人間を描くのはむずかしい?
人の形を知る
今回は、いよいよ人間を描いてみます。人を描くのは一見とても難しく感じるかもしれませんね。それは、人の形や動きがとても複雑に見えるからです。どうしてそういう形をしているのか、どうしてそういう動きをするのか、その仕組みを知ることで自信を持って人間の形を描くことができるようになります。ここではまずその仕組みを見ていきましょう。
それでは、図1と筆者が実際に描いてみたサンプルの動画(http://tedia.jp/movie/item.php?id=btcknDwfB58)を見ていきましょう。
人の体にはホネが入っています。その周りに筋肉や皮がついていて、さらにその上に服を着ます。人の形は、この中心にあるホネによる影響がとても大きいのです。専門的な名称や付き方を覚える必要はありません。ホネがどのように私たちの体に入っているのか、図1-1を見てみましょう。
ホネとホネの間には関節があって、そこを軸に腕や足や腰などが曲げられます。自分で体を動かしてみるとよくわかりますが、関節によって動かせる方向が決まっています。首/肩/腰/足の付け根/手首/足首/手の親指は360度回転できますが、ほかの部分はそうではありません。実際に絵に描く時にもこの点に注意しないと、ホネが折れた人になってしまいます。
人を描く時にこのホネをイメージすると、その形を理解しやすくなります。ひとつひとつホネを描くのは大変ですから、ラインで例えます。この「ホネのホネ」を使って、手足の長さや曲がる方向、重心のバランスなどを考えてみましょう。ラインと丸だけでバランスよく人の形を描けるようになってきたら、これをベースに顔や体を描いていきます(図1-2)。
飾り文字を描く時に、基本の文字を描いてそこに厚みを描いていきました。考え方は人を描く時でも同じです。全体の予定を決めてから具体的なところを描いていった方が安心ですし、わかりやすいです。また、自分の中である程度わかっていると、のびのび手を動かすことができます。
そして、やはり「丸チョン」を基本に形を描いていきます。頭は丸で、体や手足は四角や楕円(だえん)、指はちょっと難しければ、ミトン型で描きます。手を描く時は親指の方向に注意してください。
ここでは、リアルに描写することよりも、描きたいポーズや表情を表現する方に重きを置きます。シンプルな線で、勢いを大事にします。
顔を描く
人を描く中でも、顔が一番難しいと思っていませんか。
確かに、顔の作りは複雑で、パーツもたくさん載っています。でも、人間の頭蓋骨(ずがいこつ)を思い出してください。だいたいみんな同じ形です。ですから、私たちの目や鼻の位置はだいたい決まっているのです。そのバランスがわかれば、実は簡単に顔を描いていくことができます。
頭の形となる丸を描きます。目の位置は上3分の1ぐらいに思われがちですが、実はだいたい真ん中にあります。目と口の間ぐらい、横から見ると少し後寄りに耳がついています。これが基本の形です(図1-3)。
ここから少し位置をずらすことによって、顔の印象をいろいろ変えることができますし、目や口の形を変えることで、感情を表現することもできます。輪郭を丸から四角や三角、楕円(だえん)に変えても面白いです。いろいろな顔を描いてみましょう。
また、髪の毛はこの丸に乗せるような気持ちで描いていきます。実際には頭は球ですから、丸い形をイメージしながら描くと自然になります。丸いことがわかっていれば、アフロでもドレッドでも三つ編みでも、きっと自信を持ってセットすることができるでしょう。