連載 :
  ReadWrite Japan

自動運転車に乗りながら健康診断? 遠隔医療の最前線

2017年11月7日(火)
ReadWrite Japan

遠隔医療により将来、医療機関に出向く機会が減るのを待ち望む人は多いだろう。辺鄙なところに住んでいたり、予約の時間を過ぎてしまったがために長く待たされたり、具合の悪い状態で雇い主に出す診断書をもらうため通院したりといった状況が変わることを消費者は望んでいる。現在、医療サービス業者は遠隔で行えるようサービスを拡大している。またmediconectaやcouch といったスタートアップ企業は遠隔診療のための新しいスタンドアローンサービスを作り出している。

しかしながらCollege of Healthcare Information Management ExecutivesとKLAS 大学が実施した、CIO(Chief Information Officer)やITディレクター、遠隔医療の専門家など114名を対象に

した新しい調査によると、実際に遠隔医療の実用化には大きな障壁が存在するという。

回答者の59%は還付金が障壁になっていると答えている。還付金の支払いが遅れたりレートが悪くなったりするという話ではない。多くの人が問題にしているのは電子化された医療データとバーチャルな医療プラットフォームの統合化の動きがまるでない、あるいは方向性がバラバラなのが問題だという。
しかし患者の医療サービスへのアクセスの改善が大きな利点であることも取り上げられており、3/4は遠隔医療の専門家の拡充を図るか、既存のソリューションへの患者のアクセス改善のために積極的に動いている。

KLASの代表、Adam Galeは次のように述べる。「遠隔医療にはさまざまな期待が寄せられていますが、それを支える技術はより早い進化が必要です。特に電子カルテとの統合はいまだに初歩的なレベルにあります。テクノロジーとサポートの充実のため、ベンダーはステップアップが求められます。」

ウェアエアブルデバイスや診断ツールで実現されている遠隔医療

TytoHomeはTyto Careの接続された健康システムで、高度なデジタル聴診器、耳鏡、体温計、検査カメラを使用して、心臓、肺、耳、皮膚、喉、温度の完全な遠隔医療訪問と包括的な健康診断を提供する。安全なデータ交換、臨床データ蓄積による適切な指示、生存遠隔医療の訪問。同社はAllied Physicians GroupとAmerican Wellを含む多くのパートナーシップを発表した。高齢者のケアでは既にK4Connectを使って専門家が患者の正確なライフスタイルや生体反応を把握するという遠隔医療の活用が見られる。

また診断という意味ではHIVの検査キットが開発されており、検査の迅速化や患者自身による治療のモニタリングが可能になっている。ロンドンのインペリアル大学とDNA Electronicsが協力して、携帯電話のチップが組み込まれたUSBスティックが作り出された。そこに血液を一滴落とし、HIV陽性であれば酸性度が変わることで電流が起こり、チップの電子回路に信号が流れ、その信号が付属のソフトウェアに送られる。

研究ではその精度の高さが確かめられており、991の血液サンプルが試された中、正確性は95%という結果が得られた。またこれまでのHIV検査と比べてかかる時間が大幅に短縮される。これまでは最低3日かかっていたのが30分以下になった。また血中のウイルス濃度を自宅でモニタリングすることもでき、最初に処方された薬にウイルスが耐性を獲得した際に異なる薬を投与するための判断を専門家が行うのに役立つ。

またある企業は、FDAの認証も取得しているYO Sperm Testは病院に行かずにスマートフォンを使い男性の生殖能力検査が行えるキットを出している。

医療サービスプロバイダとしての自動運転車

企業の多くが自動運転車のことを将来重要になる第3のテクノロジーだと考えている。移動手段がサービスとして確立し、自動車はよりさまざまな用途、例えば医者の往診などにも活用されるようになる。中には遠隔地向けの人工知能を利用した自動運転車の移動診療所などが現れ、辺鄙なところに住む患者の移動に関する問題を解消し、不当な負担やコストをかけること無く医療を提供することもできるようになるだろう。これら移動診療所には顧客の生体反応を正確に測定するためのセンサーが取り付けられ、検査の結果専門医にみてもらった方が良いようであればAimプラットフォームにより当直の医師と連絡が取れる。

遠隔医療にかかる予想外のコスト

遠隔医療には想定外の問題もある。従来の医療より安上がりではあるが、その簡単さゆえにより多くの人が医療サービスを利用すること、医療費の高騰を招くことが近年の調査で分かってきている。またウィスコンシン大学の別の研究では、オンラインによる治療の選択肢によって電話の問い合わせが増えることで、医者が毎月捌ける新しい患者の数は15%減少するともいう。またある研究者の話では、オンライン診療を利用する人とそうでない人で、健康面に関する向上は認められないとのことだ。

また診療上の問題もある。わいせつ動画を送りつけてくる男性客の流入だ。特に自分の裸を送りつけてくる連中はサインアップの際に偽名を使うことで審査をくぐり抜けてくる。

それでも近くに専門的な医療を受けられるところがない人たちにとって、遠隔医療はその障壁を緩和するものであり、理屈の上では地理的制約なしに同じ医療を受けることを可能にするものだ。将来、(既にSpritamの例があるが)3D印刷でその場で薬を作るヘルスケアシステムや、ドローンによる医薬品の宅配(Amazonは密かに遠隔医療に取り組んでいるという)を目にするのも遠いことではないだろう。病院で長い時間待たされるのは過去の話になるのかも知れない。

CATE LAWRENCE
[原文4]

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。
転載元はこちらをご覧ください。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています