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  インタビュー

オープンソースの資格制度を運用するLPIが日本支部を結成 LPI-Japanとの違いとは?

2018年7月31日(火)
松下 康之
LPI(Linux Professional Institute)のExecutive Directorにインタビュー。LPI-Japanとの違い、今後の方向性、資格保持者の扱いなどについて聞いた。

オープンソースソフトウェアの資格試験を実施する非営利団体のLPI(Linux Professional Institute、本部はカナダ、オンタリオ)は、日本においてLinux認定試験を始めとするオープンソースソフトウェアに関する教育活動を開始することを発表した。カナダの本部からExecutive DirectorのG. Matthew Rice氏、Chief Operating OfficerのMedina F. Dupuis氏が来日し、日本での活動計画などについてThink ITのインタビューを受けた。今回は2018年7月10日に行われた記者会見、翌11日のインタビューをまとめてお届けする。

Linux Professional Institute Executive DirectorのG. Matthew Rice氏

前提知識として日本におけるコンピュータの資格試験について歴史を振り返ろう。1969年に当時の通産省の施策として情報処理技術者認定試験制度が発足、翌1970年に初めての認定試験(第一種、第二種)が始まった。およそ50年前という歴史を持つのが日本におけるコンピュータ及びソフトウェアの認定試験制度だ。その後、1995年に発売されたマイクロソフトのWindows 95、1996年1月に発売されたWindows NT 3.51によってWindowsが認知され、Microsoftは資格認定プログラム、Microsoft Certified Professional Programを開始する。特定非営利団体であるLPI-Japan(正式名称は、特定非営利活動法人エルピーアイジャパン)が発足したのが2000年。マイクロソフトから遅れること約5年という時間を経て、資格制度を運営する非営利団体として結成された。ここから日本においてオープンソースソフトウェアに関する資格制度が立ち上がったと認識してもいいだろう。LPI-Japanの成井理事長によれば日本で既に延べ31万人がLinuxの認定試験であるLPICを受験、10万人が合格しているという。

受験者/認定者に関する出典: http://ascii.jp/elem/000/001/627/1627481/

ではどうして今回の発表のLPI日本支部とLPI-Japanという2つの組織が日本に存在するのか? LPI-JapanのLinuCとLPI日本支部のLPICは何が違うのか? という疑問に行き当たるだろう。両社の協議がまだ終わっていない段階でコメントするのは難しいが、結論から言えば、LPI日本支部はカナダLPI直結の組織、LPI-Japanは日本で結成されたNPO法人でカナダのLPIからライセンスを受けて試験を開発、実施していたという関係がわかりやすいだろう。

LPI-Japanの告知を読めば、LPI-Japanは日本におけるLinux認定試験(LPIC)の独占権利を保有しており、2018年6月に行われたLPI日本支部設立と情報公開のやり方に憤っているというのが分かる。またLPI-Japanは日本で独自に開発された試験、LinuCをLPICに入れ替えて今後もLinuxの認定試験を続ける予定であることが告知されている。

LPI-Japanが始めたローカルな試験であるLinuCがLPICと同等の資格とみなされるのか? はまだ決着していない。しかし実際にインタビューを行ってみるとそれは細かい問題であることがわかる。以下にLPIのRice氏とDupuis氏のインタビューを読んでみて欲しい。

ーーLPIの日本支部が発足し、日本での5年間の活動計画が発表されました。プレスリリースには「日本における約3億2,500万円の認定資格取得のコミットメント」というものしかありません。具体的に5年間で何をするのか教えてください。

Rice:LPIとしてはLPICの全ての試験のローカライズ、そしてLinux Essentialsという教育プログラムを日本で展開することをお伝えしたいと思います。日本支部では伊藤健二氏がコミュニケーション・ディレクターとして就任しました、これからもっと日本市場にコミットしていけると思います。具体的な受験者数やパートナーの数はこれから詰めていく予定です。

ーーLPI-Japanとは何が違うのか、それを教えてください。

Rice:LPI日本支部はカナダに本部があるLPIの支部、LPI-Japanは日本で設立されたNPO法人ですが、これまでLPICという試験をLPI-Japanによってローカライズして実施していたというのが事実ですね。ただ、昨年、我々は大きな変更を我々自身の組織に対して行いました。それは資格を取った技術者がメンバーとしてLPIの一員となるという部分です。それに関しては別に説明したいと思いますが、LPI-Japanと協議を行っています。また、LinuCとLPICの関係などについても協議を行っているところです。ただLinuCの「日本に合った試験」という部分に関しては私は内容を知りえませんので、コメントすることは避けたいと思います。

ーー試験制度であるLPICに関しては3つのレベルとLinux以外の技術にも拡大していく意向はわかりました。Essentialsですが、昨日の記者会見では座学が20%、実技が80%ということを説明していましたが、例えば日本の高校でそれを行うのは非常に困難ではないでしょうか?

LPIは教育の方法については特にこれを限定していません。実現には様々な方法論があると思います。例えばシスコが行っている認定プログラムであるCCNAのトレーニングクラスを使って高校生に無料のトレーニングを行うことも可能ですし、オンラインで自宅からトレーニングを受けることも可能です。自宅のPCに仮想マシンを立ち上げてLlinuxを操作するといったことも可能になるでしょう。我々が直接やる場合もあれば、パートナーが実施する場合もあります。実際に都内の高校でどれくらい実施できるのかは、これから検討したいと思います。

ーー先ほどのLPIメンバーについて、もう少し詳しく説明してください。

Chief Operating OfficerのMedina F. Dupuis氏(写真右)

Dupuis:これは我々が組織を設立してからずっと実現したいと思っていたことですが、資格を保有している技術者がLPIの一員として組織に参加して貰う、つまりガバナンスに参加できるようにする、というものです。同じような組織の例としてProject Management Institute(PMI)がそれにあたります。メンバーになった技術者は投票権を持ち、理事会の代表を選出できるようになります。

Rice:つまりLPICの資格を持った技術者がLPIの方向性の決定に参加できるようになり、同時にメンバーのネットワークの中でコミュニティの一員として活動できるようになることを目指しているのです。それを日本でも実現したいと考えています。

このインタビューから分かったことは、LPIとLPI日本支部は、LPIC試験を受けた技術者をお客として扱うというよりも、技術を持った専門職としてオープンソースコミュニティのネットワークの中で活躍して欲しいという強い意志だった。そして雇用者においてもワールドワイドで通用する技術者の選択にこの試験制度を活用して欲しいという思いだ。翻訳されたパンフレットには「採用担当者はオープンソースのプロフェッショナルを探しています」という被雇用者向けのメッセージが強調されているが、技術者同士でネットワークを作ればそれももっと楽になるという見通しを持っているのだろう。

日本においてLPI-Japanとのすり合わせが上手くいくのか? 資格の移行/相互運用は可能か? LPI-Japanが懸念する不正行為は防げるのか? など予断を許さないが、少なくともエンジニアを組織の一員として迎える発想はコミュニティを最優先するオープンソースソフトウェアの理念に沿ったものであろう。理想と現実が一致することは少ないとは言え、LPIの今後の動向には注目したい。

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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