サーバ仮想化技術の評価ポイント
前回はサーバ仮想化技術の活用例について解説した。今回は、サーバ仮想化を実現する製品を導入する際の留意すべき点について解説する。第1回から解説しているように、サーバ仮想化技術と動的ワークロード管理の2つについて、その導入時の評価ポイントを示す。
サーバ仮想化技術を利用するにあたり、仮想的なサーバを作ることに関しては、当然ではあるがどの製品も可能である。しかしワークロード管理を行う場 合には、単に仮想的なサーバが構築できるだけではなく、いかに滞りなく物理サーバのリソースを自由に割り当てたり、解放できたりするかにも留意する必要が ある。ここではこれらの留意すべきポイントを解説する。
動的なリソースの配分単位
単一の物理サーバ内に存在する仮想サーバは、それぞれの仮想サーバごとに必要とする物理サーバのリソースを分割して利用する。リソースの配分方法も製品によって異なる。
物理サーバのリソースの配分単位が、物理デバイス単位になっているタイプのものがある。例えば物理サーバがCPUを4つ持っている場合、最高でも4 つの仮想サーバしか構成できず、それぞれの仮想サーバが物理CPUを1つしか持つことができないという製品も存在する。
物理CPU単位の場合、仮想CPUの割り当て単位が物理CPUとなるため、4CPUを持つ物理サーバ上に3つの仮想サーバを構築した場合、そのうち の1つの仮想サーバが2物理CPUを使えることになる。つまり、サーバ負荷に応じて割り当てと解放できるCPUリソースが物理CPU単位となるため、きめ 細かなリソース配分は難しく、仮想サーバの数も制限されてしまうことも考えられる。
もう1つの方法は、物理の全リソースを全体に占める割合で各仮想サーバに割り当てることができるタイプがある。このタイプは物理サーバが持っている すべてのCPUの何%かを仮想サーバに割り当てるかという設定ができるため、物理CPUの数以上に仮想サーバを構築できるというメリットがある。加えて割 り当てや解放も%単位で行えるため、よりきめ細かなワークロードに対応するリソース配分が可能となる。
物理構成変更時の仮想化への影響
各仮想サーバが稼動している時に、ピーク時間帯にある仮想サーバへのアクセスが集中し、サーバ の処理負荷が増大し、現在のリソースでは対処し切れない場合、動的に物理リソースの割り当てを増やして正常に処理を続行しようとする。仮想サーバに割り与 えられている物理リソースの配分を実行状態にある仮想サーバに対して、動的にリソースを変更するときの留意点として、配分変更の反映タイミングがある。
理想的には物理リソースの配分の設定直後に変更されることが望ましい。CPUの配分方法にタイムシェアリング方式をとっているものが多いため、この 反映は設定直後に実施されるものが多い。ただし、製品によっては仮想サーバに最低限のリソースとして半固定的にCPUやメモリ、NICのリソースなどを割 り当てるため、配分変更後はリブートが必要なものもあるため注意が必要である。
ホストOS
仮想サーバを構築する際に、仮想サーバそのものを制御するためのプログラムで、OSを必要とするものとそうでないものがある。仮想サーバを制御するプログラムをホストOSと呼び、物理サーバ上にインストールしておく必要がある。
ホストOSを利用するタイプは、通常WindowsやUNIXなどを使用する。したがって、物理サーバのハードウェア構成や種類が異なっても、ホス トOSが稼動すれば仮想サーバ製品がその上で動作することが保証される。ただし、実行時のホストOSのオーバヘッドを考慮する必要があり、またホストOS のライセンス料が発生することも考慮する必要がある。
一方ホストOSが不要なタイプでは、仮想サーバ制御用にカスタマイズされた非常に軽量な独自のOSを利用することで、オーバヘッドを削減して高速に動作させることが可能である。
ただし、ハードウェアの相性には留意しなければならない。前述のホストOSの場合は広く利用されている一般的なOSを使用するため対応するハード ウェアは数多いが、専用にカスタマイズされたホストOSではベンダー側が稼動確認をして動作保障をしているハードウェアの数は限られている場合が多い。
