コネクション受付制御とは?
通信の実際と受付制御
本連載では、Webサーバーにおけるコネクション受付制御に焦点をあて、通信量に応じた受付制御のシミュレーションや期待できる性能などについて、数値を使って検証していく。第1回の今回は、通信の世界で実現されている受付制御について紹介していく。
電話による通話では発信者がダイヤルし、受信者が受話器を持ち上げた時点で呼(call、2端末間の物理的な通信路)が確立される。一方、インターネットなどのパケット網では、通信を行う2端末間にコネクション(connection)と呼ばれる論理的な通信路が確立される。
いずれにしても、通信資源(伝送路の通信容量、接続・中継機器や端末の処理能力など)には限りがあるので、呼やコネクションの接続要求をすべて受け付けることはできない。
そこで、限界を超える前に接続数を制限して、ネットワークの円滑な運用を図ることが以前から行われてきた。このようなネットワークへの入場制限は、制限する対象に応じてそれぞれ「呼受付制御(Call Admission Control)」「コネクション受付制御(Connection Admission Control)」と呼ばれている。
いかなる呼に対しても、十分なサービスを提供できるのであれば受付制御を行う必要はない。しかし、現実的には呼の増加や要望される品質に追従し、サービス提供者が資源を無限大に増やすことは不可能である。そこでサービス提供者は、保有している資源の範囲で、呼に提供できるサービスを保証するために受付制御を行う。
今回は、遠距離間で音声を伝える手法として通信の原点であると考えられる電話網、さまざまな情報(データ、音声およびリアルタイム性を必要とする動画など)の混在環境においても単一のネットワークでサポート可能なATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)、そして最後にWebサーバーのコネクション受付制御の概要を説明する。
電話網における呼受付制御
電話にとって最も重要なことは、音声品質よりも、むしろ相手側と接続できるか否かということである。つまり、利用者にとっては呼損率(全呼に対する呼損の割合)が問題となる。電話網を考える場合、網形態には大きく分けて図1に示すようにメッシュ形とスター形の2つがある。
スター形は、中央の交換機からすべての交換機に対して放射状に接続される形態である。各交換機の要求に対し、中央の交換機が切り替えを行うことであて先と通信できる。伝送路敷設に関しては、交換機の台数分でよいので、比較的経済的であると考えられる。しかし、中央交換機に障害があると、電話網すべてが停止してしまい、全く通信が行えなくなる可能性を有している。つまり、経済的ではあるが信頼性の低い網形態である。
メッシュ形は、交換機がそのほか複数の交換機と相互に、網目状に接続される形態である。交換機がそのほかすべての交換機と相互接続される場合は、特にフルメッシュという。あて先交換機への経路が複数存在するので、通信路や交換機が故障した場合でも、代替経路により通信を行うことが可能である。また、トラヒック状況により通信路を変更することも可能である。つまり、スター形に比べ、信頼性が非常に高い形態であるといえる。
しかし、伝送路の敷設数は端末数をn台とすると、フルメッシュのとき、n(n-1)/2となり、nの2乗の割合で増加する。つまり、経済的な網形態とはいえない。
実際アナログ電話網では、日本に8局存在する総括局間では、信頼性を高めるためメッシュ形になっており、総括局の傘下にある中心局以下では、信頼性は低いが経済的なスター形になっている。
しかし、どのようなネットワークを構築しても、通信資源が有限である以上、呼損は発生する。そこで実際は、想定される接続要求の範囲内で呼損率の上限を設定し、それを上回らないように回線数を増やしたり、交換機を増強したりすることで呼受付制御を行っている。
次はATMにおけるコネクション受付制御について説明する。