選択肢が広がるBI製品
メインフレーマなど国内大手ベンダーの動向
メインフレームの時代からシステム構築を手がけてきた他のベンダーはBI分野にどう取り組んでいるのだろうか。主要な製品やサービスをまとめたのが図3-1である。
自社アプリケーション実行基盤向けの独自製品もあるが、一般的な商談ではフロントエンドにはコグノスやビジネスオブジェクツなどの製品を使い、 DWHの構築などと合わせたシステムインテグレーションを進める例が多いようだ。なお、IBM(コグノス)やSAP(ビジネスオブジェクト)は買収後も広く他ベンダーに製品を提供していく方針であり、自社プラットフォーム限定というわけではない。
NECはフロントツールとしてコグノス、ビジネスオブジェクツ、マイクロストラテジーなどの製品を扱う。さらに、2008年6月に資本提携したウイングアーク テクノロジーズの「Dr.Sum EA」を同社の情報管理基盤「InfoFrame」上におけるBI製品として位置付けるとともに、データ統合ツール「DataCoordinator」と「Dr.Sum」の機能連携も強化している。
富士通はBIソリューションの「Interstage Navigator」を提供。これは同社のアプリケーション基盤「Interstage」上のBIツールという位置付けで、データ統合や分析/レポーティングといった機能を含む。ほかにコグノス製品群も取り扱う。
加えて2008年10月には、ERPソフト「GLOVIA」の1モジュールとして「GLOVIA/MI」を発表した。これは、企業活動の最小記録単位である取引明細情報を蓄積し、業務プロセスと関連付けて管理するものだ。現場で刻々と動く業務実態を把握するとともに、各種の分析を通じて将来予測もカバーすることを狙う。
NTTデータは2008年11月に「データウェアハウス/ビジネスインテリジェンス・ラボ」を開設。このラボでは、BIの導入を検討する企業に対し、製品選定のアドバイスに加えて性能検証などのサービスを有償で提供する。
SaaSベンダーもBIに注力
企業情報システムの新たな実装方式としてSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)に注目する企業が増えている。当たり前ながら、システムの形が変わっても情報活用のニーズは不変であり、SaaSベンダーはBIを意識した機能を盛り込むことに余念がない。
セールスフォース・ドットコムはSaaSアプリケーションの「Salesforce CRM」の基本機能として、分析/レポート機能やダッシュボード機能(図3-2)を標準装備する。Salesforceのデータベースに格納しているデータに対し、抽出したいデータ項目や月別などの軸をWebブラウザ上で指定すれば、集計結果が画面に表示される。好みに応じてグラフ化できるほか、常に見たい指標についてはダッシュボードとして登録できる。
「一般的な分析なら標準機能でも十分に対応できる」(セールスエンジニアリング本部の内田仁史シニアプリンシパルアークテクト)ほか、もっと高度な分析がしたいという場合には、アプリケーション共有サービス『AppExchange』に登録されているサードパーティーのツールを使ったり、CSV形式ファイルなどで他のBIツールにデータを移行して分析する方法がある。
CRM、ERP、Eコマースなどを対象にしたSaaS「NetSuite」を提供するネットスイートも同様に、標準でBI機能を備える。収入見込みなどの指標をダッシュボードに表示したり(図3-3)、Webブラウザ上の簡単な操作でデータを抽出・分析したりできる。ユーザー企業が別途用意した一般的なBIツールから、ODBC経由でNetsuiteのデータベースに直接アクセスするという使い方も可能だ。
「顧客ニーズに合わせて、SaaSアプリケーションは進化をする。合理的で速やかな意思決定がますます求められる中、BIの機能は特に充実する分野の1つになる」(高沢冬樹 上席執行役員)。
※本連載の初出は『IT Leaders』2009年1月号
特集「BI(ビジネスインテリジェンス)最前線」