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サーバ仮想化
サーバ仮想化技術とその実践的評価ポイント

第1回:サーバ仮想化の背景と種類
著者:野村総合研究所  松本 健   2005/8/4
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はじめに

   近年のITシステムの高度化・複雑化にともない、システムで使用されるサーバ数が増加し、維持管理コストの負荷が増大してきている。また、サーバにはピーク時の負荷に対応するために余剰リソースを搭載しているが、リソースを有効に活用しているとは言い難い。そこで、システムリソースの有効活用によるコスト削減や運用負荷の低減に対するニーズが高まってきている。

   このようなニーズに対する技術の1つとして、サーバ仮想化技術がある。この技術はユーティリティコンピューティングを実現する基本的な技術としてすでに実用レベルに達しつつあり、一部では既に導入がはじまっている。しかし、サーバ仮想化技術を有効に利用するためには、最適な技術・製品を見極める必要がある。

   本連載では、サーバ仮想化について、背景と関連技術、活用例、技術・製品のチェックポイントの3つに分けて解説する。


サーバ仮想化が求められる背景

   リソースが有効活用されていない、運用コストの削減などの理由からサーバ仮想化技術が求められている。以下ではその理由を詳しく解説する。


リソース利用率の低下

   従来のシステムは安定した性能を確保するために、ピーク時のリクエストをさばけるように設計を行ってきた。このような設計をすると、ピーク時以外(つまり平常時)のリクエストは非常に少なく、リソースがほとんど使われていないことが多い。つまり、余剰リソースが生まれる原因となっている。

   システムの処理のピークは業務・業態によって異なる。例えば、1ヶ月間の業務で発生した物品や金銭の集計を行うような月締め時、半月や季節ごとなど年に2〜4回程度の棚卸時、あるいは一日の中でも始業時刻や終業時刻に1日に必要なデータの参照や登録などが集中する時などのさまざまなケースがある。いずれもピーク時の処理能力をもつシステム設計を行っていれば、ピーク時以外のリソース利用率は低い(図1)。

リソース利用率の低下
図1:リソース利用率の低下


維持管理コストの負荷増大

   IT化が進み、さまざまな業務がシステム化され、維持管理対象のサーバが増えてきている。既存のシステムの処理量への増加の対応、レスポンスタイムの向上などのためにサーバをスケールアウトし、台数の増加が行われている。そのため管理対象となるサーバが数十台、数百台と大きく増加することになり、管理負荷が増大する結果につながる。

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野村総合研究所株式会社 松本 健
著者プロフィール
野村総合研究所株式会社  松本 健
1994年早稲田大学大学院理工学研究科卒業後、同年野村総合研究所入社。現在、情報技術本部にてシステム基盤を中心とした新技術の調査・評価を行うITエンジニアとして活動。最近ではESB/BPM/ユーティリティコンピューティング/サーバベーストコンピューティング/RFIDミドルウェアなどの調査・評価を行っている。


INDEX
第1回:サーバ仮想化の背景と種類
はじめに
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