プロセスを正しく理解していますか?
チームとは?
私たちはソフトウエア開発においてチームの生産性を高めようとしています。そのために様々な問題を解決しようとしています。しかし、普段何気なくチームという言葉を使っていますが、何を「チーム」と呼んでいるのでしょう?チームとは何でしょうか?
チームと類似したものとしてグループがあります。チームとグループの違いは何でしょう?何らかの意味づけを持った人の集団をグループと呼んでいるのではないでしょうか。趣味、年齢別、地域などの様々な基準で分類した人の集団をグループと呼びます。では、チームと呼ぶ時はどのような時でしょう?チームと呼ぶ時には何らかの共通の目的を持って、それに向かって活動していることが多いのではないでしょうか。トム・デマルコは『ピープルウェア』にて、チームを次のように定義します。
チームとは個人個人の力を単純に加えたものよりも大きな力を発揮する程度にまで強く結束したグループである。
さて、日ごろの私たちはチームとして仕事をしているでしょうか?グループとして仕事をしているでしょうか?個人の力を1とした時、チームの力では1+1=2なのでしょうか?それとも、1+1が3や4、もしくは10などになっているでしょうか?チームと呼べるほどに大きな力を発揮できているでしょうか?
チームを作る - ビジョン、ゴール、マイルストン
人が集まっただけではグループであってチームではありません。チームと呼べるグループになるためには、仕事を分け合うだけではなく、相互作用によって大きな力を発揮する必要があります。それがチームです。
チームを作るには、何が必要なのでしょうか?まずは人が集まってグループになるところから始めましょう(図3)。
図3: グループ |
人はそれぞれに目的や興味を持っており、それらによって思考や行動が方向づけられます。グループの段階では、人それぞれに方向がバラバラであり、好き勝手に振る舞うことになります。
チームと呼ぶ時には、方向が統一されている必要があります。先ほど、チームと呼ぶ時には何らかの共通の目的を持って、それに向かって活動していることが多いのではないか、と言いました。チームに必要な要素の一つが目的であり、ビジョンと呼ばれます(図4)。ビジョンとは人を惹き付ける目的であり、人の行動を方向づけるものです。夢、志、願望、希望と言った方が分かりやすいかもしれません。プロジェクトにおいて「私たちは何のためにソフトウエアを開発するのか?」その問いについて考えることでビジョンは見い出されます。
図4: ビジョン(クリックで拡大) |
ビジョンは思いや気持ちであり、人々を惹き付け、方向づけるものです。人を強力に惹き付けるビジョンとなっていればこの先は話す必要がないと言ってよいほど、チームにとって重要なものです。チームにビジョンがなければメンバを方向づけることができず、何をすべきか逐一指示をださなければいけなくなります。
ビジョンは方向を示しますが、進むペース(速度)を決定する要因にはなりません。「速度=距離÷時間」という公式を小学校で習いました。速度を定めるために「いつまでに」「どこまで」行く必要があるのかを指定します。それがゴールです(図5)。ソフトウエア開発では、納期が「いつまでに」を示し、システム要件が「どこまで」を示します。
図5: ゴールとマイルストン(クリックで拡大) |
ゴールは最終的に到達したい地点であり遠くに設定されています。マラソンを走ることを想像してみてください。マラソンでは、ゴールに着実に到達するために、途中のチェックポイントごとに何分で到着しなければいけないかを考えると思います。ペース配分を考え、チェックポイントごとに確認をすることで、ゴールに予定通りに到達できるか判断できるようにします。このチェックポイントをマイルストン(一里塚)と呼びます。