データ連携の仕組みとススメ方
汎用的な技術でデータ連携は開発しやすくなったが・・・
XMLやSOAP、RESTといった汎用的な技術を使って開発が容易になったデータ連携システムですが、いくつか課題もあります。
その1つは、やはり実装面での課題です。SOAPやRESTといったWebサービスは、システム間のテクノロジーやデータフォーマットの違いは吸収してくれます。しかし、データ構造の違いまでは吸収してくれないからです。
そのため、データ連携の仕組みを実現するためには、連携する両側のアプリケーションのデータ構造を理解して、最初に紹介した「ルール制御」や「フォーマットの解析/データマッピング/データ連携」といった機能を定義しなければなりません。
また、そのような仕組みを構築した後でも、アプリケーション側のバージョンアップやフィールドやマッピングを変更する必要が出てきた場合には、再定義が必要で、テストなども行わなければなりません。
Webサービスに対応していないオンプレミスとの連携は?
そして2つ目の課題は、レガシーとも言える既存のオンプレミスシステムとWebアプリケーションとの連携です。厳密に言えば、オンプレミスシステムであってもSOAPやRESTなどのWebサービスをサポートしていれば問題はありませんが、Webサービスがサポートされていないオンプレミスシステムでは、高価なゲートウェイやミドルウェアと連携させることによりデータ連携をやり繰りしているケースも少なくありません。
このような手法でも、取りあえず「1対1」の連携を実現することはできるかもしれません。しかし、ゲートウェアやミドルウェアが汎用的なものであればまだいいのですが、固有のアプリケーションにしか対応していない場合は、複数のデータ連携の仕組みとゲートウェア/ミドルウェアとを管理していかなければならず、管理体制はより複雑になってしまいます。
これは、前回にも話をしました「スパゲティ状態」で、開発環境が整った分、かえってスパゲティ状態を加速させてしまうことになりかねません。
クラウドに特化したデータ連携・統合サービスとは?
このような課題を解決するために、「オンプレミスシステムとクラウドサービス」はもちろん、「クラウド間」のデータ連携・統合に特化したサービスやシステムを利用するという方法があります。
「それって、EAIでは?」と思われた方もいるかと思います。しかし、前回の連載でも紹介しましたように、EAIは別名、データハブもしくはデータアダプタと言われ、誤解を恐れずに言えば、インテリジェンスな機能はあまり備えていません。またEAIの時代には、SOAPやRESTといった汎用的なテクノロジーがなかったので、EAIがカバーできるアプリケーションには限界がありました。
では、EAIとクラウド時代のデータ連携サービスの違いはどのような所にあるのか。筆者の所属する株式会社ブリスコラで提供しているクラウドデータ連携サービス「Concord(コンコード)」を例に説明していきましょう。
「Concord」では、クラウドやオンプレミスに限らず、データ連携のインターフェースをテンプレート化しています。このテンプレートには、一般的なデータ連携のシナリオ、パターンを含んだスクリプトが含まれており、対話形式のウィザードを備えており、ガイダンスに従い操作するだけで、各アプリケーションのデータへのアクセスを可能としています。
WebサービスやXMLといった汎用的な技術があるために、このようなテンプレートを効率的に開発できるようになり、CRM、ERP、データベース、Webサービス、フラット・ファイルをはじめとする、数百種類におよぶクラウド/オンプレミスアプリケーションのテンプレートがすでに「Concord」には用意されています。
また、GUIツールを使ってデータソースごとに必要最低限のプロパティ(属性情報)を設定できますので、「ルール制御」や「フォーマットの解析/データマッピング/データ連携」といった定義をノンプログラミングで実現できるようになっています。
「Concord」のようなクラウドデータ連携サービスを使用することで、これまで数週間、数カ月間とかかっていたデータ連携を、数日間という短期間で実現することも可能になります。
さて連載の最終回となる次回は、実際に「Concord」を利用したデータ連携の事例を紹介しながら、データ連携の今とこれからについて考えてみたいと思います。
【参考文献】
- 「Web 2.0時代のWebServices ~SOAP/REST使い分けの指針/荒本道隆」
- 「REST を用いた軽量 Web サービスアーキテクチャの提案と評価/池﨑 崇、永橋 陽一郎、 森 晃、井垣 宏、青山 幹雄(南山大学 数理情報学部 情報通信学科、南山大学 大学院 数理情報研究科)」
<サイト最終アクセス:2011.07>