失敗しないプロジェクトマネジメントに必要なこと 基礎知識やポイントを解説
はじめに
プロジェクトを任されたとき、誇らしい気持ちになると同時に、「きちんと進行できるか」「無事成功へと導けるか」不安になることもあるでしょう。プロジェクト成功の鍵は、プロジェクトマネジメントにあります。そこで、本記事では「プロジェクトマネジメントとは、どのようなものか」といった基礎知識に加え、有名なプロジェクト管理の手法、プロジェクトマネージャが持っていると良い資格、プロジェクトが失敗しやすいポイントとその解決策などをご紹介します。
プロジェクトマネジメントの基礎
プロジェクトを成功に導くために重要なポイントが、プロジェクトマネジメントです。マネジメントがうまくいっているプロジェクトは、成功する確率が格段に上がると言われています。まずは、プロジェクトマネジメントの基礎について学んでいきましょう。
プロジェクトマネジメントとは?
「プロジェクト」とは、特定の目標へ到達するために作られる組織・業務・計画などを指します。企業内で新規事業や新商品開発など行う際、プロジェクトを立ち上げて進めていくことが多いのではないでしょうか。
プロジェクトには明確なゴールがあり、定められた期間内に目標をクリアすることが重要です。そしてプロジェクトを成功へと導くために計画を立てて、人的リソース、予算、品質、スケジュールなどを管理するのが「プロジェクトマネジメント」です。
プロジェクトマネジメントの必要性
プロジェクトを進めていく際、いくつかのチームに分かれてタスクに取り組みます。しかし各チームが自由に進めていくと、進捗が遅れたり、予算を超えてしまったりする可能性があり、プロジェクト全体に大きな影響を与えてしまいかねません。そこで重要になってくるのが、プロジェクトマネジメントです。
全体を見守りながら「どのタスクを」「いつまでに」「どこまで達成するか」を明確にし、メンバー全員が効率的に業務を推進できるような環境を整え、プロジェクトの目的や計画がブレることなく成功へと導いていくためには、プロジェクトマネジメントが必須と言っても過言ではありません。
プロジェクト管理の項目を知るうえでおさえたい「PMBOK」
「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)」、日本では通称「ピンボック」と呼ばれており、プロジェクトマネジメントに必要なプロセスやノウハウをまとめたものです。1987年にアメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会)がガイドブックとして発表し、その定義は世界中へと広がりました。近年PMBOKは現場でよく使われているプロジェクトマネジメントの手法のひとつとなっています。
なお、PMBOKの定義は以下のように10の知識エリアと5つのプロセスで構成されています。
【10の知識エリア】
PMBOKには、プロジェクトにとってゴールとも言える「品質管理」「原価管理」「スケジュール管理」の3つに加え、「スコープ管理」「要員管理」「コミュニケーション管理」「リスク管理」「調達管理」「ステークホルダー管理」という6つ、そして全体をトータルで管理する「統合管理」を含めた10項目の知識が必要です。
【5つのプロセス】
プロジェクトの一連の流れを、「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・管理」「終結」という5つのプロセスに分けています。10の知識エリアと組み合わせることで、どのプロセスで何を作成・管理すべきか明確になるのが特徴です。
失敗しないためのポイント
プロジェクトマネジメントが失敗する理由は複数ありますが、以下のような点に注意すると回避しやすくなります。プロジェクトマネジメントに失敗しないための6つのポイントを、見ていきましょう。
明確な目標設定
そのプロジェクトの目標や目的を明確にし、開始前に全メンバーに共有しましょう。メンバー全員が最終的なゴールをイメージすることで、ブレることなく最後まで進めることができます。
適切な計画とスケジューリング
プロジェクトの目標や目的の達成に必要な計画を立案し、納期から逆算したスケジュールを決めていくのがお勧めです。事前にしっかりと計画やスケジュール管理を行うことで、必要な人的リソースやコスト、設備などを算出できます。
リスク管理
