vSANのアーキテクチャーと機能概要
vSANのアーキテクチャーと機能概要
前回は「VMwareのSDSであるVMware vSANの概要」と題し、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)とvSANの関係性やライセンス体系をご紹介させていただきました。今回は、vSANのアーキテクチャーといくつかの機能概要についてご紹介していきたいと思います。
VMware vSANのアーキテクチャー
まずは実際にvSANのアーキテクチャーについて見ていきましょう。vSANは大雑把に言ってしまえば「複数のサーバの内蔵ディスクを用いて、仮想的なストレージを構成する」技術です。なお、vSANはESXi(ハイパーバイザー)に組み込まれています。そのため、vSAN用の仮想マシンの構築は必要ありません。
vSANに必要な構成をサーバ、ディスク、ネットワークの3つに分けて見ていきましょう。
サーバ
サーバは最低でも3台必要となりますが、VMware社の推奨では4台となっています。CPUはオーバーヘッドが約10%かかりますので、その分は注意しておく必要があります。またメモリは、最多のディスク本数(1サーバあたり40本)の構成では32GB以上となっています。RAIDコントローラはVMware社により認定されたRAIDコントローラを利用する必要があります。認定されているRAIDコントローラは、以下のVMware Compatibility Guideで確認することができます。
ディスク
vSANでは、キャッシュを扱う「キャッシュディスク」とデータを格納する「キャパシティディスク」を用意する必要があります。キャッシュディスクは、SAS/SATA、PCI Express、NVMeといったインターフェースのフラッシュデバイス(SSD)である必要がありますが、キャパシティディスクは従来のSAS/SATAのHDDでも可能です。キャパシティディスクもSSDにした場合は「オールフラッシュ構成」、HDDとした場合は「ハイブリッド構成」と呼ばれます。
キャッシュディスクの性能がvSAN自体の性能に大きく寄与するため、環境にあったディスクを選定するとよいでしょう。なお、キャッシュディスクは「Virtual SAN Hardware Quick Reference Guide」に沿って選定することをお勧めいたします。
Virtual SAN Hardware Quick Reference Guide
またキャッシュディスクの容量は、最低でもキャパシティディスクの10%ほどの容量を持つように構成します。キャッシュディスクとキャパシティディスクを合わせたものを「ディスクグループ」という名前で呼びます。1つのディスクグループは、1つのキャッシュディスクと最大7つのキャパシティディスクで構成できます。また1つのノードは、最大5個のディスクグループを構成することができます。
ディスクについても、RAIDコントローラ同様認定されている製品を利用する必要があり、前述のVMware Compatibility Guideより確認できます。
ネットワーク
vSANで利用するネットワークは、オールフラッシュ構成の場合は10ギガビット・イーサネット(10GbE)が必須となります。ハイブリッドの場合は10GbEもしくはギガビット・イーサネット(GbE)のいずれかを利用可能ですが、個人的には10GbEを強くお勧めいたします。vSANはリビルド処理や、メンテナンスモード時のデータ移動などの際に、大量のデータが流れるため、GbEではボトルネックになってしまう可能性があるからです。ハイブリッド構成でGbEを選択する場合は、vSAN専用で用意する必要があります。
SSD、HDD、RAIDコントローラの種類を個別に検討しながらvSANを組み立てていくことも可能ですが、骨が折れる作業です。そこでVMware社では「vSAN Ready Node」というプログラムを用意しており、あらかじめvSAN用に構成された各社製のノードを参照できます。
また、質問に答えていくだけでvSAN Ready Nodeを選定してくれる以下のようなサイトも用意されています。
VMware vSANが持つ特徴・機能
続いてvSANがもつ特徴・機能面を見ていきましょう。ここでは、以下の5つの特徴・機能面を説明していきます。
- ① 簡単な構築、拡張
- ② 管理がシンプル
- ③ 柔軟なストレージポリシー
- ④ 重複排除・データ圧縮
- ⑤ ネットワークRAID
① 簡単な構築、拡張
vSANはvSAN用のネットワークを準備し、vSphere Web Clientから数ステップほど設定すれば利用できるようになります。
また、拡張も簡単です。容量を追加したい場合は、各ノードにHDDを追加する、もしくは1ノード追加するだけです。もちろんディスクの追加、ノードの追加も簡単です。パフォーマンスを強化したい場合には、ディスクグループを増やす、もしくはノードを増やします。ノードを増やすことで容量とパフォーマンスが上がっていくので、VDIなどのノード数とストレージ容量、ストレージパフォーマンスが比例しているシステムには最適です。
② 管理が簡単
vSANの管理は、見慣れたvSphere Web Clientから管理可能です。管理ソフトが別になっていて煩雑な思いをすることはありません。
もちろんVMware vCenter Operations Managerとも連携して管理することが可能です。
③ 柔軟なストレージポリシー
vSANは、仮想マシン単位にストレージポリシーが設定できます。設定できるポリシーは許容する障害ノード数(ノード障害に対する可用性定義)、ストライピング数、キャッシュ容量の予約などがあります。なおストレージポリシーは、設定後もオンラインで設定変更することが可能です。
④ 重複排除・データ圧縮(オールフラッシュ構成のみ)
オールフラッシュ構成の場合に限られますが、重複排除・データ圧縮を利用することが可能です。
⑤ ネットワークRAID(オールフラッシュ構成のみ)
こちらもオールフラッシュ構成のみとなりますが、ネットワーク越しにノード間でRAID 5もしくはRAID 6構成を組むことが可能です。オールフラッシュ構成の場合、前述の重複排除とネットワークRAIDを組み合わせることで、必要な容量を節約することが可能です。
VMware vSANの注意点
vSANの構成上で注意すべきポイントを2点ほどご紹介します。
1.ディスク構成
ディスクの種類は統一されていることが推奨されます。キャッシュディスクはリード/ライトの比率やクラスを、キャパシティディスクはSAS/SATAなどのインターフェースや回転数を合わせるようにしましょう。
2.RDMが使えない
vSANではRDM(Raw Device Mapping)のような機能はありません。そのため、すべてVMFS上で構成する必要があります。既存の仮想マシンをvSAN上に移行する際はRDMを利用していないことを確認し、もし利用している場合はVMFSでの運用を検討する必要があります。
今回はvSANの概要について説明しました。次回は、めまぐるしく進化するvSANの最新情報についてご紹介したいと思います。