Arduino Createによって着実に進化を続けるArduinoの最新動向
Embedded Linux Conference+OpenIoT Summitの2日目のキーノートに登壇したのは、DIYできるオープンソースのワンボードマイコンであるArduino Projectの創始者、Massimo Benzi氏だ。タイトルは「Arduino&Linux: A Love Story」で、オープンソースソフトウェアの代名詞であるLinuxに対比して、オープンソースのハードウェアであるArduinoを語るというものだ。
Benzi氏はまず、Arduinoのコンセプトを「誰もが複雑なテクノロジーをシンプルに使えるようにすること」、そして「それによってイノベーションを可能にすること」の2点だと語った。そして、すでに多くの製品やプロトタイプがArduinoによって開発されていることを紹介する。ユニークなものとして、自走式のスーツケースを動画で紹介し、様々なモノがArduinoによって制御できる例の一つとして挙げた。多くの場合、Linuxと組み合わせて開発が行われていると説明して、オープンソースのハードウェアであるArduinoとLinuxの関係がよく似ていることを指摘した。
さらに、自身がLinuxの初期からのユーザーであり、古くからLinuxを使っていたことを紹介する中で、イタリアの通信会社のWebサイトを構築する仕事をしていた経験を語り、「その当時はWindows NTでIISを使ってWebサーバーを構築しないといけなかったんだが、実際にはLinuxの上でApacheを使って実装したんだ。でももう時効だからイイよね?」と冗談めかしてLinuxへのパッションを語ったところで、会場からは大きな笑いが起きた。
また各種のデバイスやワンボードマイコンで様々な電子工作を行うMAKERムーブメントにも言及し、「Six Amazing things about Making」というスライドを使って、このMAKERムーブメントのコンセプトとArduinoのコンセプトが同じであることを紹介した。ちなみにこのスライドに使われている手描きのイラストは、2013年に行われた「Six Amazing things about Making」というビデオでプレゼンテーションと同時に描かれたものだ。
参考:Six Amazing Things about Making
そのMAKERムーブメントの中心としてワンボードマイコンのArduinoから端を発して、Yunと呼ばれるLinuxを搭載したArduinoと同じサイズのマイクロコンピュータボードから、様々なワイヤレスプロトコルに対応したボードまで、ハードウェア自体のバリエーションが拡大していることを紹介した。
またLinuxと同様に、Arduinoを取り巻くコミュニティが拡がっていることを語った。このスライドにあるようにArduino.ccというクラウドサービスに1億5千万セッション、フォーラムには50万人のユーザーが集い、1年に1200万ダウンロードがあるなど、世界中でArduinoが使われていることを強調し、オープンソースであることでArduinoが拡がったことを紹介した。ここではArduino Createというオンラインサービスに少しだけ触れて、この後のデモに繋がるストーリーとなった。
そしてIoTというインターネットに接続されるデバイスによって可能になるソリューションは、現実問題としてかなり複雑なものになってしまったとBenzi氏は語る。この問題を提起した上でBenzi氏は、もともとボトムアップの発想で作られてきたArduinoが多様なプロトコルの実装やIoTデバイスに採用されることで、「シンプルにテクノロジーを使えるようにする」という当初の目的を達成することが難しくなってきたと語った。そして紹介されたのが、Arduino Createというクラウドサービスだ。
これはWebブラウザ上で稼働するIDEやオンラインストア、それにArduino Yunなどをクラウド経由で接続するサービスで構成されている。
今回のセッションでBenzi氏が言いたかったことは、Arduino Createというクラウドサービスの紹介とその後に行われたコマンドラインインターフェースに関する内容だろう。ここまでの内容は、このカンファレンスに来ている人であればほぼ既知の情報ばかりだったろう。実際のArduino Createには、ワンボードマイコンを開発するためのWeb Editorやストア機能、Arduinoを使ったプロジェクトのポータルであるProject Hub、さらにクラウドサービスなどが実装されている。
そしてBack to the Futureとして紹介されたのが、コマンドラインインターフェースだ。
ここではGUIで利用できる機能をそのままコマンドで実行することで、すでにLinuxなどでCLIに慣れているユーザーにとっては、手慣れた開発手法を変えなくてもすむという辺りを強調した形である。
参考:Arduino from the Command Line
最後にArduinoのプロジェクトに参加するエンジニアを募ったところで、Benzi氏のプレゼンテーションは終了した。すでに多くのユーザーとデベロッパーからの支持を勝ち得ているArduinoだが、Arduino Createによってさらに情報が集約され、コミュニティの核として活性化が行われている印象を受けた。
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