インテルの最新Xeonプロセッサーを知る

2010年7月22日(木)
中田 久史

プロセッサー・アーキテクチャー

インテルのプロセッサーは大きくCoreとUncoreに分けることができる。Coreはマイクロプロセッサーそのもの、Uncoreはインタフェース等の周辺回路を指す。Uncoreについては次の項目で説明し、ここではCoreについて説明したい。

Tick-Tock開発モデルの初代モデルが発表される前、主流だったのがPentium 4プロセッサーに代表されるNetburstマイクロアーキテクチャーだった。このアーキテクチャーではパイプラインの段数を増やして性能を向上させていたが、動作周波数が上がるにつれて消費電力も高くなっていった。

消費電力の上昇は最終的にはエンドユーザーに大きな負担を強いる。冷却機構の規模増大、それに伴う騒音の増大、全体的な電気代の上昇などである。そこで2006年に発表されたのが、Tick-Tock開発モデルの初代モデルとなるCoreマイクロアーキテクチャーである。この世代からIPC(Instruction Per Cycle)に着目。サイクルあたりの実行命令数を増やし動作周波数を抑えることにより、一見相いれない電力消費の低減と性能向上を同時に実現させている。

具体的にはμOPの処理に大きな改善を施しており、これをワイド・ダイナミック・エクゼキューションと呼ぶ。x86命令は可変長である。インテルのプロセッサーでは、これをデコーダの処理しやすい固定長のμOPという命令に変換しているが、この変換をより効率良く行いさらにこのμOPを複数同時に実行することによって、1サイクルの中で命令をより効率良く処理させている。

インテル マイクロアーキテクチャー Nehalemは、このCoreアーキテクチャーを細部に亘りさらに進化させている。中でも特徴的なのがインテル ハイパー・スレッディング・テクノロジーとインテル ターボ・ブースト・テクノロジーであろう。

インテル ハイパー・スレッディング・テクノロジーはPentium4プロセッサーでも実装されていた技術で、単一コアで複数のスレッドを動作させるものである。 インテルではプロセッサーの性能を向上させるために、コアの数も増やしてきている。インテル ハイパー・スレッディング・テクノロジーによってスレッド数をコア数の倍にすることができ、プロセッサーの性能を効果的に向上させることができる。

インテル ターボ・ブースト・テクノロジーは、定常状態よりもさらに高い動作周波数でプロセッサーを動作させるテクノロジーである。図3の概念図を見てほしい。図中左側の赤い長方形は高さが周波数、面積が消費電力をイメージしている。Xeon 5500番台では4つのコアがあるが、ここでは4つのコアすべてが均等にある一定の処理をしている状態を示している。それに比べて右側の図ではCore 2とCore 3がほとんど処理をしていない状態を示している。このとき、全体的な消費電力は処理していないコアの分余裕が生まれることになるので、その分Core 0とCore 1の周波数を上げることができる。この動作周波数の向上を、状況に合わせて動的に制御できるのがこの技術の特徴であり、そのワークロードにあわせ、高い性能を引き出すことができる。

図3:複数コアの周波数を動的に制御するターボ・ブースト・テクノロジー(クリックで拡大)

もうひとつインテルのプロセッサー・コアで特徴的なものがSIMD(Single Instraction Multiple Data)型拡張命令である。1997年発表のMMXテクノロジーPentiumプロセッサーにおいて、マルチメディア系のデータ処理を高速に実行することを目的に開発された。この拡張はTick-Tock開発モデルの中でも進化させており、「Tick」世代(プロセスの微細化)のプロセッサーでもこのユニットは新たな命令セットが追加されている。最新の32nmプロセス技術に基づく開発コード名Westmere世代も例外に漏れず、インテル AES-NI(Advanced Encryption Standard New Instruction)という暗号化処理の高速化を目的とした拡張を実施している。

インテル株式会社

インテル技術本部。サーバー、ワークステーションのフィールド・アプリケーション・エンジニアとして日本のサーバー・メーカーのサポート業務を経て、現在はインテルXeonプロセッサーのアプリケーション・スペシャリストとしてフィールド・アプリケーション・エンジニアのバックエンド・サポート業務に従事している。

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