医療システムを席巻するFirebird!
Firebirdとは
オープンソースのRDBMS「Firebird」を知っていますか。海外ではMySQLに負けないほどの知名度の持つFirebirdですが、国内ではPostgreSQLやMySQLに比べると、知名度はまだまだのようです。しかし、利用者には分からないように動作し、利用者の大切なデータを取り扱う非常に優れたデータベースエンジンとして、国内でも医療機関などで採用されるようになったことから、今後さまざまな分野でも普及していくと考えられます。
Firebirdは、突然現れたオープンソースのRDBMSではありません。Firebirdは2000年1月3日に当時のインプライズ社(現在はエンバカデロ・テクノロジーズ社)が開発・販売しているInterBaseの開発途中版であるInterBase 6.0をオープンソースとして公開することをアナウンスしたことにより登場したRDBMSです。
InterBaseは、エンバカデロ・テクノロジーズ社のDelphiやJBuilderなどの開発ツールに開発用のライセンスが付属しているので、触ったことのある方も多いのではと思います。
2000年7月25日にInterBaseのソースはインプライズ社によって、sourceforge.net(http://sourceforge.net/)のWebサイトに公開されました。しかし、ソースツリーへのアクセス権が外部の人間に許可されていなかったため、InterBaseの熱狂的な支持者が新たなFirebirdというソースツリーを作成したことから、Firebirdが登場し、Firebirdという製品の開発もスタートすることになりました。
Firebirdはこのように非常に複雑な経緯によって生まれたデータベースです。InterBaseという商用製品から生まれたため、最初のバージョンではInterBaseの特徴をほぼそのまま踏襲していますが、Firebird 2.0よりFirebirdの独自機能が追加され、InterBaseとは異なるデータベースとしてさらなる進化を進めています。
現在、Firebirdプロジェクトはオーストラリアにある特定非営利活動法人(NPO法人)Firebird Foundation(http://www.firebirdsql.org/index.php?op=ffoundation)によってサポートされており、国内においてはFirebird日本ユーザー会(http://www.firebird.gr.jp)が中心に活動しています。主な活動としては、マニュアルの翻訳、日本語インストーラ版の作成、管理ツールであるFlameRobinの日本語化などがあげられます。
ORCAプロジェクトとは
冒頭でFirebirdは医療機関で利用されていると紹介しました。そのきっかけの1つがORCAプロジェクト(http://www.orca.med.or.jp/)です。ORCAプロジェクトは、日本医師会主導の医療現場IT化プロジェクトで、誰もが自由に利用できる医療情報ネットワークの形成や、医療現場における事務作業の効率化とコスト軽減、高度で良質な医療の提供を目指して活動しています。
ORCAプロジェクトでは全国の医師、医療関係機関が誰でも無料で使え、改良できる公開ソフトウェア(オープンソース)方式でプログラムを配布しています。
具体的には「日医標準レセプト」「主治医意見書・訪問看護指示書・医師意見書作成ソフトウェア『医見書』」「給付管理/介護報酬請求支援ソフトウェア『給管鳥』」「訪問看護専用請求支援ソフトウェア『訪看鳥』」「日医特定健康診査システム」といったソフトウェアをオープンソースとして公開しており、数多くの医師、医療機関、介護関係事業所などで利用されています。
Firebirdはこのうち「医見書」「給管鳥」「日医特定健康診査システム」で利用されています。本記事執筆時(2008年7月17日現在)で「医見書」は15,000ユーザー以上、「給管鳥」は1,500ユーザー以上に利用されており、日々の医療および介護でのさまざまな作業を支えています。図1は、「医見書」の画面です。
次は、Firebirdの元になったInterBaseとFirebirdの優れている点について紹介していきます。