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なぜ動画ファイルにはエンコードが必要か

2008年11月6日(木)
栗原 寛

PCのRGBとビデオの色味について

 コーデック圧縮技術の飛躍的向上により、今までの「動画が動いていれば良い」から、「よりきれいに」という画質向上の要望が高まっています。現に、H.264やOn2VP6などは、細かい職人的エンコードセッティングをしなくとも、デフォルトで驚くほどきれいにエンコードしてくれます。

 ところが、ビデオ映像を実際にエンコードしてみるとわかるのですが、ビデオをTVモニターで見るのに比べ、PCモニターの方が「くすんで見える」ような状態になります。特に、CM映像の動画配信では、そのようなクレームがクライアントから寄せられることがあります。

 この原因はコーデックの問題ではなく、実は色味補正の問題なのです。結論からいうと、PCモニターの色味と映像信号の色味とで信号領域が違うからです。その違いとして、映像信号の白はPCモニター上では完全な白ではなく、映像信号の黒はPCモニター上では完全な黒ではないということが挙げられます。

 専門的になりますが、Photoshopなどの設定でわかるように、PCモニターのRGBは0から255の256階調です。ところが、映像信号は16-235の220階調しかないのです(特に現在使われている地上波NTSC映像信号はそうです)。映像信号の黒はちょっとグレーっぽい黒で映像信号の白はちょっとグレーっぽい白なので、くすんで見えるのはそのせいです。

 この問題については、映像信号の220階調をRGBの256階調に伸長してあげることで解決します。(図3-1)グレーっぽい黒を本当の黒に、グレーっぽい白を本当の白にし、そのほかの色も一緒に伸長してあげると本当の色味になります。

 図3-2はcleaner(http://www.too.com/digitalmedia/index.html)というソフトウエアです。左の映像が元のビデオ映像で、右の小さな映像が左右に区切られていますが、区切られた左側が補正前の映像(左の大きい映像と同じ色味)、区切られた右側が補正後の映像です。違いは明らかです。

色味の補正方法

 設定方法は、エンコードソフトによって違うのですが今回はCleanerを使って説明します。

 フィルターセッティングボタンからビデオのタブを選択して、カラーカーブ(図3-3)を調整するだけです。白い方の235を255で出力してあげて、黒い方の16を0で出力してあげます。これで、220階調が256階調に伸長するわけです。

 ほかのエンコードソフトでも同様の設定項目があると思いますので、確認してみてください。特に、CMや映画などの映像制作予算に余裕がある映像は、ビデオ編集時に映像信号をしっかり管理して制作していますので(NTSC映像信号など)、この220階調をRGBの256階調に伸長してあげるだけで、十分画質が取り戻せます。

 次回は、映像素材の受け渡しについて説明します。動画配信を行っていると、えたいの知れない映像データを受け取る場合があります。この対処法についても説明します。

 なお、本稿の執筆にあたって、以下を参考にしました。

「グーグル脅威論なんて、くだらない 特別対談 中島聡×西村博之」『ascii』ASCII(発行年:2007.12)

川上 一郎「デジタルシネマシアターのコントラストと階調再現  川上 一郎」『月刊 フルデジタルイノベーション』株式会社ユニワールド(発行年:2007.10)

株式会社アトミックPV
ビデオ制作会社でビデオエンジニア・ビデオカメラマン・ディレクター・ビデオ企画制作マーケティングに従事した後、フリーとして独立。2001年にWebストリーミングコンテンツ制作業務を開始。2003年有限会社アトミックPV設立。2008年株式会社アトミックPVに移行。動画配信を活用したビデオ制作、ビデオ・ストリーミング動画配信コンサルティング業務などを手がけ、現在では売上高数千万円~連結十兆円規模の企業様まで幅広くビデオ制作・動画配信のお手伝いをしています。http://www.atomic-pv.jp/

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