プロジェクトが計画通りに進むとは限りません。発生する可能性が高いリスクはもちろん、可能性が低いリスクも含めて対策をしていきましょう。また、プロジェクトが進行していくなかで新たにリスクが発生することもあるため、細やかに監視・コントロールしていくことが大切です。
効果的なコミュニケーション
プロジェクトをスムーズに進めていくためには、マネージャとメンバー間だけでなく、メンバー同士のコミュニケーションも重要になります。プロジェクトの種類によっては、幅広い職種やバックグラウンドを持ったメンバーが集まる可能性があります。そのため、個々のキャリアやスキルなどに配慮しながら情報の共有や伝達をしていきましょう。
進捗のモニタリングと調整
プロジェクトは実行計画に基づいて進めていきますが、同時に定期的なモニタリングを行うのがお勧めです。「計画とズレが生じていないか」「調整や軌道修正は必要ないか」などを定期的に確認することで、何らかの差異が生じた場合でも早急な対応ができます。
ステークホルダー管理
ステークホルダーとは「利害関係者」という意味で、プロジェクトに対して大きな影響を及ぼす可能性がある人を指します。例えば、社内プロジェクトであれば経営層、社外からの依頼であれば発注者などがステークホルダーにあたります。なかにはプロジェクトに関して否定的な意見を持つ人もいるため、ステークホルダーと良好な関係を保つことは、プロジェクトを円滑に進めるために重要と言えるでしょう。
プロジェクトマネジメントに必要なスキル
プロジェクトマネジメントを行っていくうえで、必要なスキルはあるのでしょうか。特に重要なスキルは以下の4つです。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは仕事をしていくうえで大切ですが、特にプロジェクトマネジメントを行うマネージャにとって必須とも言えるスキルです。同じプロジェクトのメンバーに対してはもちろん、他部署との連携を図る、取引先と交渉を行うなど、プロジェクトマネージャには卓越したコミュニケーションスキルが求められます。
問題解決スキル
何らかのトラブルが発生したとき、即座に状況や原因などを分析して適切な打開策を考えるなど、プロジェクトマネージャには高い問題解決スキルが求められます。しかし目の前の問題解決だけに捕らわれるのではなく、プロジェクト全体を俯瞰して見る力も必要と言えるでしょう。
リスク管理スキル
どのようなタイミングでミスが起こりやすいか、どのようなときにコミュニケーション不足や齟齬が生まれやすくなるのか等のリスクを予測し、事前に対策を行うことでプロジェクトが円滑に進められます。プロジェクトマネージャは、リスク管理スキルの高さが要求されるポジションです。
QCDの管理能力
QCDとはプロジェクトの最終目的である、「Quality(品質管理)」「Cost(原価管理)」「Delivery(スケジュール管理)」の3つを指します。事前に定められたQCDの条件をクリアするため、常にプロジェクトの把握・管理を行い、適切な対策を行う能力が必要です。
プロジェクトマネジメントの代表的な手法
プロジェクトをスムーズに管理進行するための手法は、PMBOKだけではありません。その他、代表的な手法や仕組みを4点、以下でご紹介します。
ガントチャート
プロジェクトを小さなタスクに分割し、Excelなどを使って各タスクの進捗状況を見える化したものです。縦軸にはタスクを書き出し、それぞれの作業名、担当者、開始と終了の日付などを記入。横軸に日時などを設定し、進み具合を入れていきます。見た目が横棒グラフのようになるので、タスクがどの程度進められているを一目で把握できる仕組みです。
PERT
PERTは「Program Evaluation and Review Technique」の略で、各工程の依存関係をフローチャートで表す手法です。それぞれの工程の関係が明確になるため、どの工程が重要なのかを判断しやすくするほか、前後関係の整理にも役立ちます。特定の工程で変化が生じた場合、そこに関連する工程すべてが影響を受けるため、プロジェクトの途中で何度か見直しが必要になります。
CCPM
