Zabbix Summit 2025から、日本におけるパートナー企業であるSCSKのエンジニア曽我幸寿氏による「Zabbix × AI Agent」というセッションを紹介する。SCSKはこのカンファレンスのシルバースポンサーとして協賛している。またプレゼンテーションを行った曽我氏の上司にあたる谷川孫康氏も現地で参加していた。
このセッションは2日目の14時過ぎという遅い登壇となったが、他のヨーロッパのパートナーが主にSAPの監視やHP OpenView、IBM/Tivoli Netcoolからの移行という従来型の監視ソリューションを発表していたのに比較して、生成AIを積極的に使っていこうという意欲的な内容となった。
曽我氏はまず運用管理の業務の課題について解説。ここではエンジニア不足とZabbixの構成が複雑化していること、インシデント発生時からの素早いリカバリーが必要であることなどを挙げた。
また生成AIを使うことで、これまでマニュアルで操作していた作業の生成AIによる代替、生成AIを使った構成変更の自動化、そしてインシデントからの復旧のアシストといった機能を実現できると説明した。
最初に紹介した生成AIの応用例は、Zabbixのダッシュボードに生成AIとのチャット機能を組み込んでチャット経由でZabbixの操作をアシストするというものだ。
ここではZabbixの監視対象となるサーバーを追加する手順を丁寧に指示している例を使って説明を行った。この例では複数のサーバーを同時に追加する操作についても、生成AIがバックグラウンドで処理を行うと解説された。
次の例では特定のホストグループに属するサーバーのマップをリンク付きで表示するという操作を質問。
次はもう少し複雑な操作を生成AIにアシストさせるという例だ。この例ではPingを用いたサーバーに対するモニタリングをアイテムとして作成し、そのアイテムに対してトリガーを作成するという操作となる。
最後の例はエラーメッセージをチャットで問い合わせるというものだ。これもチャットを通じて生成AIに質問することもできるが、曽我氏は生成AIに対する問い合わせをスクリプトとして保存することで再利用が可能になるという使い方も見せて、生成AIを用いたさまざまな使い方が可能になることを示した。
最後にまとめとして、生成AIは操作のアシスタントとしての使用は有効であるが、構成の自動化はそれが正しいのかを判断する経験と知識がユーザーに必要となること、またインシデントのアシスタントとしては使えるもののまだ改善が必要であることなどを説明した。
また将来への期待として、インフラストラクチャーのコンシェルジュとして使えるようになること、モニタリングに予測機能を実装すること、世界中のZabbixユーザーのモニタリングの経験知を匿名化して利用することでより高度なモニタリングを実装して欲しいことなどを挙げた。最後のポイントはZabbix Cloudの利用が増えれば実現の可能性は高まるだろう。しかしオブザーバビリティをSaaSで提供しているDatadogやNew Relicなどがまだその領域には達していないことを考えれば、若干希望的な観測かもしれない。
生成AIをモニタリング運用に組み込むという近年流行している手法をパートナーとして提案した形になったが、本家のZabbix自体が生成AIを活用することについてはかなり保守的な姿勢を見せていることは、SCSKにとっては逆風かもしれない。実際、初日のキーノートでCEOのAlexi Vladishev氏は、Application Performance Monitoringや複雑なイベント処理、モバイルアプリケーションなどについては解説を行ったが、AIについてはその単語が将来計画として出てくる程度であった。
未確定なことについては大風呂敷を拡げない真面目なZabbixが生成AIについてこれからどう取り組んで行くのか、SCSKとともに注目したい。SCSKのセッションは以下から参照できる。
●SCSKのセッション:Zabbix × AI Agent
- この記事のキーワード