140台以上の「さくらのVPS」を自在に操る! 仮想化の鉄人が語るVPS使いこなし術

2011年7月15日(金)
Think IT編集部

中小企業向けのシステム開発を手がけるデジタルシステム株式会社代表取締役の浅見氏は、高校時代からレンタルサーバを個人で運営し、高校生プログラミングコンテストの埼玉大会での優勝を経て、在学中の平成19年に同社を創業した若き経営者。浅見氏は、高校時代から仮想化技術に注目し研究を重ね、さくらインターネットのVPSサービス開始と同時に利用を開始。現在は140台以上のVPSを契約し、同社の顧客向けに提供をしているという「仮想化の鉄人」浅見氏に、VPSのメリットやノウハウについて伺った。

高い自由度と、コストパフォーマンスに優れたさくらのVPS

物理サーバ上に複数の仮想サーバを構築し、専用サーバのように利用できるVPS。2010年9月に開始したさくらインターネットのVPSサービス(さくらのVPS)は、root権限による自由度と、月額980円〜という低価格を実現した注目のサービス。中小企業向けの業務システムやウェブアプリの開発を手がけるデジタルシステムの浅見氏は、さくらのVPSサービス開始直後から利用をはじめ、同社の顧客向けのシステム環境として提供している。

「お客様にウェブのシステムを提供する際、OSに近い部分のカスタマイズが必要になることがあります。そうなるとroot権限が必要になるのですが、レンタルサーバにはありません。専用サーバですと、さくらインターネットさんでも月額7800円〜ですが、VPSなら980円〜ですので、お客様に低価格でシステムを提供できます」

さくらのVPSは、Linuxカーネル標準搭載の仮想化技術「KVM」を採用し、完全仮想化を実現。root権限や複数OSへの対応などの自由度に加え、仮想サーバのリソースとOSとを独立させることで、高いパフォーマンスとセキュリティを提供している。高校時代からレンタルサーバを個人で運営し、在学中に起業した浅見氏。当時から仮想化技術に注目した同氏は、さくらのVPSが開始された直後に飛びついた。

「まず1台契約し、2週間の無料おためし期間にさらに2台追加して社内システムや開発環境として3ヶ月程度利用した結果、問題ないと判断しました。お客様向けには、ウェブシステムのサーバとして提供しています。具体的には、お客様のポータルサイトやセミナーの予約受付システム、業務の進行管理システム、iPadなどを使って外部から社内の情報を閲覧するウェブアプリなどです。既存の環境からの乗り換えも2、3事例はありますが、新規で提案するものはVPSを利用したものが増えています」

現在では140台以上ものVPSを契約しているという同社。手元にあった30台ほどのサーバ環境もVPSに移し、従来契約していた専用サーバ10台もすべて解約してVPSに移行。コスト削減に大いに役立っているさくらのVPSだが、コスト面以外でのメリットは、その自由度だ。

「いちばん良い点は、OSの初期化ができることです。専用サーバの場合は難しいのですが、VPSならコンソールの3-4ステップの操作でできます。1番目のドライブが20GBしかない点は使いづらいと感じる時もありますが、ディスクを増設してシステムとデータを別のディスクで運用するなどして対応しています」

Windows Serverも動いた! 災害時のバックアップ環境を低コストで実現

さくらのVPSの標準OSはCentOSだが、Ubuntu FreeBSD、Debian、Fedoraなど複数のOSに対応している。さくらインターネットはサポートしていないものの、浅見氏は、Windows Serverのインストールにも成功し、OSのライセンスもクリアした上で顧客に提供している。

※(Microsoft Services Provider License Agreementを活用)

「さくらインターネットさんのクラウドのデモを拝見したときに、Windows Serverが動作することがわかりましたので、試してみたらできました。VPNで企業内のネットワークと接続し、主にバックアップ用途にお使いいただいています。もちろんOSは月額ラインセンス契約して提供します。Windows Serverの機能で、片方が書込まれたら、もう一方にも書込むというものがあり、お客さまの企業システムがWindows環境であれば設定も楽です。万一本体が動作しなくなった場合に、VPSのほうに変更して動作できるようにもしています。震災の影響でこうしたバックアップ需要も高まっていますが、データセンターで借りる場合、数十万円の月額費用がかかりますが、VPSで提案するケースなら三万円程度に抑えられます」

さくらのVPS導入事例1

Windows ServerをVPS上にインストールし、VPN(softether)で実際のオフィス拠点との接続を行い、サブのバックアップサーバとして展開。データ同期については、ActiveDirectory、DFS、SQLのクラスタ等すべてMicrosoftのテクノロジーを活用。

またVPS内でSystem CenterData ProtectionManagerを利用したバックアップも提供。ファイルサーバ、バックアップサーバはディスク容量の都合で8G、他は4G中心で構成。なおVPS上のVPNサーバにはPCのユーザー登録もしてあるため、ユーザーは外出先でも社内と同様のサービスが利用可能。(証明書認証を実施)

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さくらのVPSが適している案件については、積極的に採用しているという同社。コストや自由度の面から、クラウドサービスも選択肢として挙げられる。浅見氏は、現在に至るまで、さまざまなサービスを比較検討した。

