「まだ大丈夫」が命取り、企業の75%がIIoT未導入と判明
ほとんどの経営者たちは、IIoTを取り入れることが企業の将来にとって重要だと答える。だが、実際にIIoTを取り入れている企業はその約25%のみである。
Genpact Research Instituteがおこなったアンケートによれば、IIoTの導入が進まない最大の理由は「データセキュリティ」にあるとのことだ。ほか技術スキルの不足、レガシーシステムの使用、プライバシーの問題などが気がかりになっている。
「IIoTはこれまでのサプライチェーンを変える力をもっており、企業は貴重なリソースや時間を蓄えることができる。しかし、まだ新しいものであるために企業は懐疑的な態度を示しているのだ。IoTは、さまざまな箇所からこれまでよりもずっと多くのデータを集めてくる。そのデータをどう扱うのか、ということに価値があるわけだが、それ以前にそのデータを完全に信用できるか、特異なデータが本当に正しいものなのかを判断することは企業にとって大変チャレンジングなことだろう」とProfitectのCEO ガイ・イェヒアブ氏は言う。
Profitectは、IIoT導入についての予測分析ソリューションを提供する企業で、どこが上手く回っており、どこに異常があるのかを特定できるものだという。このソリューションにより、企業は数年でIIoT導入の効果をよく理解できるだろう。
また、経営者173名の34%は「データの質」がIIoT導入の妨げになっていると答えている。Profitectなどのアナリティクス企業は、集められるデータが数百万ドルのコスト削減につながり、より価値のあるソリューションを提供すると経営者たちの説得を試みているが、いまのところ納得は得られていないようだ。
「経営者たちが普段より焦っているようには見受けられないが、IIoTを導入するとなるとこれまで接続されていないデバイスを接続するということになってくるため、解決されなければならないセキュリティや技術的問題は多くある。IoTのポテンシャルをフル活用するにはオペレーションがリアルタイムにする必要があり、これはつまり、集められたデータはリアルタイムデータベースやアルゴリズムで、分析、活用されなければならないということだ」と、SAPのリサーチディレクター カイ・ゴェリック氏は述べている。
「多くの企業にとって大きな投資となるが、それを内部的に維持するために必要な明確なビジネスプランやスキル、予算をたいていの場合もっていない。」
ゴェリック氏の言うことは、Genpact Researchのアンケート結果と一致している。企業のほぼ50%は明確なIIoT戦略を打ち出そうとしているものの、30%はIIoTに関する向こう1年のプランを有していないという。
経営者にはその効果をよく理解しないままIIoTの導入を進めている場合もあるだろう。ゴェリック氏は、企業は経費削減という短期的な利益にのみ目を向けていると考えている。これではより複雑なデータを扱うことになった際、新しいコネクテッドデバイスがもたらす利益についての知識やスタッフ教育不足のために苦しむことになるに違いない。
IIoT資産への攻撃に対する不安
サイバー攻撃も経営者が抱える懸念点である。アンケート結果では、経営者たちの50%がIIoTの導入によりサイバー攻撃を受けやすくなると答えており、それは紛れもなくランサムウェアの標的になることに対する懸念である。
「攻撃にさらされる面が増えたり、多様化することは、なんであれサイバー攻撃のリスクを増やす。そこで、考えられなければならないことは2つ。まず、IoTにより攻撃者がより広範囲なネットワークに影響を及ぼす入り口が増えるということ。そして、IoTが見た目に派手な攻撃を仕掛けるのに魅力的なターゲットになりうるということだ」と、EMCのセキュリティ部門であるRSAのマーケティングディレクター ロブ・サドウスキー氏は語る。
今後のIIoT導入について考えている経営者にとっては気の滅入るような話だが、サドウスキー氏はこれらのリスクを軽減し、IIoTデバイスを外部から守るために次のことを提案している。
- IoTの導入は物理的に安全な方法で行われること
- すでにある脆弱性対策プロセスにIoTを組み込むこと
- IoTへのアクセスをセキュアにすること
- デバイスへの攻撃や侵入をモニターすること
- デバイス固有のセキュリティ上の機能を評価、理解しておくこと
これらの懸念は、経営者の35%が抱えていると考えている問題であり、解決にはスタッフのスキル不足を解消することが必要だ。特に大企業であれば、IoTの専門家を雇うか、RSAなどのようなスケーラブルなセキュリティツールを持つ外部の企業に助力を求める必要がある。
IIoT(産業用IoT)は、オートメーションと並んで第4次産業革命の要素として挙げられている。第3次革命の際には、職場へのコンピュータの導入が挙げられているが、それにより過去30年の生産性は飛躍的に向上した。現在IoTに取り組んでいる企業は、職場での自動化やロボティクス、ビッグデータ解析の時代に入ろうとしている今、これらのコネクテッドデバイスの導入が生産性を飛躍的に向上させると期待している。
来たる革命への対応のスピードによって、企業の明暗が分かれるのは間違いないだろう。75%が未導入と聞いて、安心感を覚える人がいないことを祈る。
ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]
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