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多階層ネットワークが抱える問題

2010年7月16日(金)
小川 直樹(おがわ なおき)

進化していないネットワーク・アーキテクチャ

アプリケーション、サーバー、ストレージの各技術では進化が見られたものの、ネットワーク・アーキテクチャには進化が見られません。もちろん、スループット性能などは向上していますが、いまだに3階層構造のアーキテクチャを採用したままであり、「遅すぎて、複雑すぎて、高すぎる」状態が続いています。

3階層構造のアーキテクチャを採用している限り、ネットワークがボトルネックとなり、クラウドのメリットを享受することができません。これは、アーキテクチャが内包する、根源的な問題なのです。

例えば、ツリー状に構造化されている今日の3階層ネットワークにおいて、あるサーバーから別のサーバーにデータを送る場合を考えます。

データは、各階層を通り、都度パケットを開き、アドレスを取得し、フォワーディング・テーブルを確認して、再度カプセル化し、適切なポートを経由して送信する、という冗長な手順を踏む必要があります。しかも、このプロセスをツリー構造内のすべてのデバイスで行う必要があります。結果、大幅な遅延が発生してしまいます。

実際のネットワーク・トラフィックでは、このプロセスがいたるところで同時に多数発生しています。通信が混雑したり遅れたりすることで、アプリケーションの動作に影響を与える可能性も出てきます。

この問題を解決するには、ツリー構造をフラット化し、デバイス間を直接接続する方策が有効です。これについては、次回以降で解説します。

図3: 3階層構造の複雑さによって起こる遅延

ネットワークが拡大するにつれて、ネットワークは複雑化していきます。こうなると、性能や拡張性に大きな影響が及ぶだけでなく、ネットワークの構成変更が難しくなり、柔軟性も低下します。

ネットワークの複雑さは、2つの要素から構成されています。管理対象デバイス数と、デバイス間の相互作用数です。この2者の間には、以下のような関係式があります。

図4: 管理対象デバイス数が増えると複雑さが指数関数的に増加する

求められる「ネットワークの簡素化」

図4のように、7台のデバイス(ネットワーク・スイッチ)があったとします。この場合、デバイス間の相互作用数は「7 × (7-1) / 2 = 21」になります。この関係式から分かる通り、サーバー機が増えてネットワークが成長すれば、ネットワーク・スイッチの数も増え、その結果、相互作用数が指数関数的に増加し、複雑さが増します。

この関係式は、どのようにネットワークを簡素化していけばいいのかを探る手がかりにもなります。関係式が示していることは、Nを可能な限り小さくすることが大切、ということです。つまり、ネットワーク・スイッチの数を減らすことで、相互作用数が減り、結果としてネットワークを簡素化できる、ということです。これは、「ファブリック」のコンセプトにつながります。

可能な限り簡素化されたネットワークは何か、というと、N=1、つまりネットワーク・スイッチが1台で、相互作用するスイッチが「1 × (1 - 1) / 2 = 0」(ゼロ)というネットワークです。これ以上簡素化されたネットワークはありません。

3階層構造のネットワークには、ポート効率の悪さという課題もあります。サーバーやストレージよりもむしろ、ネットワーク機器間での接続に多くのポートが使われるのです。ネットワーク機器間の接続は、最大で全ポートの50%を占めます。冗長経路がループとならないよう、スパニング・ツリー・プロトコル(STP)も必要とします。

3階層構造でのアグリゲーション・レイヤー(コア層とサーバー・エッジ層をつなぐ中間層)を削除し、2階層にできれば、ネットワークにかかるコストの30%を削減できると言われています。これは、全世界での年間のネットワーク・コストにして約10億ドルになります。

今回は、クラウドを支えるために必要なネットワークの要件を示しつつ、現状のネットワーク・インフラが抱えている課題として、3階層構造ネットワーク・アーキテクチャの問題点を示しました。さらに、この問題を解決するヒントとして、「ネットワークの簡素化」を挙げました。

次回は、ジュニパーネットワークスにおけるネットワーク簡素化へのアプローチを解説し、将来的なビジョンを示します。

著者
小川 直樹(おがわ なおき)
ジュニパーネットワークス株式会社 マーケティング部 ソリューションマーケティングマネージャー

プログラマーから始まり、大手外資系ソフトウェアベンダーにて、ストレージソフトウェアを中心にプリセールス、プロダクトマーケティングを担当。2008年より現職。

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