「海外にデータセンターがあるクラウドの場合、遅延時間が気になりました。また、トラフィックが従量課金の場合、Winodws Serverのアップデートだけでも数百円かかりますし、お客様も予算の見通しが立てにくいです。さくらのVPSの場合は月額固定料金ですのでその点は問題ありませんし、回線も100Mbpsと品質も良いです」

VPSは、物理サーバにパフォーマンスの面で劣るというイメージもある。もちろん、顧客の要件によって、ハウジング、専用サーバ、VPSとさまざまな提案を行っている浅見氏であるが、さくらのVPSのパフォーマンスについては十分満足しているという。

「実は震災のあと、郵便番号を入力すると計画停電の地域がわかるというウェブサービスをやって、トラフィックが集まったのですが、問題なくさばけました。VPSのパフォーマンスについては満足しています。現在のウェブシステムは、ハイスペックのマシンを1台用意するより、小さめのスペックのサーバで並列処理を行うという傾向にあります。大きなマシンがまるごと落ちてしまうよりは、小規模な10台のうちいくつかが落ちても大丈夫な構成をとることで全体の安全性を保てます。こういった観点からもさくらのVPSは使い勝手が良いです」

なお、さくらインターネットのデータセンターは、東京と大阪にあり、2011年冬には北海道石狩市に大規模なデータセンターを運用する計画をしている。

導入事例

VPSの複数台構成

 
さくらのVPS導入事例

通常は専用サーバなどを利用し、LANを2系統、インターネット側でWEBサーバー、ローカル側でDB通信等を行う構成が多いが、VPSの仮想環境で構築。
DBサーバーもWAN側(ここでの便宜的な呼称)を外すことができないため、VPN通信以外をiptablesで閉じ(pingも未応答)、LAN側のみでDB通信を行う。実際の最大規模の案件では、VPN 2台(1台はバックアップ)、DB3台、WEB8台で稼働させている。(4Gプラン)

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仮想化・クラウドのメリットをより多くの人に知ってもらいたい

 2011年5月、さくらインターネットでは、さくらのVPS契約者数が1万件超えを記念したユーザー向けイベント「さくらの夕べ」を開催し、浅見氏もヘビーユーザーとして同イベントに参加した。イベントでさくらインターネット社長の田中邦裕氏や研究者と意見を交わした浅見氏は、今後もVPSが向くと判断した案件については積極的に展開していくと語る。また、提案の幅を広げるために、VPS複数台でHadoop(大規模データ分散処理のためのソフトウエア基盤)の研究もしている。

「自身でプログラムのコードを書くこともありますが、今後はプログラミングの現場は離れてインフラ提案の担当をメインとしていきたいと思っています。IT業界では、プログラマーと比較して、インフラを提案できる人材の割合は少ないです。パブリッククラウド、プライベートクラウド、専用サーバ、社内サーバそれぞれ接続して活用するノウハウを持てば、さまざまな要件に応えることができます。仮想技術やクラウドをもっと使ってもらいたいと思っています」

 さくらのVPSをヘビーに使っている浅見氏は、APIの提供を希望している。現在用意されているコンソールは使いやすいものの、数十台を超えると運用が煩雑になり、ミスが発生する可能性も高まるからだ。現在のところ、VPSを契約してから共通の環境を構築したり、既に動作している環境の冗長化などのスクリプトは自社で用意している。しかしAPI提供を期待する背景には、自動化・効率化の推進というだけではなく、デジタルシステム社の今後の事業展開の構想にも関係している。最後に浅見氏は、その事業展開について次のように語った。

「仮想化の良さを多くの人に実感していただけるよう、VPSの基盤に、弊社で管理画面を用意した新しいレンタルサーバのようなサービスを提供する予定です。私はDNSからIPアドレスを逆引きしたりするのですが、共用サーバを使っていると、データセンター事業者のドメインが表示されます。我々のサービスでは、IPアドレスを逆引きしたときに、専用サーバのようにお客さまのドメイン名を表示するようにしたいです。また自分の年齢は大学生くらいですので、同じような年齢の人のためにスキル向上や新しい社会基盤を担う方たちのスペースも提供していきたいと思います」

鉄人の仮想化構想から、将来的に更に扱いやすいサービスの提供が期待される。

■さくらのVPS

http://vps.sakura.ad.jp/

■お問い合わせ先

さくらインターネット株式会社
さくらのVPSに関するお問い合わせ
0120-977808(10:00~18:00 土日・祝日は休業)
http://www.sakura.ad.jp/
support@sakura.ad.jp

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2004年の開設当初からOSS(オープンソースソフトウェア)に着目、近年は特にクラウドを取り巻く技術動向に注力し、ビジネスシーンでOSSを有効活用するための情報発信を続けています。クラウドネイティブ技術に特化したビジネスセミナー「CloudNative Days」や、Think ITと読者、著者の3者をつなぐコミュニティづくりのための勉強会「Think IT+α勉強会」、Web連載記事の書籍化など、Webサイトにとどまらない統合的なメディア展開に挑戦しています。

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