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連載 :
  インタビュー

LPIの日本支部が新型コロナウィルス下でのビジネスをアップデート

2020年6月30日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
LPIのエグゼクティブ・ディレクターと日本支部の担当に訊いた彼らの「チャレンジ」とは?

Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアの資格試験を実施する非営利団体Linux Professional Institute(LPI、本部はカナダ、オンタリオ)は、新型コロナウィルスの影響に関する最新のアップデートをインタビューに応える形で実施した。インタビューに応じたのはエグゼクティブ・ディレクターのG. Matthew Rice氏と、LPI日本支部のコミュニケーション・ディレクター、伊藤健二氏だ。

自宅から参加するLPIのエグゼクティブ・ディレクター、G. Matthew Rice氏

自宅から参加するLPIのエグゼクティブ・ディレクター、G. Matthew Rice氏

まず新型コロナウィルスのためにさまざまな変化が起こっていますが、LPIにおいてはどうですか?

Rice:そうですね。いろいろなことが変わっています。多くの人が集まるカンファレンスなどは、すべてオンラインのイベントになりましたし、国によってはまだ感染が拡がっていて厳しい状況です。特にブラジルなどは特に大変な状況です(注:インタビューは2020年6月4日に行われた)。しかし我々の活動自体はそれほど変わっているわけではないのです。コミュニティを活性化して、試験を実施するという根本は変わっていません。

KubeConなどの大規模なカンファレンスもすべてオンラインになろうとしています。セッションをどこからでもいつでも見られるというのは大きな利点ですが、俗に言う「ホールウェイセッション」つまりオフィシャルなセッションではなくその場で質問したり、カンファレンス会場で知り合いと雑談したりするような機会はなくなりました。フレッシュな情報を得るというイベントでの重要な利点がなくなっていますよね。

Rice:それはその通りです。これからはコミュニケーションの方法も変わっていかざるを得ません。

会場に集まって試験を行うこともできなくなっていると思いますが、オンラインで自宅から試験を行うというのは難しくないですか?

Rice:実際に我が家には高校生がいますが、彼らも新しい生活に適応している過程にあります。高校生にできてビジネスマンにできないということはないと思いますね。逆にこれまで試験センターのある所まで移動しなければいけなかったエンジニアにとっては、利点が大きいと思います。

伊藤:実際、すでに海外ではオンラインの試験が始まっています。MicrosoftやCiscoなどの資格試験はすでにそうなっていますが、試験官が受験する人をテレビ会議システムを通じて見ていますし、試験の始まる前に試験を受ける部屋をカメラで撮影して確認してもらわないといけません。当然、カンニングペーパーを貼ることもできませんし、スマートフォンも別の部屋に置いておかないといけません。試験中にカメラから顔が外れるのもNGです。こういう厳密なルールの下で試験を実施しますので、試験会場で試験を受けるのとあまり変わらないようになっています。

Zoomのバーチャル背景を使いこなすコミュニケーション・ディレクター、伊藤健二氏

Zoomのバーチャル背景を使いこなすコミュニケーション・ディレクター、伊藤健二氏

現在はLinuxに関する資格試験、そしてトレーニングなどがありますが、これからはKubernetesに代表されるようなクラウドネイティブなシステムに対する資格試験も必要では?

Rice:すでにDevOpsに関しては試験ができています。Kubernetesに関しても対応をしたいと思います。今のところ、Linux以外にBSDに関する試験、そしてよりエントリーレベルの試験となるEssentialsシリーズを拡充したいと考えています。まだ計画中という段階ですが、セキュリティ、IoTやエンベデッドに関するもの、そしてWebDevというWebのデベロッパーに対する資格試験を検討中です。我々は毎年、多くの新しいチャレンジをし続けているんですが、今年は新しいことを始めるよりも始めたことをちゃんと形にするということに注力したいと思っています。

オープンソースソフトウェアをビジネスで使うというのはもう当たり前ですが、その時に大きな関心としてライセンスがポイントになってくる場合があります。つまりベンダーが開発した製品ではなくコミュニティが開発したソフトウェアで、ライセンスによってはビジネスでは使いにくいようなケースですね。そういうことも踏まえてデベロッパーであってもオープンソースソフトウェアのライセンスに関してはちゃんとした教育が必要なのではないかと思いますが、それについてはどう思いますか?

Rice:同感です。なのでLPIとしてはBusiness of Open Source(BOSS)という試験を開発しています。これはLinuxのようにテクニカルな内容のものではなく、ビジネスの中でオープンソースソフトウェアを使う際に必要となるライセンスなどを理解するものになる予定です。

これは私の感想なんですが、日本人は会社に対する帰属意識が強いためにあまりコミュニティ活動がうまくない、持続させるのが下手なのではないかと思います。オープンソースソフトウェアに関してはコミュニティが活性化して持続し、拡大していくことが重要だと考えますが、現在の状況下ではさらに難しくなっていると思います。それに関しては何かコメントはありますか?

Rice:それは日本だけではなく世界中どこでも起こっている問題ですよ。ただ、ひとつ言えるのはアメリカ人もカナダ人もある姿勢というか態度がポイントなんですね。ちょっと話題がずれますが、マレット(Mullet)というヘアスタイルがあります。これはまぁ、ちょっと笑っちゃうようなヘアスタイルなんですが、ここで言いたいのは「Business on Front, Party in the Back」つまり正面はマジメだが、バックヤードではパーティをしているみたいな状況を我々は好んでいるということの現れだと思うんですよ。だからマジメにやる部分と楽しむ部分を同時に持っている、それを当たり前と思う姿勢、態度、それがコミュニティの持続には必要なのではないかなと思いますね。

大変ダサいと評判のMulletを解説するRice氏

大変ダサいと評判のMulletを解説するRice氏

最後にLPIの最大のチャレンジはなんですか? 今年の目標と言っても良いかもしれませんが。

Rice:LPIの課題は常に「Too Much, Too Fast」だと思いますね。我々は多くのことを始めてそれを常に並行で実行している、そのためになかなかちゃんと形にして終わらせることができないでいたわけです。先ほどコメントしたように、今年はちゃんと形にするということに集中していきたいと考えています。

伊藤:日本のビジネスに関しては新型コロナウィルスの影響で確かに4月の受験者数は減りましたが、それは実は一時的な現象で5月にはまた前年比を超えているような状況になっています。なのでこれからもビジネスとしては順調に推移していくのではと思っています。

LPI日本支部は新型コロナウィルスの影響を受けつつもビジネスとしては堅調であり、テレワークの影響で多くのベンダーが実施する教育と試験がオンラインへの移行が促進された結果、日本語対応も加速されているという。

集合しない教育や試験という新しい方法に適応することが、これからのエンジニアにとっては必須要件だが、これはすべてのビジネスパーソンにとっての常識になるだろう。LPIの「今年は形にする」というチャレンジに注目したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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