RTCとRTミドルウエア
2種類のRTミドルウエア(1)~OpenRTM-aist
さて、皆さんは意識していないかもしれませんが、1ページ目のチャットプログラムRTCは、RTミドルウエアの上で動作しています。
ここで、RTミドルウエアについて少し詳しく説明しておきましょう。図2をご覧ください。
現在、皆さんが使うことができるRTミドルウエアは、2種類あります。独立行政法人産業技術総合研究所が作成・公開しているOpenRTM-aistと、株式会社セックのOpenRTM.NETです。RTCの仕様はOMGで公開されているとおりのオープンな仕様ですので、誰もがRTミドルウエアを作成できます。株式会社セックもOpenRTM.NETを独自実装しています。
まずは、RTミドルウエアの本家、OpenRTM-aistから見てみましょう。これは、前回お話ししたとおり、2002年からの国家プロジェクトの中で作成され、2004年にファーストバージョンOpenRTM-aist-0.2.0が公開されました。その後、OMG仕様を先取りしてOpenRTM-aist0.4.0が公開されたのが2007年。現時点での最新版は、OpenRTM-aist-0.4.2です。さらに、2009年5月には、OpenRTM-aist-1.0.0 RC1(Release Candidate)が公開されています。
図2からもおわかりいただけるとおり、OpenRTM-aistは、LinuxやWindowsなどの複数OS、またC++やJavaなど多くの開発言語をサポートしています。現在は、一般には公開されていませんが、TRON版とVxWorks版も開発されています。これらのRTOS版が公開されると、組み込み機器も含めて主要なOSの上でRTCを動かすことができるようになります。OpenRTM-aistは、RTミドルウエアのマルチプラットホーム対応を進めているのです。
2種類のRTミドルウエア(2)~OpenRTM.NET
RTミドルウエアの本家はOpenRTM-aistですが、2002年からこの技術に触れている株式会社セックでもRTミドルウエアを開発しています。それがOpenRTM.NETです。1ページ目(http://thinkit.jp/article/962/1/)のチャットプログラムの下で動作しているのがこれです。
このRTミドルウエアは、前回触れた「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」の研究開発成果として作成しています。名前が示すとおり、.NETフレームワーク上で動作するRTミドルウエアです。.NETフレームワークがあれば、どんな環境の上でも動作します。.NETというとWindowsをイメージする方が多いと思いますが、オープンソースの.NET Framework互換環境のMonoを使えば、OpenRTM.NETは、Linux上でもMac上でも動作します。
開発言語は、C#とVisual Basicをサポートしていますので、すぐにお試しいただけると思います。インストールも1ページ目に示したとおり、簡単にできます。
このミドルウエアの良いところは、.NET環境の豊富なクラスライブラリを使ってRTCの開発が行える、というところです。したがって、GUIを必要とするRTCやWebと連携したRTCの開発が容易となります。これらをOpenRTM-aistで作ろうとすると少し工夫が必要ですが、OpenRTM.NETなら手間要らずで済みます。
一方、OpenRTM.NETの弱点はリアルタイム制です。ロボットを動かすためには、msecオーダーでの実時間制御が必要となりますが、OpenRTM.NETでmsecオーダーの時間は保証できません。
上記のとおり、OpenRTM-aistとOpenRTM.NETには、それぞれ一長一短があります。ですから実際には、適用場面に応じて使い分ければいいでしょう。例えば、実時間制御はOpenRTM-aistで行い、画面周りはOpenRTM.NETで行う、という形です。
RTミドルウエアは、RTCが相互接続可能なように作られていますので、OpenRTM-aist上のRTCと、OpenRTM.NET上のRTCを繋げて動作させることができます。もちろん、OpenRTM-aistの異種プラットホーム間でも同様です。この相互接続性がRTミドルウエアの1つの特徴です。