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PHP開発とコスト削減
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昨今の開発プロジェクトでは短い工期が設定されていることがあたりまえになりつつあります。かつては1年がかりで設計・開発するということも普通でしたが、近頃では「納期は3ヶ月」といったものがよくみられるようになりました。
このような短い工期では、かつてのように十分な要件定義や分析をする時間が取れません。実は最近の短工期の裏には、要件定義や分析作業のある程度の部分を顧客が事前に詰めている、という事実があります。このためシステム開発側は、それらを実装する部分に注力することになります。
つまり、システム開発者にとっては、以前は2〜3割程度の比重だったプログラム製造工程が、最近では半分から7割程度も占めるようになっているのです。
ここでアムダールの法則の登場です。
プログラミングフェーズの全体に占める割合を大きくすれば、プログラミングフェーズの生産性を高めることがシステム開発全体の生産性を高めることにつながります。全体の7割を占める工程の生産性を100倍とはいわず、2倍にすることができただけで、全体では3割以上のコスト削減を実現できるのです。
もちろんJavaをPHPに変えればそれだけで生産性を倍にできる、と単純にいうことはできません。しかしこれまで解説してきたように、PHPは技術者の立ち上がりが早い言語です。習得時間を短くできるわけですから、技術者育成を製造コストの一部とみた場合にトータルでのコスト低減になることは明白です。
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PHPでコスト削減につながる理由
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しかし、技術者の育成が早いというだけでは本当のコスト削減にはなりません。実はPHPを使うメリットは、立ち上がりの早さ以外にもあるのです。
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環境
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PHPの開発環境はとてもシンプルですし、インストールも簡単です。1人での開発/チームでの開発のどちらにも対応できます。開発ツールについては後述しますが、テキストエディタがあれば、すぐに開発をはじめることができます。他の言語と比べて特筆するほどのものではありませんが「コンパイルが不要」という点もそのシンプルさの1つです。
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アジャイル開発
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PHPはコンパイル不要の「スクリプト言語」に分類されます。このことは、書いたプログラムを直接修正し、すぐにテストできることを意味します。これは開発のサイクルを変えます。プログラムを修正した、あるいは改造したあとですぐにその動作を確認できるからです。
この点は、最近流行の「アジャイル型」の開発に適しているといえるでしょう。
アジャイル型の開発を簡単に説明すると、要件定義を完璧にしてから製造をはじめるのではなく、要件定義をしながらそれを実装し、すぐにその動きを確認し、必要ならば要件定義にフィードバックするというものです。こうすることで顧客の要求を満たすことはもちろん、顧客が潜在的に持っている需要を引きだすことも可能になります。
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開発ツール
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プログラミング言語には、多くの場合、それぞれに専用の開発ツールが用意されています。
PHPには「Zend Studio」という優れた開発ツールがあります。これは商用ソフトウェアですが、Webシステム開発のための様々な機能を備えています。このツールを使えば、サーバサイドで稼動しているプログラムのデバッグも可能となります。
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Webシステム開発用言語
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PHP以外のプログラミング言語は、いわば「汎用的な」言語です。様々な用途に使われるため、Webシステム構築には不要な機能も含まれています。
これに対してPHPは、当初からWebシステムにおけるサーバサイドプログラムを記述するために設計されています。そのためWebシステム開発のために便利な機能を豊富に備えています。
Webシステム開発の多くがPHPで行われるようになったのも、このような背景があるからでしょう。
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豊富なライブラリ群
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ほとんどのプログラミング言語は、中心となる言語以外にライブラリ関数を備えています。PHPは、このライブラリ関数が豊富で、その多くが標準的なPHPライブラリとして提供されています。また、特定の目的にあわせたライブラリ群もあり、いずれもOSSとして公開されています。
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豊富なアプリケーション
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CMSやSNSなどの多くのアプリケーションが、PHPによって書かれており、それ以外のものも数多く存在します。フルスクラッチからの製造ではなく、これらのOSSをカスタマイズするだけであれば、製造コストを半減させることも可能です。
繰り返しになりますが、PHPで書かれたOSSをカスタマイズすることが、これからのWebシステム開発におけるコスト削減の鍵になるといえるでしょう。
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著者プロフィール
オープンソース・ジャパン株式会社 須藤 克彦
青森オフィス 代表
1980年立命館大学理工学部を卒業後、独立系ソフトハウスに入社。CやFORTRANコンパイラなどの言語処理系の設計・開発に約10年間従事。その後ユーザ系企業でUNIXによるクラサバの設計・開発を主導。同時に企業の内外で人材育成に注力する。現在はオープンソースソフトウェアの普及と教育のため青森でOSSに関する教育事業を企画する傍ら、神戸情報大学院大学で講師として教鞭をとる。「ソフトウェア科学の基礎を勉強してオールラウンド・プレーヤーを目指せ」が技術者育成についての口癖。
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