今回は
第1回ではビジネス・プロセス及びBPMの定義について紹介しました。今回はIDSシェアー社が提唱するBPMサイクルを継続的に実施するための方法論であり、ツールであるARIS(ARchitecture of Integrated Information Systems)をご紹介します。
IDSシェアー社が提唱するARIS
ARISを紹介する前に簡単にIDSシェアー社の生い立ちについて紹介します。本社であるIDS Scheer社は、CIM(Computer Integrated Manufacturing)研究の第一人者であるアウグスト・ヴィルヘルム・シェアー博士によって1984年にサールランド大学情報システム研究所(IWi)を母体として、ドイツのザールブリュッケンに創設されました。
そして、BPMを実現するためのコンセプトである統合情報システムアーキテクチャ(ARIS:ARchitecture of Integrated Information Systems)に基づいて、業務をモデル化するための手法(メソッド)、ツール、モデル、アプリケーション・サービスを提供しています。
それでは、このARISというコンセプトが生みだされた経緯を説明し、ARISという方法論について紹介します。
Y-CIMモデル
ARISの説明をはじめる上で、まずはIDSシェアー社のシンボルマークであるY-CIMモデルを説明しなければなりません。詳細についてはシェアー博士が執筆された原本に譲り、ここでは概要の説明に留めたいと思います。
Y-CIMモデルは、製造業の「顧客からの要求(Demand)に応えるための業務」と「製品を供給(Supply)するための業務」を整理し、現場にITシステムを導入する際の参照モデルとして整理された概念です。
「顧客からの要求(Demand)に応えるための業務」に関する情報は、生産管理システムで管理され、Y-CIMモデルの左側に記載されます。「製品を供給(Supply)するための業務」に関する情報は、CAD/CAM(Computer Aided Design & Manufacturing)によって管理され、Y-CIMモデルの右側に記載されます。
これら2つの業務システムは計画段階では別々に機能しますが、実行に移る段階でそれぞれが連携して機能すると示しています。
昔、私がHDD部品工場の現場で行っていた製品設計・開発業務は、まさにY-CIMモデルの右上の部分にあたるわけですが、確かに営業部門の販売計画業務と明確に連動していませんでした。
販売計画業務の結果である需要予測情報などを参照して製品仕様の決定をすることは少なく、技術的に開発可能かどうかという観点で製品仕様の決定・試 作を行っていました。しかし、仕様決定を行い量産体制に移る際には、設計部・製造部・営業部の合同開催の製造販売会議(よく製販会議と呼ばれます)でお互 いの状況を報告していました。その会議で、製品受注量や歩留まりを考慮し、投入量を決定し、製造工程で量産していくこととなっていました。
これは、まさにY-CIMモデルの根元部分にあたり、はじめて顔をあわせて業務レベルで連携をはじめたといえます。
このようにY-CIMモデルは、ERP(Enterprise Resource Planning)システムへの基本要件を十分表現しており、現在でも十分活用できるモデルです。そして、このY-CIMモデルを基本とし、企業活動をあ らわす要素に着目して考案された概念が、ARIS Houseと呼ばれる概念です。
