マルチタスク化したiOS
アプリケーション内でのマルチタスク
ここからはプログラミングの話に移ろう。複数のプロセスがバックグラウンドで走っているiOS 4からは、その状況を考慮しなくてはならなくなった。起動し、バックグラウンドに入ったりフォアグラウンドに戻ったりということを繰り返す。こうした状況の変化は、アプリケーションのクラスUIApplicationよりデリゲートされて呼び出されるメソッドで検知できる。
つまり、図に示したようなメソッドを、通常はアプリケーションに必ず1つ作られるデリゲート処理クラスで定義すればいい。これらのメソッドはUIApplicationDelegateプロトコルに定義されている。Appleの文書では「iOS Application Programming Guide」の「The Core Application Design」に記述がある。
iPhone OS 3までは、図にない「applicationDidFinishLaunching:」メソッドが起動時に呼び出され、終了時に「applicationWillTerminate:」が呼び出されるという2つだけだった。この状況が、iOS 4のプロセスを終了しないという状況に応じて大きく変わったのである。
まず、バックグラウンドとフォアグラウンドの2つのステータスだけでなく、遷移状態としてフォアグラウンドにActiveとInactiveの2つがあることを、バックグラウンドにはRunningとSuspendの2つがあると考えれば理解しやすい(参考:Software Design, 技術評論社, Dec 2010, p.46-54「マルチタスクの仕組みと実装のポイント」吉川和成)。
図では、緑色のボックスでユーザーの操作によって遷移が発生する場所を含めて記述しておいた。遷移の矢印線にある青い文字が、UIApplicationDelegateプロトコルで定義されたメソッドであり、言い換えればここにメソッドを記述して、遷移する段階で、自分が作ったプログラムを実行させることができるという意味である。
図2:アプリケーションの状態と遷移 |
アプリケーションがサポートすべき機能
起動すると「application:didFinishLaunchingWithOptions:」メソッドが呼び出され、即座に「applicationDidBecomeActive:」メソッドが呼び出される。Inactiveという状態は原則、すぐに別の状態に移行する中間的な状態となっている。言い換えれば起動時には2つのメソッドが呼び出される。Active状態からホームボタンのプッシュで、バックグラウンドのRunning状態に移行する。つまり、その間の矢印線にある2つのメソッドが呼び出される。バックグラウンドは何か処理をしているRunningな状態と、何もしていないSuspendの状態の2つがあるが、特に何もプログラム上で処理を記述しないとSuspendに移行することになっている。
バックグラウンド状態から、アイコンのタップでアクティブになる時、「applicationWillEnterForeground:」メソッドと「applicationDidBecomeActive:」メソッドの2つのメソッドが呼び出される。
このように、状態遷移の場合、2つのメソッドが呼び出される場合が多いといるだろう。「applicationDidBecomeActive:」メソッドは初めて起動する時と、バックグラウンドからフォアグラウンドになる時の両方で呼び出される。当然ながら、このメソッドの中では、両方の動作を考慮しなければならない。最初の起動時にだけ必要な処理はここには記述しないで、当然ながら「application:didFinishLaunchingWithOptions:」メソッドで記述をする。
ユーザーとしてiOS搭載デバイスを利用する時には意識しなかった、フォアグラウンド、バックグラウンドの遷移を意識しつつ、それぞれに必要な処理を組み込む必要がある。なお、これらはデリゲートされるメソッドによって組み込むだけでなく、Notification(通知)による割り込み処理も発生するようになっている。