エンタープライズ・アジャイルってなんだろう? 3つの視点と2つのフレームワーク
多様な利害関係者
スクラムに代表される従来のアジャイルの世界観にくらべて、利害関係者が複雑かつ多様化します。より上位のビジネス決定者、アジャイル自体への理解が足りない関係者、組織や会社のITインフラの標準や共通アーキテクチャを管理するエンジニア、関連する既存システムを担当する開発者等々、関わるプレイヤーの顔ぶれは一気に拡がっていきます。
利害は一つではない
利害関係者が多様化することによって、各々の利害がぶつかる状況も多くなってきます。「なぜそのサービスが必要になるのか?」ということを、利害の対立する関係者に対しても説明できる能力(Accountability)と、そのビジョンを共有する手段やプロセスが必要になります。
すっごく日本的な表現に置き換えてしまうと、「しがらみをどうコントロールするか?(もちろんポジティブな方向に、です)」がエンタープライズ・アジャイルの要諦の一つと言っても過言ではないでしょう。
さて、この連載で何をするか
最後にこの連載の目的を明確にしておきましょう。
冒頭述べたように、エンタープライズだなんだと言いながらも、いまだに「そもそも」レベルの質問も多いのが現状です。そこで、読者対象を次のような皆さんに設定します。
- 製品開発よりも、社内システムや外向けのサービスを開発する組織。いわゆるシステムインテグレータが活躍するような領域のシステムの開発
- 従来のアジャイルについて、机上の学習、開発者主体のパイロットプロジェクト実施、あるいはそれに毛の生えた程度の経験
- 開発者に限定せず、関わる利害関係者(ユーザ部門等)も想定
フレームワークとしては、DADをベースに進めていきます。これは、SAFe vs DADでどちらが優れているか? という構図ではありません。単に筆者自身の専門領域がDAD側だからに過ぎません(つまり深い意味はありません)。
ただし、極々私的な見解として、DADのほうが取り組みやすいと考えている点はここで述べておきます。「なぜ取り組みやすいのか?」は、連載の中でおいおい触れていきましょう。
“ごっこ”の遊具としては、私の勤務するHP社の“HP Agile Manager”を使います(以降、AGMと称します)。ただ、本連載はツールの詳細を説明することよりも考え方が主体となっています。
次回以降は、次のように進めていこうと思います。
第2回 遊具の準備と最初の一歩
第3回 計画する
第4回 作りながら、己を知る
第5回 何事も節目が大事
第6回 おさらい
次回は、遊具の準備と、計画の第1歩に踏み出します。“ごっこ”ですから、気楽におつきあいください。
- SAFeについては、オージス総研さんが日本語化されたサイトを運営していらっしゃいます。
- DADは翻訳者チームによるコミュニティサイトがあります(筆者も絡んでいますが忙しくて……いやいや、ガンバリマス……)。
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