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Red Hat/JBoss Day:The Mainstream
Red Hat/JBoss Day:The Mainstream

【基調講演】レッドハットとJBossの今とこれから

2006/12/13
新たなレイヤに挑戦するレッドハット&JBoss

   すでに報じられているように、レッドハットは2006年6月にJBossの買収を完了した。日本でも重要な位置を占めているレッドハットとJBossが1つになったことで、今後の戦略はどのようになるのだろうか。その内容について、ユーザの目の前で初のお披露目となるのが、12月13日に秋葉原UDX CONFERENCEで行われたセミナー「Red Hat/JBoss Day:The Mainstream〜レッドハットとJBossの今とこれから〜」だ。

   セミナー開会に先立って、まずレッドハットの代表取締役社長 藤田 祐治氏による開会の挨拶が行われた。

レッドハット 代表取締役社長 藤田 祐治氏
レッドハット 代表取締役社長 藤田 祐治氏

   「これまでの歴史を振り返って『大丈夫かな、実現できるかな』と思われていることは、その後実現しています」と改めてレッドハットの戦略の基本について述べ、さらに「オープンソースは新しいけれどどうやって使えばいいんだろうという状況から、2007年はオープンソースが当たり前になる一番最初の年になる」と展望を語った。

   また、レッドハット/JBossと協力体制をとりながら日本での展開を行っていくパートナーとして、日本電気と日本ヒューレット・パッカード、野村総合研究所、サイオステクノロジーの4社を紹介した。

   最後に、JBossの買収によって「OSだけではない新たなレイヤに挑戦をはじめた」と今後のビジネスへの意欲を見せ、さらに「Red HatとJBossは、互いに成長する兄弟のようなもの。日本の市場の中で良いサービスと良い製品を提供し、使いやすいオープンソースというものをさらに多くのユーザに使ってもらいたい」と締めくくった。


JBossの概要と日本でのビジネス戦略〜JBoss Overview and Business Strategy for Japan〜

   本日の基調講演では米Red HatのJBoss Division International Operations VPであるBrad Murdoch氏が登場する予定であったが、今回残念ながら来日できず、2つ目の講演を行う同社のJBoss Division Product Management VPであるShaun Connolly氏が急遽2つの講演を行うこととなった。

Red HatのJBoss Division Product Management VP Shaun Connolly氏
Red HatのJBoss Division Product Management VP Shaun Connolly氏

   まず今回の買収について、JBossとしての観点から「現在オープンソースビジネスの上で最高のスタンダードであるレッドハットの一部となることで、ワンランクアップした仕事ができる」とビジネス拡充の期待をにじませた。

   「現在Red Hat Enterprise Linux上で動いているエンタープライズJavaとして、1番広く利用されているのはJBossだと考えています。もともと関係の深いこの2社が1つになることで、重要な日本という市場でJBossの製品やサービスを発表できる大きな機会だと考えています」と日本へさらなる注力を行う点を強調した。

   実際にサービスを提供するにあたり、オープンソースの分野から多くの開発者をフルタイムの社員として雇用したという。彼らは単に開発を行うだけではなく、業務の25%をサポート・サービス提供に費やすことで、顧客が高い満足度を得られることを目的としているとのこと。

これまでのサービス提供に対しての顧客満足度
これまでのサービス提供に対しての顧客満足度

   これはサービスに対して「顧客が満足していると考えている」ではなく「顧客が満足したデータがある」という実例をあげ、JBossが提供するサービスの質の高さについてアピールした。

   「日本は戦略的に見て、JBossにとって非常に重要な場所だと考えています。現在アプリケーションレベルでのローカライズが終了し、配布用のCD-ROMを作成中です。今後は各種資料やトレーニングも日本語にする努力をしています。さらに日本国内でも多くのトレーニングを行い、JBossの経験者を増やしていきたいと考えています」と語った。


JBossロードマップとJBoss AS 5.0について〜JBoss Roadmap and Overview of V5〜

   引き続き、Connolly氏によるJBoss製品の概要とJBoss AS 5.0に関する講演が行われた。Connolly氏はその中で「私は数学的な方程式が大好きです。今回の買収については2つの会社が1つになって1+1=2の力を持つにとどまらず、そこで2以上の価値をもたらすものだと考えています」と、これまで以上に力を発揮できる環境が整ったと語った。

   現在JBoss AS 5.0のβ版が公開中であり、シンプルで入手しやすい価格でのSOAプラットフォームとしての展開を考えているという。SOAプラットフォームとして見た場合、ユーザインターフェースが必要なアプリケーションと不必要なもの、そしてその両方に跨るものの3種があるという。その中でどれか1つの部分が強化されるのではなく、それぞれが重要であるという。

個々のアプリケーションの区分と役割
個々のアプリケーションの区分と役割

   それぞれのアプリケーションが担当するレイヤを紹介した上で、Connolly氏は「JBoss AS5.0ではクラスタリングのサポートや様々な機能の追加をしています。特にEJB 3.0/JBoss Seamは皆さんにもぜひ試してほしいと思います。デモアプリケーションも用意しているので、実際に利用してください」と述べた。

   最後に「オープンソースのビジネスモデルの内容としては、サブスクリプションが中心となります。サービスを提供し、使いやすいテクノロジーを目指していきます。イノベーションをより多く出していくために、今後も技術面で力を入れていきますが、ファイナンシャル的にも意味がある挑戦をしていきます」とまとめた。

(ThinkIT編集局  神保 暢雄)