3つのファイルサーバ「NFS & FTP & Samba」

2006年12月12日(火)
古賀 政純

UNIX/Linuxクライアント向けのNFSサーバ


   ファイルサーバはその名の通り「ファイルを保管しておくサーバ」で、ファイルの保管内容によって利用するサービスの種類も異なってきます。

   NFSサーバは「Network File System」によってファイルの共有を行うファイルシステムで、主にクライアントがUNIXやLinuxの場合に利用されます。UNIXやLinuxはネットワークを通じてリモートからNFSサーバをマウントすることができます。

   NFSサーバは主に、科学技術計算用途のスーパーコンピュータやBeowulfクラスタのファイルサーバ、ブレード管理を行うサーバなどの環境で利用されています。スーパーコンピュータのファイルサーバは非常に大規模なFibre Channel接続の外部ストレージを備えていることが多く、これをNFSサービスとして他のクライアントに提供するといった運用が行われる場合もあります。

   次の図は、最も基本的なNFSサーバとNFSクライアントの関係です。
最も基本的なNFSサーバとNFSクライアントの関係図
図1:最も基本的なNFSサーバとNFSクライアントの関係図
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   これに対してBeowulfクラスタや研究施設におけるNFSサーバでは、次の図のような構成を行うことがあります。

BeowulfクラスタにおけるNFSファイルサーバの構成例
図2:BeowulfクラスタにおけるNFSファイルサーバの構成例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   Beowulfクラスタでは「計算ノード」と呼ばれるコンピュータファームがNFSクライアントとなり、計算結果などのユーザデータをNFSサーバに格納します。NFSサーバはコンピュータファームからのデータをストレージに格納する重要な役目を担います。

   図2ではファイルサーバと管理サーバが分離されていますが、運用形態によっては兼用した構成も多く見られます。管理サーバは、計算ノードに対して一斉電源ON/OFFを指示したり、インターコネクトドライバの一斉ロードやコマンドラインの一斉実行などを行います。

   兼用した場合、サーバの負荷状況によってはファイルサーバを使ったバックアップ、デプロイなどのメンテナンスへ影響を及ぼすこともありますので、ファイルサーバの負荷とシステム管理効率、運用方法を十分検討する必要があります。共用する場合には、むしろファイルサーバのシステム要件を十分考慮する必要があります。

   特にスーパーコンピュータに見られるような何百TBにもなるユーザデータを格納する高負荷のシステムでは、ファイルサーバの性能、ストレージ容量、ユーザデータの可用性を十分検討しなければなりません。NFSファイルサーバの検討項目としては、CPU数やメモリ容量、ディスク性能、OSのファイルシステム制限、NFSパフォーマンスなどがあります。事前に十分なエージングテストを実施することをお勧めします。


NFSサーバ/クライアントのまとめ


   次の表はNFSサーバとNFSクライアントのについての特徴をまとめたものです。

  • NFSサーバは主にUNIX/Linux環境のみで利用される場合が多い
  • 科学技術計算用途のBeowulfクラスタなどで広く利用されている
  • LinuxやUNIXクライアントからファイルシステムの一部をリモートマウントできる
  • NFSサーバは、「ネットワークインストール」向けのサーバとして有用
  • ブレード管理ソフトウェアであるRapid Deployment PackやInsight Controlでは、NFSサーバを組み合わせて利用できる
  • NFSのチューニング項目は多種多様であるため、NFS性能試験を十分に行う必要がある
  • ヒューレット・パッカードでは、従来のNFSの性能を大幅に上回るScalable File Share(SFS)を提供している。
  • 主な設定ファイルは/etc/exports

表1:NFSサーバのキーポイント

  • Red Hat Enterprise Linux 4 WSをNFSクライアントとして利用可能
  • High Performance Computing(HPC)用途ではブレードなど、大量の計算サーバをNFSクライアントにすることが多い
  • 主な設定ファイルは/etc/fstab
  • 主なコマンドはmount

表2:NFSクライアントのキーポイント

日本ヒューレット・パッカード株式会社 プリセールス統括本部 ソリューションセンター OSS・Linux担当 シニアITスペシャリスト

兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバーのSE及びスーパーコンピューターの並列計算プログラミング講師を担当。科学技術計算サーバーのSI経験も持つ。2005年、大手製造業向けLinuxサーバー提案で日本HP社長賞受賞。2006年、米国HPからLinux技術の伝道師に与えられる「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。日本HPプリセールスMVPを4度受賞。現在は、Linux、FreeBSD、Hadoop等のOSSを駆使したスケールアウト型サーバー基盤のプリセールスSE、技術検証、技術文書執筆を担当。日本HPのオープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストとして講演活動も行っている。Red Hat Certified Engineer、Red Hat Certified Virtualization Administrator、Novell Certified Linux Professional、EXIN Cloud Computing Foundation Certificate、HP Accredited Systems Engineer Cloud Architect、Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack、Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoop認定技術者。HP公式ブログ執筆者。趣味はレーシングカートとビリヤード

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