建物を描くのはむずかしい?
影をつける
立体の描き方がだいぶ分かってきたところで、立体感をつけるためのもう1つの要素として、影について考えてみます。図3と筆者が実際に描いてみたサンプルの動画(http://tedia.jp/movie/item.php?id=c_WV46oGYTk)を見ていきましょう。
立方体はパースを描くことで立体感をイメージしやすいのですが、球や円柱は平べったく見えてしまうこともあります。こんな時、影の力を借りると表現の幅が広がります(図3-1)。
影を落とすためには、光源の位置を1カ所決めます。だいたい太陽や電球がある場所をイメージすればいいでしょう。光源が真上に来ることもなくはないのですが、影がほとんどできなくなり、絵として影を描く意味がなくなってしまいますので、少し左右にずらした方が無難です(図3-2)。光源の高さによって影の長さも変わるはずです。
ところで、影には2種類あることを知ってましたか?
地面に落ちる影と、そのもの自体にできる影です。物の設置感を出すのが前者、立体感を出すのが後者です(図3-2)。描き分ける必要もないと思いますが、今どちらの影を描いているのか意識しながら描くと、より立体的に、そして設置感を出して描けるでしょう。
もうひとつ、影は雰囲気を演出することもできます。立体感を出す「そのもの自体の影」は、物を隠すことで、ちょっと不気味な雰囲気を出すことができます(図3-3)。
そして時には、影を省略して描くこともあります。正面から建物を描いた時のように、「顔」だけに注目してほしい場合などは、そのほかの情報が邪魔になりますから影を描きません。影があると上記のような演出が入ってしまい本当に見せたい物がぼやけてしまうのです。
実際にイラストの中での影の見え方を観察してみましょう(図3-3)。どんな時にどう影を使ったらよいのか、ヒントになるはずです。
空気遠近法
影のできかたを見てきましたが、この影を使って遠近感を出すこともできます。筆者が実際に描いてみたサンプルの動画(http://tedia.jp/movie/item.php?id=6hUF07QtfoE)も見てみましょう。
私たちの目は手前の物ははっきり見えて、遠くの物はぼやけて見えます。これは視力のせいもありますが、自分と対象の間にある空気が、光と影をぼやけさせている現象が影響しています(図3-4)。これを利用して手前と奥を描き分ける方法を「空気遠近法」と言います。
白から黒への明度の差をコントラストと言います(図3-5)。コントラストが強ければ手前に見え、弱ければ遠くに見えます。遠くがぼやけて細かい部分がよく見えないことを利用して、手前をはっきり細かく、遠景にあるものはシルエットだけで表現してみます(図3-6)。色をつける場合、影だけでなく色の鮮やかさ(彩度)も、奥に行くほど下げるといいでしょう。
ところで、遠くにある物をはっきり描くことでわざと平面的に見せることがあります。パースについても、わざと急な角度にしたり、逆パースにしたりして遊ぶこともあります。描き方を理解してうまく描けるようになってから、次のステップとしてぜひチャレンジしてみてください。世界が広がると思います。ただ、最初にこれをやると混乱してしまうので、まずは基本を練習してくださいね。
今回の「パース」や「影」といった多くの要素を、一度にイラストに生かそうとすると混乱してしまうかもしれません。簡単な形から、1つずつのんびり練習しましょう。昨日描いた家に、今日影をつけて、明日裏山をうっすら描き足してもいいかもしれません。難しい技法を取り入れていても、らくがき気分を忘れずに。気楽に描くことが大切です。
次回は、今まで練習してきたことをWebデザインに生かすノウハウを紹介します。どうぞお楽しみに。