OSSライセンスを勉強する前に知っておきたいこと

2014年1月20日(月)
吉井 雅人

「コピーレフト」の概念とOSSライセンスの類型

OSSライセンスは作成元が様々とはいえ、先に述べた「オープンソースの定義の条件」を基本的に満たしています。そのため、どのライセンスにおいても共通の条件は存在しています。これに追加される条件がどのようなものかによってライセンスを類型化することができます。条件の強さによって様々な分類が可能ですが、ここでは3つに分類することにします。類型化するための鍵となるのが「コピーレフト」という概念です。この「コピーレフト」という概念はOSSライセンスを学習するためには、必ず理解しておく必要があります。

コピーレフト(copyleft)という概念はFree Software Foundationを設立したリチャード・ストールマンによって提唱されました。これは著作権を保持しつつ、再頒布や改変の自由を利用者に与え続けなければならない、というものです。つまり、コピーレフトのソフトウェアを利用(改変)した際には、ソフトウェアの受領者に対してソースコードを開示し、改変や再頒布をできる自由を与える必要があります。この概念の背景には、全てのソフトウェアは改変、再頒布が自由に行われるものでなければならない、という思想があります。

このコピーレフトという考え方がどの程度ライセンス条件に反映されているかによってライセンスを分類することができます。IPAの資料『OSSライセンスの比較および利用動向ならびに係争に関する調査』では、「コピーレフト型」「準コピーレフト型」「非コピーレフト型」の3種類に分類されており、本連載でもこの分類に基づいて説明します。

ライセンスごとの詳細な条件は次回に説明しますので、ここでは類型ごとの著名なライセンスを簡単に紹介します。

コピーレフト型のライセンス

「コピーレフト型」の有名なライセンスとしては、以下が挙げられます。

  • GPL(GNU General Public License version2、version3)
  • AGPL(GNU Affero General Public License version 3)
  • Sleepycat License

GPLは組み込み開発の現場で非常によく利用されますし、全てのOSSライセンスの中で最も人気がある(割合が多い)ライセンスでもあります。AGPLはGPLがカバーしきれていなかった部分を補うために作成されたライセンスです。Sleepycat Licenseは作成元は異なりますがGPLと同様にコピーレフトとして知られているライセンスです。

準コピーレフト型のライセンス

続いて「準コピーレフト型」の有名なライセンスを挙げます。LGPL(GNU Lesser General Public License Version2.1、Version3)は名前の通り、GPLからコピーレフト性を弱めたライセンスです。またMPL(Mozilla Public License Version 1.1、Version 2.0)も作成元は異なりますが、弱いコピーレフト性を持つライセンスです。

非コピーレフト型のライセンス

「非コピーレフト型」のライセンスとして有名なものとしては、Apache License(Version1.1、Version2)、BSD License(4-clause、3-clause、2-clause)、MIT Licenseが挙げられます。いずれも非常に人気のあるライセンスで、ソフトウェアを検査すると必ずと言っていいほど検出されます。

次回はこれらのライセンスについて、個別の特徴や条件を説明していきます。

<編集部より> 1ページ目の内容で一部表現に誤りがあったため、注釈を追加しました。(2014.02.17)

株式会社 オージス総研

2007年 オージス総研に入社。アーキテクチャの開発、ITシステムのパフォーマンス改善などを実施。
2008年以降、OSSソフトウェア検査、OSSライセンス教育、OSSガイドライン作成など、OSS の活用促進と適正利用を目的としたソリューションに従事。

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