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OpenStack Foundationは他OSSとの“Integration”を目指す 事例は大規模化とKubernetes連携が目立つ

2017年11月15日(水)
本橋 賢二鳥居 隆史

11月6日(月)〜8日(水)にオーストラリアのシドニーにて16回目となるOpenStack Summitが開催されました。今回は現地で参加したNECグループ、NTTグループのメンバーが、最新の情報や現地で感じたことなどをレポートします。まず1回目は全体概要とキーノートを紹介します。

はじめに

注目の参加人数ですが約2,300名と、前回5月に開かれたボストン(5,000名)の半分以下となりました。グラフにすると以下のようになり、大幅に減ったのがわかります。これだけ減るとさすがにネガティブに思えてしまうのですが、関係者はそれほどショックと感じてはいませんでした。シドニーは北米からもヨーロッパからも遠く、参加者が大きく減ることは想定内だったようです。例えばアメリカ西海岸からシドニーは直行便でも15時間弱かかります。東海岸からだと乗り継ぎが必要となり、丸一日近くかけての移動になります。日本からだと南米に行くのと同じイメージです。そう考えると、これでも集まったほうかなと思えます。

OpenStack Summit参加人数の推移

国別に見ると、開催地のオーストラリアがトップですが、2位にアメリカが入っています。遠方にも関わらず、多くの参加者が来ていると言えます。また、40%の参加者が初めてのOpenStack Summitであり、世界のいろいろな地域でSummitを実施することによりローカルの参加者を集めたいというOpenStack Foundation側の意図は成功しているといえるでしょう。日本は4位に入りました。恒例の日本人会(編注:サミット会期中に開かれる現地参加者の集まり)でも80名の方々が集まり盛況でした。

参加者の属性

セッション日程はこれまで4日間だったのが3日間に短縮されました。キーノートは1日だけになり、セッション数も減っています。会場の都合などもありますが、参加者・スポンサーが見込みにくいために規模を小さくしたようです。

OpenStack Summit Sydneyスケジュール

さて、OpenStackに関するイベントがアメリカ以外の国で最初に開催されたのは2010年ですが、実はその場所は日本でした。Jonathan Bryce(OpenStack Foundation、Executive Director)からその時の写真が紹介されました。一番左の怪しい日本人が筆者(本橋)です。

第1回目の日本OpenStackユーザ会イベント時(2010年)の写真が紹介された

OpenStack Foundationキーノート

OpenStackのプロジェクト発足から約8年が経過し、世界中でSummitが開催され、OpenStackベースのビジネスが世界中で展開されるようになりました。Public CloudやPrivate Cloud、アプライアンス、コンサルティング、インテグレーター、トレーニングなど、OpenStackに関するサービスがMarketplace(https://www.openstack.org/marketplace/)から簡単に探すことができます。今回、新たな取り組みとして、Public Cloud Passportが発表されました。これは20カ国・60AZs(アベイラビリティゾーン)以上のOpenStackベースのパブリッククラウドを、トライアルアカウントで試すことができるというものです。最近のOpenStack Summitでは、AWSやGoogleと直接対決になるパブリッククラウドよりも、プライベートクラウドに重点を置くメッセージが多かったのですが、今回の発表は少し路線を変えたように見えました。今後どのようになっていくか注目です。

OpenStack Pubric Cloud Passportのページ(https://www.openstack.org/passport

Jonathan Bryceから、OpenStackのこれからの課題は他のOSSやシステムとのインテグレーションだという課題意識が提起されました。ユーザがシステムを構成するためには、OpenStackだけでは足りません。直近のOpenStack User Surveyでは、OpenStack上のアプリケーション管理にKubernetesを使っているとの回答が半数もありました。

OpenStack上のアプリケーション管理ではKubernetesが1位

またCephやCloud Foundryとのインテグレーションも、いわゆるSuper Userは自分たちで問題解決をしながら実現していますが、実際にはそう簡単では無いと言われています。このインテグレーションの問題を解決していくために、4つのステップでアプローチをしていくと説明しました。

  • Use Cases (Find the common Use Cases)
  • Collaborate (Collaborate across communities)
  • New Technology (Build the required New Technology)
  • Test Everything (Test Everything end to end)

まずUse Casesでは、エッジコンピューティングを例として挙げていました。SDxCentralの調査では、エッジプラットフォームを管理するソフトウェアとしてOpenStackが最も多く、OpenStack Foundationとして注力をしていくそうです。

エッジプラットフォームの管理ソフトウェアではOpenStackがトップ

Collaborationでは、9月に行ったOpenDev(http://www.opendevconf.com/)のようなイベントを仕掛けたり、OpenStack Summitでも他コミュニティとの連携を深めていくと説明しました。

New Technologyでは、Use Caseで求められる機能とのギャップを埋めていくために、NovaやSwiftに代表されるCore Projectだけでなく、様々な要件を実現するProjectを適切に組み合わせていくことが重要となります。例として挙げていたのが、Lifecycle Management、Container Security、Edge Deploymentでした。Lifecycle ManagementではKollaやOpenStack-HelmがKubernetesとのインテグレーションで使えます。他については空白となっており、これらについて今後OpenStack Foundationとして動いていくことになりそうです。

