日本語名の是非とデータ型採用方針

2006年3月22日(水)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

データベースのテーブル設計


   第1回はツールを使った実践的なデータモデリング手法、第2回はその基礎となるERの知識とツールの活用方法について解説しました。よくあるデータモデリングそのものの解説はこれくらいにして、今回からはデータベースのテーブル設計をテーマにします。データベース設計を行う際にみなさんが迷うようなことを1つずつ取り上げ、一緒に考察して行きたいと思います。


解が1つとは限らないデータベース設計


   2進法の世界に生息しているせいか、我々エンジニアは物事を正解か不正解かに断定してしまいがちです。また、非攻撃的な生き物なので表立ってはっきり主張する機会は少ないのですが、「絶対こうじゃなければだめだ」「こんなのは信じられない」などと結構固い信念を持っている人が多いようです。

   確かに数値計算の世界では、1 + 1 = 2というように正解が求められます。しかし、ふと世の中を見回してみると、実社会はむしろ正解が1つとは限らないことに気づきます。データベースの設計も同じです。

   もちろん「すっきりとした設計」というものはありますが、ケースバイケースで様々なやり方があります。例えケースが同じだとしても、どれが正解と一概にいえない場合が多いのです。物事には一長一短があるので、設計者の考え方によって様々なやり方があると心得てください。


テーブル名、カラム名をダブルバイトにするか


   「みなさんはテーブル設計する際に、テーブル名やカラム名に日本語を使いますか?」著者はセミナーなどの際に、一種のタブー視されているこの質問を投げかけてみます。一般に「使わない」というシングルバイト派の方が多いのですが、携わっているRDBMSによっても割合が違うようです。

   先日、オラクル関連とマイクロソフト関連の両方のカンファレンスで講演する機会があったのですが、Oracle技術者主体だと9対1で日本語を利用しない方が圧倒的に多かったのですが、SQL Server技術者主体だと5対5といった結果でした。

   データベースの書籍や雑誌などで、著名な方々が「テーブル名やカラム名にダブルバイトは使わないように」と書いています。ですから、こういう会場でダブルバイト派であると認めて手をあげるのは、ちょっと勇気のいる行為だと思います。

   著者自身は、どちらでもかまわないと考えています。むしろ、社内でも少数派のダブルバイト派だといえます。もちろん、プロフェッショナルですからユーザや市場にあせてテーブル名やカラム名にシングルバイトを利用する機会の方が多いのですが、何のしがらみもなければ迷うことなく日本語を使用します。

   カラム名に日本語を使用するメリットは、一目で理解できるというわかりやすさです。表意文字である漢字を使えるので、名称を短くすることができます。例えば、「customer_currency_code」というようなカラム名も、「顧客通貨コード」とすれば一目瞭然です。わかりやすさは生産性の向上に直結しますし、他の人が見ても簡単に理解できることでメンテナンス性も向上します。

   一方、デメリットは新しい技術・製品対応時に不安が残るということでしょうか。「現在は問題がなくても、この先に日本語対応に問題が生ずる可能性がないとは断言できない」というのがシングルバイト論者の主張するところです。

   確かに著者も過去様々な障害に直面してきました。しかし、その経験を踏まえても、ベンダーの意識向上もあって最近はリスクよりメリットの方が多いと考えています。別にここでダブルバイトを勧めているわけではありませんし、不毛な論争をしたいとも思いません。しかし、「テーブル名やカラム名にダブルバイトを利用することは絶対駄目というものではない」ということをお伝えしておこうと思います。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役会長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部、2019年東証スタンダード上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン」「エンジニアなら知っておきたい システム設計とドキュメント」「徹底攻略 JSTQB」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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