Eclipseとは?
Eclipseとは、IBM社がオープンソースコミュニティに寄付したことで発展してきたフリーの統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment)です。現在はEclipseプロジェクト(http://www.eclipse.org/)の手によって開発が継続されています。ここ数年で驚くほど広く普及を見せており、IDEのデファクト・スタンダードといえるでしょう。
2005年11月時点でEclipseの最新バージョンは3.1.1です。本稿ではEclipse3.1で追加された機能やプロジェクトを見ていきます。
Eclipseプロジェクト
Eclipseは目的ごとにプロジェクトが作られています。Eclipse本体および、Eclipseに機能を付加するプラグインなどを作成する 新・旧プロジェクトは、2005年11月時点で表1のとおりです。実に多くのプロジェクトがあり、その中でもEclipseの実験的なプロジェクトである ETP(Eclipse Technology Project)のサブプロジェクトを見ると、アスペクト指向プログラミング、EJB 3.0、リッチクライアント、組み込み系に関するものがあります。
現時点でも十分に魅力的なEclipseですが、今後もさらに魅力的な機能が追加されていくことでしょう。注目のプロジェクト表1の通り、 Eclipseには数多くのプロジェクトがありますが、中でも注目のプロジェクトをいくつか紹介しましょう(これらのプロジェクトは後章で詳細に紹介しま す)。
WTP(Web Tools Platform Project)
EclipseでJ2EE Webアプリケーションの開発を行うためのツールを準備しており、WS T(Web Standard Tools)とJST(J2EE Standard Tools)の2つのサブプロジェクトから構成されます。これらは、IBM社が提供していた「IBM Web Tools forEclipse」、およびEclipse 2.xの頃からJ2EE開発に利用されていた「Lomboz plugin」が基になっており、HTMLやCSS、JSP、XSDなどのエディター、J2EEサーバとの連携機能、Webサービス構築機能、DBアクセス機能といったものを提供してくれます。
VE(Visual Editor Project)
EclipseでGUIアプリケーションを構築するためのフレームワークで、Swingアプリケーション、SWTアプリケーションのビルダーが、参考実装として一緒に提供されています。ドラッグ&ドロップでGUIアプリケーションを構築できるようになったこと、Javaでは今一つといわれていたアプリケーションの見栄えや速度がSWTによってかなり改善されていることから、今後GUIアプリケーションの構築には欠かせない開発環境になると考えられます。
TPTP(Test & Performance Tools Platform Project)
もともと「Hyades」プロジェクトとして活動していたもので、表1の4つのプロジェクトから構成されています。「TPTP Platform」以外のものは、アプリケーションのライフサイクルをフェーズに分けて、テストに関連する部分のツールを提供しています。
BIRT(Business Intelligence and Reporting Tools Project)
このプロジェクトは、帳票の作成支援機能を持つ「Report Designer」と、そのデザイナから出力されるXMLを実際の帳票として表示するためのランタイムエンジン「Report Engine」の、2つのコンポーネントを提供しています。
Eclipseを用いて帳票のレイアウトなどの設計を行い、その結果生成されたXMLを、アプリケーションサーバ上に配置するランタイムで表示させることによって、システムに帳票の出力機能を統合できるようになります。
Eclipse 3.1の新機能
すべてのEclipse 3.1の新機能は、Eclipseホームページの「New and Noteworthy」(注)と、Eclipseのメニューバーから「ヘルプ→ヘルプ目次」で起動した、ヘルプウィンドウ左メニューの「ワークベンチ・ユーザー・ガイド→新機能」で確認することができます。
http://download.eclipse.org/eclipse/downloads/drops/R-3.1-200506271435/eclipse-
news.html
大きな新機能・変更点としては次の2つがあります。
J2SE 5.0のフルサポート
ListやMapといったコレクションライブラリーからオブジェクトを取得するときの煩わしいキャスト(コレクションライブラリーにintを格納する時にIntegerを生成して格納し、取り出すときはその逆をする)の作業をついに解放してくれる、GenericsやAutoboxing/unboxingなどJ2SE5.0の新機能すべてをサポートしています。
パフォーマンスの向上
起動・終了やウィンドウの開閉を中心に全体の性能が向上しており、注2のURLで性能テストの結果を確認できます。
http://download.eclipse.org/eclipse/downloads/drops/R-3.1-
200506271435/performance/performance.php
特に、起動速度は体感できるほど性能が向上しているので、J2SE5.0を利用しない場合でもEclipse3.1.1を利用したほうがストレスなく開発作業を行えます。
