ZABICOM / Zabbixの概要
ZABICOM / Zabbixバージョン1.8の特徴
2010年6月、ZABICOM / Zabbixのバージョン1.8がリリースされました。本稿を執筆している時点では、1.8.3が公開されています。以降は、最新版(1.8.3)での新機能や、ほかの監視ツールと異なる、ZABICOM / Zabbixの特徴的な機能をご紹介していきます。
1. メンテナンス機能
ZABICOMは、監視対象(ZABICOMではホストと呼びます)やホスト・グループごとに、メンテナンス期間を設定できます。メンテナンス期間中は、アイテムの収集を停止するか、あるいはアイテム収集を継続したままアクションの実行を停止できます。反対に、メンテナンス期間中にだけ障害通知を送る、といったアクション設定も可能です。
この機能により、計画停電や定期保守などの際に、障害通知を抑制できます。また、メンテナンス期間中に限って保守作業者あてに障害通知メールを送付し、保守作業が正常に行われているかを確認しながら作業を進める、といった運用も可能になります。
2. テンプレート機能
アイテムやトリガーの設定を個々のホストに対して行うのは、管理者にとって大きな負担となります。しかも、同一機種や同一OSのホストなどでは、同じ設定を繰り返し行うことにもなります。アイテムの収集間隔やトリガーのしきい値変更などの監視ポリシーが変化した場合、ホストごとに設定を行っていては、設定の変更漏れなどの原因となります。
ZABICOMでは、アイテムやトリガーの設定、複合グラフの設定をひとまとめにしたテンプレートを作成できます。このテンプレートを各ホストに対して適用すれば(以下、リンクと呼びます)、アイテムやトリガーの設定の手間を大幅に削減できます。
新たな機器が増えた場合にも、ホストを登録し、テンプレートのリンク設定をするだけで、すぐさま監視を開始することが可能です。
監視ポリシーが変更された場合には、基になっているテンプレートに対してアイテムやトリガーの設定を変更すると、リンクされているホストの監視設定が一括で変更されます。これにより、設定の漏れやミスを大幅に削減できます。
複数のテンプレートを単一のホストに同時にリンクさせたり、テンプレートに対してテンプレートをリンクさせるネスト構造をとることもできます。
例えば、基本的なサーバー監視用テンプレートをリンクさせたうえで、ホストの役割に合わせ、Webサーバー監視用テンプレートやDNSサーバー監視用テンプレートなどを追加し、監視品質の均質化や設定作業の省力化を行うことが可能です。
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図4: ZABICOM / Zabbixのテンプレート機能 |
3. ユーザー定義マクロ機能
ZABICOM 1.8から、新機能として、ユーザーが自由にマクロを定義することが可能になりました(ユーザー定義マクロ機能)。
1.8以前のZABICOMでは、しきい値やファイル・パスが異なる監視を行う場合、ホストごとの設定が必要になっていたほか、テンプレートを個別に作成する必要がありました。
しかし、ユーザー定義マクロ機能では、アイテム設定やトリガー設定の際に、ホストごとに変化するディレクトリ・パスやしきい値などの値をマクロ文字列として設定し、ホストごとにこのマクロ文字列を置換できるようになりました。これにより、冗長な設定作業を行うことなく、ホストごとにしきい値を変化させたり、監視対象のディレクトリ・パスを変更することが可能となりました。
また、グローバルマクロという機能もあります。これは、特権管理者に限って編集可能な、特別なマクロです。監視を行う際に、アカウントやパスワードなど、監視オペレータには知らせたくないがアイテム設定を行う上で必要な要素について、画面表示上はマクロ文字列として定義しておき、監視動作時だけ置換させることができます。これにより、オペレータにパスワードを知らせることなく、監視を行えます。
マクロ機能の具体的な設定方法は、第4回で掲載する予定です。
4. マップ機能
マップ機能では、障害の発生場所を、より直感的に把握することができます。ZABICOMでは、拠点地図、フロア図、システム構成図のように階層構造をもったマップを作成できます。障害発生時には、マップ上のアイコンが変化します。障害のあったアイコンの階層を降りていくことで、障害発生個所を特定できます。また、システム構成図のような物理配置図から、障害発生地点を特定した後、論理構成図に遷移することもでき、障害の影響範囲も容易に把握できます。
ZABICOMは、マップを自動生成することはできませんが、運用現場に合わせて自由に設定を行うことができます。このため、マップ中心の運用も実現できます。
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図5: ZABICOM / Zabbixのマップ機能 |