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仮想化環境のネットワーク構成とストレージ設計

2011年2月15日(火)
宮原 徹(みやはら とおる)

現在では、仮想化技術を活用して古くなったサーバーを統合したり、新しいサーバー環境を構築したりすることが、ごく当たり前のことになった。しかし、仮想化環境の設計構築ノウハウは、まだまだ広まっているとは言えないのが実情だろう。本連載では、仮想化専門コンサルタントが実務で培った設計構築ノウハウを、これから仮想化に取り組むエンジニアに向けて分かりやすく解説していく。

第3回の今回は、サーバー仮想化環境における、冗長化設計、ネットワーク設計、ストレージの設計について解説する。

無停止運用の実現

システム管理者にとって、システム停止は、可能な限り避けたい事態である。それが例え計画停止であったとしても、ユーザーに対する事前の通知や停止計画の立案、場合によっては深夜に行う作業などが必要だろう。また、不慮の障害によるシステム停止では、システムの回復やその後の障害原因分析など、さらに多くの労力が割かれることになる。

仮想化をしない場合の冗長化構成

障害による停止に対する予防措置として、重要なデータベースやファイル・サーバーなどでは、クラスタ・ソフトウエアを導入して障害発生時にシステムを切り替えて動作を継続する冗長化構成(HA構成)や、ハードウエアを内部で多重化しているFTサーバー(FTはFault Tolerantの頭文字)を導入してハードウエア・レベルでの冗長性を確保する方法が採られてきた。

しかし、HA構成にしても、FTサーバーにしても、予防措置として完全ではない。これらの対策によって費用が高くなるほか、これらの構成を取っていないシステムでは、相変わらず停止の危険性にさらされる。さらに、HA構成やFTサーバーでは、障害による停止を阻止することはできても、計画停止を無くすことはできない。

これに対して、仮想化環境では、ライブ・マイグレーションやフェール・オーバーといった、仮想化環境ならではの機能を使うことによって、無停止運用を実現することも可能となってくる。

フェール・オーバー

上述した通常のHA構成では、データベースやファイル・サーバーといったアプリケーションのレベルで冗長化構成をとっている。一方、仮想化環境では、仮想マシンのレベルでの冗長化構成となっている。仮想マシンを実行している仮想化ホストに障害が発生した場合は、そこで動作していた仮想マシンは、別の仮想化ホスト上で再起動され、動作を継続することになる。ただし、正常にシャットダウンされずに仮想化ホストが停止した場合は、仮想マシンのメモリー上に存在していたデータなどは復活させることができない。

このように、仮想化環境におけるHA構成は仮想マシン・レベルの冗長化であるため、仮想マシン上で動作しているアプリケーションの種類を問わずに冗長化が行われるが、完全無停止というわけではない。より高いレベルでの冗長化が必要な場合は、従来と同様のクラスタ・ソフトウエアを導入し、2台の仮想マシン間で冗長化構成をとる対応も可能である。

図1: フェール・オーバー

図1: フェール・オーバー

ライブ・マイグレーション

ライブ・マイグレーションは、仮想マシンを停止させずに仮想化ホスト間で仮想マシンを移動させる技術である。ネットワーク接続も引き継がれるため、サーバーに接続しているクライアントのユーザーからは、サーバーの仮想マシンが別のホスト上に移動したことは分からない。

例えば、メモリーの増設や予防保守のためのパーツ交換など、ハードウエア・レベルでの計画停止が必要な場合には、いったんライブ・マイグレーションによって仮想マシンをほかのホスト上へと逃がしておいてから停止と保守を行い、完了後に仮想マシンを復帰させる、という手順で無停止運用が実現できる。

図2: ライブ・マイグレーション

図2: ライブ・マイグレーション

冗長化構成の注意点

冗長化構成を設計するにあたって、いくつか考慮すべき点がある。

ソフトウエアのライセンス

ソフトウエアのライセンスは、1台の物理マシンで動作させることを前提に決められているものが、まだまだ多い。このため、複数台の仮想化ホストで構成された仮想化環境で動作させる場合、ライセンス体系が異なる問題や、稼働する可能性のある仮想化ホストの台数分ライセンスが必要となる問題などが起こることがある。

現在では、ライセンス体系も、少しずつ仮想化環境を想定したものに変わりつつある。事前に確認が必要である。

リソース量の検討

ライブ・マイグレーションやフェール・オーバーなどを用いて仮想マシンを移動させる場合、移動先には十分なリソースが必要となる。どの程度のリソースをあらかじめ確保しておくかを考えておく必要がある。

ストレージやネットワークの冗長化も

仮想化ホストの冗長化だけでは意味がない。データを保管するストレージやネットワークも冗長化しなければならない。これらについての冗長化も、合わせて検討する。

著者
宮原 徹(みやはら とおる)
日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長兼CEO

日本オラクルでLinux版Oracleのマーケティングに従事後、2001年に(株)びぎねっとを設立し、Linuxをはじめとするオープンソースの普及活動を積極的に行い、IPA「2008年度 OSS貢献者賞」を受賞。2006年に日本仮想化技術(株)を設立し、仮想化技術に関する情報発信とコンサルティングを行う。現在は主にエンタープライズ分野におけるプライベートクラウド構築や自動化、CI/CDなどの活用について調査・研究を行っている。

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