確率分布を用いた意志決定

2008年10月29日(水)
坂田 祐司

欠陥発見密度の定量的分析

 欠陥発見密度がポアソン分布という確率分布のモデルに従うという前提にたてば、欠陥発見密度の定量的分析が可能となります。すなわち、システムを何らかの単位で分割した場合の分割単位での欠陥発見密度から、ポアソン分布の統計的性質を用いることにより、欠陥発見密度の平均と変動を算出し、どの程度の欠陥発見密度なら許容される範囲なのか分析するためのデータを分析することができるわけです。

 この分析を元にどのような対処を行うかを決定するためのツールとしては、QC7つ道具の1つである管理図が代表的です。管理図とは、作業工程における許容されるばらつきと何らかの問題に起因する異常なばらつきを統計的理論に基づき区別するために考えられたものです。特に、厳密な欠陥発見が求められる製造業の分野で用いられています。

u管理図

 欠陥発見密度を管理する目的の管理図はu管理図と呼ばれます。管理図の形としては管理線(1本の中心線)とその上下に統計学的に定めた管理限界線(UCL、LCLと呼ぶ)から構成されています。欠陥発見密度の場合、レビューやテストなどの作業工程における欠陥発見密度を表す値をプロットし、すべての点が上下2本の管理限界線内にあれば、安定した作業工程、そうでなければ何らかの問題が生じている作業工程であるとみなすことができます。

 一方、点が限界外にでた場合は、工程に異常状態が生じていると判断します。この判断結果から対処の必要性や対処の優先度を定めることができます。例えば、特定の分割単位に含まれるモジュールのみテストにおけるバグ密度が高い場合、そのモジュール開発に対する改善アクションを定め、改善のための原因がわかれば改善アクション作成計画からはずすといったような手順を定量的な裏付けから定められたプロセスで実現することができるわけです。

 ところで、欠陥発見という作業工程の良しあしを判断するための指標は、欠陥発見密度だけではありません。例えば図2のような指標があります。しかし、個々で示す指標の性質に応じ適切な確率分布のモデル(ポアソン分布、二項分布など)を用い、また適切な管理図(u管理図、x-bar-R管理図など)を用いることによって、統計的に正しく統一的な考え方に沿った管理が可能となるわけです。

SI企業の研究所においてソフトウエア工学の研究に従事。試験やプログラムの解析技術に興味を持ち研究に従事。研究の一方、ソフトウエアのライフサイクル全般を考慮した開発方法のあるべき姿を探っている。http://d.hatena.ne.jp/ysakata

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