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| ITで「組織風土」や「企業文化」までをも変革する | ||||||||||
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ITは、しっかりとした戦略目標とリーダーシップの下で導入されれば、社員の旧来型のワークスタイルを変革し、結果として企業風土や組織風土まで変革する力を持っている。そのためには、前回紹介したハーバードビジネススクールのJ・Pコッター名誉教授の提唱する「企業変革の8ステップ」の最後の3ステップが極めて重要になる。
表2:企業変革の8ステップ(3つを抜粋) まず何よりも、最初の成果指標(Key Performance Indicator=KPI)を計画通り、確実にクリアし、その成果に貢献した人たち(導入担当者ら)を全組織的に認め、報いてあげることが大切だ。 例えば、営業支援のシステムであれば、営業マンの社内業務や会議数の削減などがKPIになり得るし、管理会計システム導入であれば、これまで閲覧できなかった経営データが即時に閲覧できるようになり、経営管理の作業工数が大幅に削減されるかもしれない。 どのようなシステムでも、「そのITを導入することで最初にどんな小さな成功体験(勝利)を得たいか」を事前に定義し、実際に勝利し、貢献者を報いることが必要となる。この点に着目している企業は極めて少ない気がする。あれもこれも、と最初のフェーズに詰め込みすぎてしまったり、導入スケジュール自体に集中するあまり、肝心な目指す業務成果を定義できなかったりする。これでは、「何をもってIT導入の成功か」が見えにくく、社員の仕事や気持ちにまで浸透していかない。 小さい成功は繰り返されると、「信頼」が組織に生み出される。「信頼」は次のアクションを進めやすくしてくれる重要な要素だ。結果、さらに挑戦的な目標を立て、ITを使ったより大きなビジネスの成功体験を組織内で獲得していくことが可能になる。例えば、管理会計のシステムであれば決算を5日間早期化する、営業支援システムであれば、入力された情報を分析・集計し、新しい営業戦略を立案する、といったことになるかもしれない。 最後に、ITの導入により新しいワークスタイルや仕事のやり方を、企業文化や風土に定着させていく段階となる。組織風土とは「無意識に共有された思考・行動様式」である。図2の「氷山」の絵のように、文化や風土は通常は水面下に沈んでおり、目で見ることができない。表層的なIT導入や組織改編など、通常は水面より上の目に見える部分の改革にコストと時間が使われる。 ![]() 図2:目に見えない組織風土 しかし、新しいIT導入をきっかけに「顧客情報の把握とサービスへの活用」や「コミュニケーションのスピードアップ」といった新しいワークスタイルを確実に現実化し、認め、推奨し、定着化していくことで、水面下にあった暗黙の考え方や行動パターンにまで変化が起こることがある。例えば、ITをきっかけに属人的で非合理的な営業管理の風土が、きちんとデータに則った、合理的なものに変わっていき、結果そこで働く人たちの考え方も変化するということが実際に我々のお客様企業で起こっている。 元IBMのルイ・ガースナーや新生銀行の八城政基氏など、優れたリーダーは皆「会社の改革とは、突き詰めると社員の考え方や行動の仕方を変えることだ」と述べている。筆者は、ITがそこで果たせる役割も極めて大きいと感じている。 そのためには、この連載で再三述べているように、ITの導入とマネジメントや組織の風土といったテーマを切り離さずに捉え、1つの円の中で推進していくことが必要なのである。 |
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