自動運転車に関わる規制の未来は?
ドライバーを必要としない車の進歩は相当なものになっている。Waymoの最新の報告では、自動運転のソフトウェアは2015年から2016年でかなり良くなっているとのことだ。しかし、自動運転車全体の走行距離の伸びに対して、ソフトウェアの進歩は比例しているわけではない。
カリフォルニア州では自動運転車のテストを行っている企業に対し、不具合が起きたことについて毎年報告することを要請している。求められている報告内容には、交通事故のみではなくバグか何かが原因でソフトウェアが停止したことについても含まれている。
Waymoの場合、2015年の不具合が起きる割合は1000マイルあたり0.8件だった。それが去年は0.2件になっている。1/4という目覚ましい進歩だ。2016年は635,868マイルのテスト走行で124件の不具合が起きており、それらの多くは高速などではなく下道で起きている。2015年の場合だと424,331マイルで341件の不具合が起こっている。
自動運転車が広く使われるまでにはまだまだ課題は多いが、その進歩の早さを表す数字と言えるだろう。ではこれらが路上を走るようになるまでに法整備の方はどうなるだろうか?カリフォルニア州では不具合があった場合の報告や許可証の件が進んでいるが、全ての州がそうというわけではない。次に述べるのは自動運転車の法整備の現状と、それがここ数年でどうなろうとしているかについてだ。
自動運転車の実用に向かっている法整備
現在のところいくつもの州が自動運転車の法整備に動いている。去年の12月にはミシガン州が自動運転車についての包括的な規制案が通過した最初の州となった。テスト及び実用目的で自動運転車が公道を走るための4つの議案が通過したのだ。驚くことに、運転手が車に乗っていなくても良いということになっている。またこの規制には事故が起こった時の責任についても述べられており、自動運転中に起こった事故や不具合が見つかった時の責任はメーカーにあるとされている。
更にマサチューセッツ州議員のJason Lewisは今年の1月、自動運転車が州内を走る際に1マイルあたり2.5セント課税するという議案を持ちだした。自動運転車を目的なく走らせないようにするということがその理由のようだ。運転手がいないとなると、届け物をしたりライドシェアリングに貸し出したり、ただで駐車できる場所を探すなどの目的で車を勝手に走らせておくことをする人が出てくるかも知れない。しかしそれによる余計な渋滞をマサチューセッツ州は避けたいのだ。またこの議案では、自動運転車は完全に電動であることを求めている。これにより現在州が抱えているガソリン税の損失がカバーされることになる。
車は運転手を伴わないため、その規制は厳しい物になる。昨年12月、Uberはピッツバーグでのテストの成功に続き、サンフランシスコでもテストを行おうとした。だがそうするために、カリフォルニアの法律ではテストの許可を申請しなければならないのだが、Uberはこれを行っていない。州の法律を守ろうとしなかったため、カリフォルニアは自動車に関する規制を持ち出し、結局のところUberはテストをアリゾナへ持ち越すことにした。
自動運転車に関する法律については、州それぞれのツギハギではなく、国家全体で適用されるものが必要なのは明らかだ。自動運転車に関する規制ができているのはたった10前後の州だけであり、公道でのテストが今後も続くうえで混乱を招くことになる。
より広い範囲で適用される規制が必要だ
政府は自動運転車に関する法律の枠組みを定めることを目的に、9月に連邦自動車政策を発表した。この政策では安全面の要求について15のことに触れられているがどれもきっちりとした規制ではなく、かといって技術の進歩を妨げるものではない。米国運輸省は1月に、連邦自動化委員会は交通における喫緊の課題について取り組むと発表している。米国はこれに関する法整備に動いているが、運輸長官はまだ着任して間も無く、自動運転車はどんどん進化している。
しかしそうして整備された法律というものがどれ程実現可能かについて考えなければならないだろう。
大事なことは、車は州の境を越えて移動するものだ。そのことを考えれば、州レベルの法律はやがて州をまたいで影響を及ぼすことになる。そうなれば、メーカーは車を作る上でどこの州の法律にも抵触しない厳しい水準に合わせなければいけなくなる。各メーカーがカリフォルニア州のCO2排出規制に適合する車を作るのは容易に実現可能だろうが、自動運転車となると同じようにはいかないだろう。
幅広く通用する法律ができるまで、このことは念頭におかれ続けなければならない。州境を超えるごとに自動運転車が関わる規制をコロコロ変えるというのは現実的ではない。ある場合何が正しいのかを人工知能が判断する上で殊更問題になるだろう。
ある専門家は、自動運転車の規制は医薬品の場合と同じようなプロセスで行われるべきであり、その試験を段階ごとに分けることを薦めている。まず規制する側が自動運転車に予測していないような状況でどう対応するかという臨床前試験のようなことを行う。そこから更に高度な意思決定が求められる試験へと移行し、それらをクリアしていけば自動運転車は新しい設定でより多くの道での走行が許可されるようになり、最終的には新しい街で走れるようになる。彼ら専門家たちは車が賢くなっていくにつれて市場の規制は緩和されると考えている。最初は時間がかかるだろうが、テクノロジーが洗練されていけば法整備のプロセスはずっと効率的なものになるだろう。
失敗や経験から自動運転車が学習するということは専門家たちも十分わかっている。だがトライアンドエラーを嫌がる彼らとしては、路上に出るまでに自動運転車を完全なものにしたいという思いがあるのだろうが、これは経験から学習するやり方的に適切ではない。テストコースや限られた市街だけでは不十分であり、自動運転車はその価値を示すためにさまざまな路上で試されるべきである。おそらく政府はテストできる州や民間企業の協力により受け入れられるレベルの実施水準を出してくることだろう。
自動運転車に関する最適な承認過程を定めるために、政府と民間の協力関係は必要なものになる。その承認過程が医薬品の場合と同じようなものになっても、あるいは州ごとに内容がバラバラなものの寄せ集めになっても、このテクノロジーにとって最適な結果はもたらさない。上院議員2名が自動運転車の法整備を進めるためのプランを発表し、そこで自動運転車が路上を走るための議会の協力の必要性を訴えた。現在の米国の自動車安全水準は人が運転することが前提となっており、そのことを変わることが必要だ。新しい技術を取り入れた法律や基準が、向こう数十年に渡るドライバーがいない世界へのスムーズな移行を可能とする。
Seth BirnbaumはEverQuoteのCEOである。同社は米国のオンライン自動車保険の最大手だ。
SETH BIRNBAUM
[原文4]
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- 自律運転車のテスト期間99%削減を狙う研究者達
- Googleが新たな特許取得 自動運転タクシーの正確なピックアップをサポート
- 問題解決のためには”問題の発生”が必要だ- Teslaの「Autopilot」死亡事故からあなたは何を学ぶ?
- 煽るTeslaと追うApple、ムスク氏は激化する技術競争を「AutoPilot」で勝ち抜けるか
- GoogleとUberのトップが旅客輸送の将来について語り合う
- スピードよりも“質”重視のトヨタ、2020年までの完全自動化狙わないと発表
- Googleの止まらない人材流出が示すその「弱み」と「暗い展望」
- 自動運転車は「雪道」でもスリップせず走れるか
- トヨタがミシガン大学と連携、AIプロジェクトに2200万ドルを投資すると明言
- BoschとNvidiaが自動運転技術向けAIスーパーコンピュータを開発中