これまで企業向けSIに関わってきたエンジニアのためのサバイバルガイド
SI企業もエンジニア個人も市場変化に対応する変革が必要
市場が変化する中、あまりに当たり前なことだが、企業もエンジニアも変わらなければならない。おそらく最近の市場の変化トレンドとして、近未来に「SIの終焉」の逆回転がおこって復興し、昔のような様子がそのままに再現するということは無いように思う。歴史として顧客が痛みを経験し、生き残るために工夫を行って進化してきたために、売り手側たるSI企業もエンジニア個人も顧客に対応して変化し続けていかなければ市場として取引が成り立たない。今は対応が足りないために、需給バランスが崩れ、一方的にエンジニアリングの人月単価が下落している。企業はビジネスモデルを受託開発から変え、個人はソフトウェア開発に従事するだけではない変化が必要なのではないか。今後、不況のトンネルを抜けて景気循環が上向く時機が到来し、エンドユーザー企業のIT投資が以前ぐらいに復調したとしても、その金の使い方は同じには戻らない。大規模なシステム開発をベンダーに丸投げで委託した上で、数ヶ月から数年も完成を待ち続けるようなやり方は主流とはならないだろう。
最近の市場変化は、経済の停滞や大災害によるBCP意識の向上が原因で、クラウド製品を歓迎する世の流れは結果であると前回述べた。クラウド概念がすばらしいというのではなく、概念の構成要素それぞれが時代の課題に応えることができたということを指摘している。だから企業やエンジニアが自己変革しようとする時に考えるべきことは、市場変化を引き起こした課題に気が付き対応するソリューションを提案することだと思っている。現在の市場変化については第一回にて以下にまとめた。
- 顧客は、以前は複数年にまたがる投資を先払い的に実施していたが、最近はクラウドを利用して、初年度投資額を抑えたいと考えるようになった
- 顧客は、以前は自社向けのシステム開発を多数行っていたが、最近はクラウド採用かつ、自社向けカスタマイズは避けたいと考えるようになった
- 顧客は、以前はオンプレミス以外考えられなかったが、最近は基本的にクラウドを検討し、選択肢があるならばSaaSをより望むようになった
上記の変化について、原因は第2回にて以下のように考察した。
- ここしばらくの不況によりIT投資を凍結して不連続な時期を作ったために、企業内に配置したITシステムの、適切な再投資タイミングを失って、各企業のIT戦略が混乱した。
- 事業継続について、歴史的大災害が続く中で各企業が真剣に考えなければならない雰囲気となってシステムの物理的な分散配置が必要となった。
- さらにはシステムの分散に加えて、一箇所に従業員を集約することのリスクを各企業が考察しはじめた。
まとめた市場変化は私の経験談からの導きでしか無いが、おそらく間違っていないと思う。結果については落ち着いた定点観測を行っていればおよそ見間違えることは無い。一方で原因の考察は誰もが絶対的な真実であるとは言い切れない。世の中は大変複雑なもので、単純な因果関係のみで構築されていないからだ。
市場の課題(イコール、変化の原因、と言える)を発見するために、つまりは私が市場変化に対応するために、直接的な経験を言語化するのではなく(こちらは結果の認識)、不確実ながら現象の裏に潜み隠れる原因をシナリオとして納得できるようになるまで勝手に考えただけであるために、独りよがりな思い込みを披露しているだけかもしれない。ここでの真理はひとつ。前回の冒頭に述べたように、原因と結果を決して逆転させること無く、因果関係を適切に把握することに務めるのみである。
ここまで断定的に論旨展開してきたが、ここで思い切ってはしごを外してしまおう。いろいろ言ってきたが結局は、生まれ変わりたい各企業および各エンジニア個人が、自己の信じる市場の課題を発見することが必要である、という結論だ。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- Google Appsの普及に見る、企業ITインテグレーションの変化
- 国内IT市場の不連続性と、SIの終焉の予感
- 発展途上で可能性に満ちたSaaS
- SaaSというビジネスモデルの成功要因とは
- Azureとのコラボレーションによる、これからのワークスタイルとは― Developers Summit 2020レポート
- セールスフォースに見るSaaSの衝撃
- 今注目のSaaSを知る
- SaaSが実現するエンタープライズIT社会の共存共栄モデル
- あくまでAIは「効率化」のための超高性能なツール。便利さに依存することなく「人が幸せになれる使い方」を探ろう
- JavaScriptフレームワークに対する、あるGoogle社員の争い