OLAP分析機能を使う

2010年3月26日(金)
川西 修司

Pentaho OLAP分析とは

第3回では、Pentahoレポーティングについて解説しました。第4回の今回は、データ・ウエアハウス(DWH)を多次元的に解析して視覚化する、OLAP(Online Analytical Processing)分析機能を解説します。

Pentaho OLAP分析では、「Mondrian」と呼ぶRelational OLAP(ROLAP)エンジンを利用します。論理的な多次元データベース・モデルを物理データベース・モデルにマッピングした、スター型やスノー・フレーク型のスキーマを使います(図1-1)。Mondrianのスキーマはマッピングを実行するXMLファイルであり、Pentahoスキーマ・ワークベンチと呼ぶツールを用いて視覚的に作成できます。

基本的/典型的なMondrianスキーマは、1つのキューブ、1つのファクト・テーブル、いくつかのディメンジョン・テーブル、ディメンジョンごとに1つあるヒエラルキー(階層)と、いくつかのレベルで構成されます。

なお、キューブとは、多次元構造を表現したものであり、ディメンジョンとメジャーの集合体です。ディメンジョンのヒエラルキーに沿った集計が可能になります(図1-2)。ファクト・テーブルとは、データを分析する数値(メジャー)が格納されたテーブルです。ディメンジョン・テーブルとは、データを分析する視点に立ったテーブルです。

図1-2の場合、キューブは3つのディメンジョン(地域、製品、日付)と2つのメジャー(売上金額、売上個数)を持っています。それぞれのディメンジョンは、レベルを持ちます。例えば、地域ディメンジョンは2つのレベル(地方、都道府県)を持っています。それぞれのレベルは、メンバーによりディメンジョンを構成します。メンバーとは、ディメンジョン内におけるデータの最小単位です。都道府県レベルは、4つのメンバー(東京、神奈川、大阪、京都)を持っています。

Pentaho OLAP分析の仕組み

Pentaho OLAP分析の仕組みと使い方は、図1-3の通りです。

スキーマ(Mondrianスキーマ・ファイル)は、スキーマ・ワークベンチを使って作成します。スキーマ・ワークベンチは、ETLが生成したDWHの物理構造を参照し、スキーマの作成を支援します。権限を持った、BIに詳しいパワー・ユーザーがスキーマを作成します。

作成したMondrianスキーマ・ファイルをBIサーバーにパブリッシュ(配布/公開)すれば、BIサーバーのユーザー・コンソールから多次元分析できるようになります。情報の分析が必要な、業務部門のビジネス・ユーザーが利用します。

BIサーバーは、Javaアプリケーション・サーバー上で動作します。多次元分析機能の実態は、「JPivot」と呼ぶサーブレット・プログラム(Java Servlet)です。JPivotがMondrianスキーマ・ファイルに定義されているデータを表示することで実現しています。

ビジネス・ユーザーによるドリルダウンなどの分析操作は、HTTPでJPivotサーブレットに渡されます。JPivotサーブレットは、MDX(Multidimensional Expressions)と呼ばれるOLAPデータベース問い合わせ言語を用いてクエリーを生成し、Mondrian OLAPエンジンに要求します。

Mondrian OLAPエンジンは、受け取ったMDXクエリーをSQLクエリーへと変換し、SQLを用いてDWHからデータを取得します。取得したデータはJPivotサーブレットに渡され、最終的にビジネス・ユーザーのWebブラウザ画面に分析結果が表示されます。

Mondrian OLAPエンジンの特徴に、キャッシュを上手に利用するための自動最適化機能があります。MDXクエリーによって要求されたデータをローカル・メモリー上で処理するか、あるいはDWHに問い合わせるかを自動的に選択して最適化します。この機能によって、過去に処理された問い合わせのパフォーマンスを向上させています。

次ページからは、実際にスキーマ・ワークベンチを使ってキューブを作成していきます。

株式会社KSKソリューションズ
2006年KSKソリューションズ設立メンバーの1人。エンジニアとして主にオープンソースBI Pentahoを利用したBIシステムの構築に従事する。Pentaho日本語サイト(http://www.pentaho-partner.jp/)の運営やツールの日本語化、導入からサポート、トレーニングなど活動は幅広い。

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