仮想化環境の具体的な設計方法を知る

2011年2月8日(火)
宮原 徹(みやはら とおる)

仮想化技術を活用して古くなったサーバーを統合したり、新しいサーバー環境を構築したりすることはごく当たり前になってきたが、まだまだ仮想化環境の設計、構築についてのノウハウが広く広まっているとは言えないのが実情だろう。本連載では、仮想化専門コンサルタントが実務で培った設計、構築のノウハウを、これから仮想化に取り組むエンジニアにも分かりやすく解説していく。

第2回の今回は、仮想化環境の具体的な設計について解説する。

仮想化のための要件定義

仮想化環境の導入にあたって、仮想化環境に対する要件の定義をしっかりと行うことが重要である。通常のシステム導入の際の要件定義と大きく変わるところはないが、注意すべき点を挙げておく。

目標・目的の明確化
仮想化を導入することのメリットがさまざまな形で伝えられていることもあり、ともすると仮想化を導入すること自体が目的となりがちである。前回紹介したようなメリット・デメリットをきちんと把握した上で、仮想化を導入することにどのような利点があるのか、何のために仮想化を導入したいのかをまず初めに明確にしておく必要があるだろう。
実現したいことの優先順位
前で挙げた目標・目的は、当然複数に渡ることがあるが、例えばコスト削減と性能の確保は相反する場合があるなど、それぞれの要件を満たすには他を犠牲にしなければならない場合も多い。より具体的に設計を進めていった時にそのような事態が発生した場合、どちらを優先するのか、その優先順位をあらかじめ決めておくことは意思決定を早め、スムーズに設計を進める上で重要となる。特に重要な決定を、現場のプロジェクトリーダーではなくプロジェクトオーナーに諮らなければならないような体制においては、先に優先順位、判断基準を決めておくことが重要となるだろう。
効果測定方法の事前準備
仮想化の導入にはコスト削減や物理サーバーの数の縮小など、目に見える形でシステムの合理化を求められることが多い。これらの合理化の効果を測定する方法も、事前に決めておくことが望ましい。例えば現在のランニングコストと仮想化導入後のコストの比較や、物理サーバーの台数、設置しているラックの本数、消費電力など、仮想化導入前後で比較可能な点は数多くある。

また、サーバーを用意するためのリードタイムや障害対応の速度など、定量化するのが難しそうな項目も、仮想化のメリットを追求する際に効果測定を行うと良い点として挙げられるだろう。

効果測定の作業は、次のステップで仮想化環境の増強を行う際の大きな参考となるので、プロジェクトの工程の中に必ず組み込んでおきたい。

著者
宮原 徹(みやはら とおる)
日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長兼CEO

日本オラクルでLinux版Oracleのマーケティングに従事後、2001年に(株)びぎねっとを設立し、Linuxをはじめとするオープンソースの普及活動を積極的に行い、IPA「2008年度 OSS貢献者賞」を受賞。2006年に日本仮想化技術(株)を設立し、仮想化技術に関する情報発信とコンサルティングを行う。現在は主にエンタープライズ分野におけるプライベートクラウド構築や自動化、CI/CDなどの活用について調査・研究を行っている。

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