確率分布を用いた意志決定
論理力による解決を俯瞰(ふかん)する
さて、本連載はプロジェクト管理というものに論理力または論理力を発揮するためのベースとなる考え方・分析技法を紹介してきました。ここですべてを俯瞰する形で本連載をまとめたいと思います。
図3は、論理力による解決の俯瞰をマインドマップのような形式でまとめたものです。論理力による解決は3つの手順に大別されます。事実を積み上げていき、その事実の積み上げを基に合理的な意思決定を行い、さらにその意志決定に基づき一貫した実行をするということです。
この3つの手順から成るということは比較的容易に理解されることですが、意思決定が必要になった時に初めて事実を集めようとするのではなく、通常時から現状や事実情報を把握しているべきであることと、意志決定が合理的であったとしても、一貫した実行が伴われなければ解決したとはいえないという点を強調するためにこのように記述しています。
連載の終わりに
意志決定は問題把握と問題解決からなります。問題把握が現状と目標のギャップであることから、現状の把握とともに目標を定めるための目的が明確化されていなければならないことも言うまでもないかと思います。また、問題解決は解決結果を評価・検証しより良い解決方法を実践していくことも重要です。
問題解決で論理力が最も問われる意志決定にはさまざまなアプローチがあります。明確に分けることは困難ですが統計的アプローチ、経済合理的アプローチ、不確実性を持つ環境でのアプローチという観点で整理できます。統計的アプローチの代表的な例は回帰分析です。
経済合理的アプローチとは経済合理性の観点で正しい決定をするための考え方で、限界利益、機会費用、限界効率、サンクコストなどの概念が有用です。最後に本連載で中心的に説明した不確実性を持つ環境で用いられるアプローチです。ここにフェルミ推定、ゲーム理論、ベイズの定理などが含まれます。
本連載では、「論理力を鍛える」をテーマにさまざまな理論を紹介してきました。また、プロジェクト管理を円滑に、効率的に進めるために、ゲーム理論やフェルミ推定、ベイズの定理などを適用できるのかを考察してきました。中には、少し状況設定がおかしい点もあり、コメントやブログなどでのご指摘を頂きありがとうございました。これを機会に今回紹介した理論について、少しでも興味を持っていただけますと幸いです。
なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしました。
ロバート・L・グラス(著)山浦 恒央(著)『ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ』日経BP出版センター(発行年:2004)
Stephen H. Kan(著)古山 恒夫(訳)富野 寿(訳)『ソフトウェア品質工学の尺度とモデル』構造計画研究所(発行年:2004)
福澤 英弘(著)『定量分析実践講座―ケースで学ぶ意思決定の手法』ファーストプレス(発行年:2007)
イアン・エアーズ(著)山形 浩生(訳)『その数学が戦略を決める』文藝春秋(発行年:2007)