージや、仕事、遊び、日本の伝統など、生活環境やものに付随するイメージで、例えば、国のイメージでは、フランスを思わせる色としてはピンク、ライラック(ライラックの花びらに見えられるような淡いパープル系)、ローズピンク、ベージュが挙げられています。イギリスは、ネービーブルー、グレー、茶色、ダークグリーンなどです。
4つ目は、色彩の好き嫌いを左右する「評価」を含んだイメージです。
それは、「きれい」「好き」「嫌い」といった評価を示すイメージで、生活環境とのかかわりを示すイメージの生活環境、時代性、民族性、文化などと密接な結びつきを示すイメージです。
「意味」のイメージは、生活環境とのかかわりを示すイメージと「きれい」「好き」「嫌い」といった評価を示すイメージと密接な関係があります。
色にメッセージを込める
「流行色」は「時代の気分」が色となって表れたもので、そこには言葉に表しにくい、人々が感じている「意味」が表れています。
例えば、ある時代に黒と白が流行し、再び同じ色が流行したとしても、生活環境、時代が変われば、その色に盛りこまれた「意味」が違っています。
図3-1は、1980年代中期から後期にかけて黒が流行した時代に取材した展示会のインテリアの写真です。図3-2は、2007年に取材したミラノサローネの写真で、やはり黒が流行していた時の写真です。どちらも黒と白で構成されたインテリア空間ですが、印象が違います。ここには、時代の気分が表れているのです。
1985年のつくば万博開催に象徴されるように、日本はその技術力の先進性を世界に誇っていたころです。2つを比べると、図3-1は、直線的なラインが使われ、機械的でクールな印象を与えます。一方、図3-2は浮世絵をモチーフにしたもので、黒が持つイメージの中で「セクシー」なムードを全面に表現したものです。有機的な曲線が強調された、生き物としての「人間」を強く意識させられるデザインです。
人は、それぞれの色に意味を感じ取ろうとしています。色彩は、最終的に人の心に訴える重要なメッセージです。情報提供者側は、意味を込めて色彩を使うことによって、人々を振り返らせることができるのです。
次回は、2009年に人を惹きつける「流行色」について紹介します。
【参考文献】
社団法人日本流行色協会編『色のイメージ事典』同朋舎出版(発行年:1991)