ソースコードのファイル配信
他のマシンにファイルを配信する
第1回に続いて、VPSを複数台関連づけて利用する際に必要となる様々な実例を具体的にご紹介していきます。
複数台サーバーの用途のうち、最も一般的なものとしてWebサーバーがあります。大量のアクセスがあるWebサイトの場合、複数台Webサーバーを用意することが一般的です。VPSであればWebサーバーを増やすこと自体は簡単に行えますが、各Webサーバーに同一のソースコードをどのように配信すべきかについては悩ましい問題です。
また、各Webサーバーに同一コードをただ配信するだけだと実運用上さまざまな問題に遭遇します。実際の経験を踏まえて最低限以下に挙げる3つの対策を講じておいたほうがよいと考えます。
1. 配信ログを取る
どのファイルがいつどのサーバーに配信されたかをログとして残します。配信ログがあることで、配信しようとしたファイルが全て確実に配信されたかどうか後で知ることができます。また、後日配信ミスが発覚したときに、どのタイミングで配信ミスが発生したか調査することができるようになります。
2. 配信元サーバー上で削除されたファイルやディレクトリは配信先サーバー上でも削除する
以前使っていたが今は使っていないというソースがあった場合、適切に管理しないと後でディレクトリ内を整理したいと考えた場合、そのソースが本当に使われていないと確証を持つのに大変な時間がかかります。また無駄なソースがサーバー上に存在すると、セキュリティホールになる可能性があります。よって配信元サーバー上で削除されたファイルやディレクトリについては配信先サーバー上でも確実に削除しておく必要があります。
3. 誤って配信してしまった場合差し戻しできるようにする
どんなに注意していても配信ミスを完全に防ぐことは難しいです。もし配信ミスをして配信先サーバーのファイルを上書きして消してしまった場合、それを直ちに復活させるためには配信直前のファイルがどこかに残っていないと難しいです。たとえ定期的にバックアップを取っていたとしても、そのバックアップが配信ミス直前のファイルと同一である確信がないという状況も多いのではないでしょうか。よって配信直前に配信前のファイルをバックアップしておく仕組みがあると何かと安心です。
これらの課題を解決するため、次ページでは普段著者が使用している配信スクリプトから主要部分を抜粋してご紹介します。
なお今回ご紹介する配布スクリプトを実行するためには本連載の第1回、「複数サーバー間でSSH鍵を交換する」を適用することを前提とさせていただきます。また今回も便宜上CentOSを前提とします。
rsyncについて
今回ご紹介するスクリプトではrsyncを利用します。rsyncは古くから使われているリモート同期化ツールで、非常に多彩な機能を有しています。例えば暗号化通信、暗号化アルゴリズムの変更、IPv6対応、.svn, *.o, *.bak...などをコピーしない、ファイル権限や所有者を維持してコピー、シンボリックリンクをコピーしない等々、あって当然の機能から他の同様のツールに見られないような機能まで非常に多くの機能が搭載されています。rsyncは機能が非常に多いことでとっつきにくいのも事実ですが、うまく使いこなせばかゆいところまで手の届く大変便利なツールと言えます。
図1:rsyncによる同期 |
このようにrsync非常に強力なツールですが、残念ながら動作はあまり速くないです。よって大量のソースコードを一気に配信する場合はrsyncを使うより他の手段を使って、全てを丸ごとコピーしてしまったほうが速い場合があります。ただしrsyncではバージョン3になってからアルゴリズムが一部変更され高速化したので、バージョン2以下を使っている場合は、できる限りバージョン3以降を利用するとよさそうです。
$ rsync --version rsync version 3.0.6 protocol version 30 ・ ・ ・