CCPMは「Critical Chain Project Management」の略で、スケジュールを組む際に必要最低限の時間に設定することで、プロジェクト全体の余裕を持たせる手法です。各工程やタスクでそれぞれバッファを持たせるのではなく、プロジェクト全体でバッファを持たせる考え方になるため、進捗に遅れが生じた場合でもプロジェクトバッファで吸収が可能となり、全体のスケジュール管理がしやすくなります。なお、CCPMは予算管理にも適用できます。
WBS
WBSは「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクトの進行に必要なすべてのタスクを洗い出し、細分化したうえで樹形図にまとめる手法を指します。最初の段階で、どの工程にどのようなタスクが必要になるのかを共通認識にできるうえ、わかりやすく視覚化できるため優先順位が決めやすいというメリットがあります。なおWBSで洗い出したタスクにプロセスを加えたものが、先に紹介したガンチャートです。
プロジェクトマネジメントに関する資格
プロジェクトマネジメントに関する資格には、事前に学びとして取得するものと、実績を積んだ後にスキルの証明として取得するものの2種類があります。それぞれご紹介していきましょう。
プロジェクトマネージャ試験(PM)
「プロジェクトマネージャ試験」は通称「PM」と呼ばれており、独立行政法人情報処理推進機構が運営している資格試験です。主にITシステム開発のプロジェクト担当者を対象としており、全体計画、予算、スケジュール、品質管理などの体系的な知識、スキルなどを問う内容となっています。受験資格はありませんので、誰でも挑戦ができます。
PMP®
PMP®(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)は、PMBOKの生みの親であるPMIが認定する国際資格です。プロジェクトマネジメントに関する知識やスキル、経験などを測る試験だけでなく、職務経歴書を提出する必要があります。実務経験がないと受験資格が得られないため、すでにプロジェクトマネージャとして仕事をしている人が、自分の能力を証明するために取得する資格と考えておきましょう。なお、いったん取得した後も3年おきに更新が必要です。
プロジェクトマネジメントの失敗例とその対策
プロジェクトの成功は、さまざまな課題を無事に解決できるかという点がポイントとなります。プロジェクトマネジメントを進行していくうえで起こりがちな失敗例とその対策を3つご紹介します。
失敗例1:要件や計画が明確化されていない
最初の段階でプロジェクトの要件や計画が明確化されていないと、「抜け」や「漏れ」が生じてしまいがちです。その結果、途中で計画を変更せざるを得なくなったり、クライアントが求める基準に達する成果物を納品できなくなったりすることも考えられます。また「納期に間に合わない」「求める成果物が仕上がらない」という状況になれば、クレームになりかねません。そのため、疑問点や曖昧な部分を残したままプロジェクトを開始せず、クライアントとともに要件や納期、このプロジェクトの目的などをしっかり詰めるようにしましょう。
失敗例2:進捗やスケジュールの管理ができていない
プロジェクトの進捗管理やスケジュール管理ができていないと、作業の遅延に気づけないため重大なトラブルを引き起こしてしまうことがあります。各タスクのメンバーが勝手にスケジュールを変更したり、遅延させたりするようなことがないよう、細やかに監視・管理していきましょう。進捗管理を行う際は、タスクを細分化して「完了」と「未完了」が一目でわかるようにすると管理がしやすくなります。また、メンバー全員が参加して行う進捗会議を行うと、共通認識を持つことができるため有効です。
失敗例3:コミュニケーション不足
プロジェクトが失敗する原因のひとつに、コミュニケーション不足があります。クライアントへの報告が不十分である場合や、メンバーへの情報共有ができていなかった等、クライアントやメンバーとの連携がうまくいかないとトラブルが生じてしまいがちです。その結果、プロジェクトそのものがうまく進行できなくなる可能性があります。そのため、プロジェクトマネージャが率先してコミュニケーションを図るようにしましょう。必要な情報が適切なタイミングで共有できていれば、互いに進捗状況が把握でき、何か問題が起きたときも迅速に対応ができます。なお、会議の場だけでなく、積極的にグチや悩みを聞くなど、インフォーマルなコミュニケーションの場を増やしていくのもお勧めです。コミュニケーション不足を補うようなチャットツールの導入も良いかもしれません。