New Technologyの例

Test EverythingではEnd-Endのテストを実現するための取り組みとして、Zuul v3(http://zuulv3.openstack.org/)、OPNFVのXCI(Cross Community CI)、それから新しいトピックとしてOpenLab Initiative(http://openlabtesting.org/)が紹介されました。OpenLabはまだ動き出したばかりのようですが、Huawei・Intel・ドイツテレコムなどが立ち上げた活動で、OpenStack APIを操作するSDKを含めたテスト環境を作り、安定性・信頼性を高めようという試みです。SDKとしては、Kubernetes・GopherCloud・Terraformなどが挙がっています。

OpenLab Webサイト(http://openlabtesting.org/

OpenStack Foundationとしては、このような試みを通して、OpenStackと他OSSやソフトウェアとのインテグレーションを推進し、ユーザが真に使えるものにしていこうとしています。まだ一つ一つは始まったばかりですが、来年に向けて具体的になっていくものと思われます。

事例(Case Studies)

AT&T、Commonwealth Bank、Huawei、Tencent、Adobe Systems、メルボルン大学のOpenStackの導入事例が紹介されました。その中からAT&T、Tencent、Adobe Systemsについて紹介します。

AT&Tは、DIRECTV NOWやFIRSTNETなど様々なサービスをOpenStack上で構築しており、10カ国にて10万コア/80リージョン以上で運用しています。最近では、OpenStackの各種コンポーネントをコンテナ化して、Kubernetesで管理する取り組みが増えてきており、AT&Tにおいても同様の仕組みでOpenStack環境の無停止アップデートを実現しています。本キーノートの中でも無停止アップデートに関するデモがあり、運用効率化に注力している様子がうかがえました。

AT&T Integrated Cloud(AIC)
AT&TのOpenStackアップグレードデモの様子

次はTencentの事例です。中国ではGoogleやFacebookが使えません。その代わりに中国内でそのようなサービスを提供しているのが”BAT”と呼ばれるBaidu、Alibaba、Tencentです。TencentはLINEとよく似た“WeChat”というサービスやオンラインゲームを提供しています。Tencentでは、物理サーバ6,000台以上、メモリ360テラバイト以上、ディスク20ペタバイト以上という超大規模なインフラにOpenStackを適用しています。Tencentは、“TStack”と呼ばれるプライベートクラウドだけでなく、”Tencent Cloud“と呼ばれるパブリッククラウドも運用しています。OpenStackを用いることによりサーバコストで30%、運用コストで55%ものコスト削減を実現したとのことです。

TencentのOpenStack環境

Adobe Systemsの事例では、Public CloudからOpenStackを使ったHybrid Cloudへの移行が紹介されました。Adobe Systemsの”Adobe Advertising Cloud”は動画再生に合わせて広告を配信するシステムであり、高速な応答と大量なリクエストへの対応が必要とされます。彼らは最初はPublic Cloudを使っていましたが、規模が大きくなるにつれてHybrid Cloudへ移行したそうです。現在のOpenStackは6つのデータセンタ、100Kコアと相当な規模になっています。しかもこの規模のシステムをAdobe Systemsとしては4人で運用しているそうです。パートナーやコミュニティからの支援を得ているそうですが、これだけの規模を4人というのは驚きです。

Adobe SystemsのOpenStack環境

Super User Awards

恒例のOpenStack SUPERUSER Awardsには、CHINA RAILWAY Corporation、China UnionPay、Citynetwork、Tencentの4社がノミネートされました。CHINA RAILWAYは中国国有の鉄道会社であり、24/7の運用が求められ、1日310億ページビューアクセスをOpenStackの基盤で処理しています。China UnionPayは中国のオンライン決済システムを提供する企業であり、5億人のユーザが1日平均5,000万トランザクション、ピーク時は1秒間に3,000トランザクションもの処理をOpenStackの基盤で実施しています。Citynetworksはヨーロッパを中心にクラウドサービスを提供する企業であり、3大陸、8リージョンでOpenStackを用いてクラウドサービスを提供しています。今回、OpenStack SUPERUSER Awardは、導入事例でも紹介したTensentが受賞しました。SuperUser Awardは必ずしも規模が重要なのではなく、斬新な取り組みやチャレンジをしていることを評価することになっていますが、最近は規模の大きさをアピールするものが多くなっています。もちろん規模はわかりやすいのですが、もう少し違った視点でのアピールがあってもよいのではと感じます。

その他

ヘッドラインスポンサーのCiscoのスポンサーセッションでは、マルチクラウドをテーマとし、サービスメッシュ(Istio)の紹介をしていました。あまりOpenStackと関係がないように思えますが、マルチクラウドでのアプリケーションデプロイや管理が簡単になることでOpenStackのビジネスも拡大していくという図式が見えます。OpenStack Foundationのキーノートとも相通じるように思われました。

本記事では、初日のキーノートを中心に紹介しました。今後、各技術領域についてのトピックや、現地で仕入れた情報などの記事を予定しています。ご期待ください。

NTTデータ システム技術本部 方式技術部所属。米国駐在時にOpenStack設立に深く関わり、Austinで開催されたOpenStack初回サミットから参加。帰国後は、JavaやSpringといったアプリケーションフレームワークの標準化や普及展開に従事し、日本Springユーザ会などのOSSコミュニティ活動にも注力。現在は、全社のシステム開発環境をクラウド上に集約する「統合開発クラウド」を推進し、社内外へのクラウド普及展開を主導。

NEC OSS推進センター
NEC OSS推進センター所属。OpenStackが公開された当初から、ネットワークに関係する部分の開発や検証を行ってきている。日本OpenStackユーザー会のボードメンバーとしてイベントや発表多数。さらに沖縄オープンラボのメンバーとしてOpenStackとSDNの融合分野における先端技術の開発・検証を主導。

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