次世代データセンターネットワークのアーキテクチャー
リソース・プールであることがデータセンターの要件
第1回と第2回では、データセンターを支えるネットワーク機器の特徴とIT基盤運用のためのフレームワークについて説明してきた。第3回では、データセンターのアーキテクチャーを踏まえつつ、ネットワークに求められる要件/技術を解説する。
2009年末に米Gartnerが米国のデータセンター事業者を対象に行った調査によると、直近のコスト構造は、人的コストで29%、ソフトウエアで22%、電力/ファシリティ・コストで12%を占める。一方、ハードウエア・リソースは、サーバー/ストレージ/ネットワークを合わせて28%である。
企業は、これらすべてのコストを削減するのが理想である。ここで、人的コストは、第2回で解説した運用自動化ツールによって削減の余地がある。ハードウエア・リソースや電力のコストは、システム・アーキテクチャー上の工夫や仮想化技術などの活用によって削減できる。
リソース・コストや消費電力を最適化するためのアーキテクチャー上の要件として、仮想サーバー/物理サーバーをスケール・アウトできるようにしておくことが重要である。つまり、必要に応じて必要なリソースを追加して拡張できなければならない。サーバーを構成するディスクやネットワーク・ポート/帯域などもスケールする必要がある。
つまり、データセンターには、リソースを拡張可能なネットワーク環境、言うならば「リソース・エリア・ネットワーク」(RAN: Resource Area Network)が必要である。リソース・エリア・ネットワークとは、低遅延/広帯域で運用管理機能を持ったネットワークで接続されたリソースのプールである。
リソース・エリア・ネットワークを実現する
リソース・エリア・ネットワークの特徴を備えた既存のネットワークに、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN: Storage Area Network)がある。SANは、ストレージをプール化してネットワーク接続するという手法によって、スケーラブルなストレージ環境を確保することを目的としている。
昨今のストレージは特に、SSD(Solid State Drive)など磁気ディスクよりも高価なストレージ技術が用いられるようになっていることもあり、リソース・プール化の必要性が一層増している。また、データの格納場所にメインメモリーを活用したシステムも一般化してきており、CPUなどを含め、こうしたリソースもプール化の対象となっている。
現在の汎用技術では物理サーバーのきょう体を超えたメモリ・リソース・プールを構成することは難しいが、I/Oデバイスのプールについてはある程度の解は見えてきている。1つは、I/O仮想化によってPCI-Expressバスを共有するプール化であり、もう1つは、I/Oを汎用のネットワーク・プロトコルでカプセル化するプール化である。
次ページからは、リソース・プールを構成するために必要な技術を掘り下げて解説する。