「それ本当にITでなんとかなりますか?」― 行政がTechと出会ったらこうなった

2020年3月18日(水)
たくまのりこ

アイデアソン「〇〇(社会課題)をITで解決しよう」

トーキングセッションの終了後、休憩をはさんで、本日のメインとなるワークショップセッションが行われました。トーキングセッションで辻さんがPLY OSAKAの活動として紹介されていたアイデアソンを体験! 「〇〇(社会課題)をITで解決しよう」をテーマに、参加者がアイデアを出し、ITを利用した解決策をメンターのアドバイスのもと模索していきました。

ここからは辻さんファシリテーションのアイデアソンが始まります!

まずはアイデア出し。ここでは、あまりジャンルを絞らず、社会の中で個々人が課題と感じる課題を上げていきます。除雪作業から地方でも英語学習の環境など、様々なアイデアが出てきました。

書けた人から自由に見て回り、他の参加者の感じている課題をシェア。さらに自己紹介と自分の課題を発表していきます。

自己紹介&課題を発表。制限時間30秒で熱い思いを超簡潔に

ひとりひとりのアイデアがその場でグラレコに。グラフィッカーも公務員!

次にチームづくりです。自分と近い課題を感じている人と組んでいきます。ここで巨大ポストイットが登場。小さなポストイットをどんどん貼っていくことで課題をさらに細分化し、マッピングすることで問題を整理できます。ワークにはアイデアソンを何度も開催されてきたPLYのノウハウがたくさんありました。

課題を可視化&整理してその解決策をチームメンバーと話し合います

その後、さらにメンターセッションでアイデアの具現化を図ります。ここまでチームで考えていた「こんなものがあれば良いのかな」というイメージがどんどん現実味を帯びた案となっていきます。

横井さんと共に、メンターとして駆けつけたマイクロソフト社Azure AIの小田祥平さん

メンターの皆さんは質問に具体的な技術面のアドバイスをするだけでなく、「なぜそれをしようと思ったのか」「どのような問題を解決するためにこの技術が必要と思ったのか」と問いかけ、トークセッションで森さんがおっしゃっていた「本当の課題は何ですか?」をさらに深めていく姿が印象的でした。課題によって本当に必要な「道具」も変わってくるので、アイデアを揉んでいく上で大切なことのひとつではないでしょうか。

横井さん「それ、技術的にはできますよ。すぐにできます。でも、なぜそれをやるのですか?」

最後は、グッと深まったアイデアとその解決法をチームごとに発表! ここでは、そのいくつかのアイデアを紹介します。

『文書による通知、申請をなくすためのオンラインシステム』

役所に出向かずにメールやLINEなどオンライン上で申請が可能なもの。課題の「本人認証をどうするか」については、ワンデイパスを発行するなどの対策が。また販促としてLINEスタンプを作成するなど、システム面だけでなく、導入するための流れも考えられていました。

『普段から顔の見える交流を作る場づくり』

オンライン利用を発表するチームも。住民の交流をオンライン化することで、リアルではなかなか会えない人とバーチャルな世界で繋がれる場づくりを提案。災害時などにいきなり繋がりを作るのは難しいので、日頃からこのような場を設けることで、いざという時の備えにもなります。

バーチャル世界で開かれる自治会ツールは「生活が繋がる手段」としての道具

『窓口業務のチャットボット化』

市民にとってわかりにくい法律を説明してくれたり、職員間で前任者の引き継ぎをスムーズにしたりなどの狙いがあります。チャットボットは「対話(chat)」する「ロボット(bot)」を合わせた対話型AIロボットですが、よくある質問などを答えられるロボットがいることで、市民はよりスムーズに知りたいことを知れ、職員はより難易度の高い法令についての説明に時間を割くことができるようになります。

AI搭載の窓口業務担当チャットボット「エイ アイオ」さんはレトロタイプのおじさん

『生きる力が身に付く学校』

子どもの頃からの海外との接触や、社会や企業との関わりを持てる仕組みで、子どものうちから自然と社会と繋がるためのコミュニケーションを学べるというもの。これから進むであろう子どもにひとり一台タブレット配布によって、海外の方とのやりとりを翻訳機能を使ってサポートしつつリアルはコミュニケーションをとって海外の生徒と一緒に授業を受けたり、空き教室を企業のテレワーク場所として解放したりすることで、働く姿に触れることができます。

各グループの発表後は、各メンターと代表の川那さんからそれぞれの視点で良かったと思うチームを表彰しました。

表彰式の後、川那さんより「今日はあくまでもきっかけ。今日のことをもっとローカル化して、自分ごとにしてほしい。どう活かしていくかを考えてほしい」と挨拶。盛況のうちイベントは終了しました。

「関西のよんなな会メンバーからもアートなイベントが出てくるとうれしい」

誰のためのアート、何のためのIT

6時間にも及ぶイベントから見えてきたメッセージは「ITという道具で叶えられることはたくさんあるが、その道具を使う公務員が目指す姿は?」という、イベント告知の印象から、よりグッと踏み込んだ内容でした。

感想を伺うと、「ひと言いただければ」というこちらの予想に反して、熱い想いが止まりません。ここではその一部を紹介します。

【民間(公務員以外)の参加者の感想】

  • 民間企業としては、良いと思っても利益の出せないものはできない。でも行政ならば社会が良くなるために進めることができる。伸びしろがあると思った。
  • 仕事上で行政の人と話す機会があるが、一般的には民間とは距離があるように感じる。せっかく「良くしよう」という気持ちがあるのに、壁がありもったいない。その気持ちがもっと伝わってほしい。

【公務員参加者の感想】

  • これから残っていくには0→1が必要、でも苦手意識がある。今日は刺激と情報のあるイベントだった。
  • 参加前は「クリエイティブって何ができるんだろう」と思っていたけど、イベントを通じて結構色々できるのだと思った。でも「行政がやる意義は何だろう?」と考えさせられるイベントだった。

感想を伺うと、どなたも少しモヤモヤしている印象で、イベントに参加することでわかったことがあったと同時に、さらなる問いが自分の中から出てきているようでした。このモヤモヤがこれからアートとなっていくのでしょうか。

* * *

「地域住民の生活環境を良くしたい」という思いを叶えられるかもしれないIT。住民の顔が見えている行政と、ITの使い方がわかる技術者が同じテーブル(バーチャルでもOK)につき、それぞれが課題と解決策を持ち寄れば、本当にITでなんとかなってしまう日もそう遠い未来ではないのかもしれません。

フリーランス・ライター/イラストレーター
大阪生まれの大阪育ち。語学学校等業種の違う企業3社にて勤務するものの、体力がないことを悟り、週5日勤務を諦めフリーランスとなる。文章を書けばライターと、絵を描けばイラストレーターと呼ばれるように。人生の目標は生きる。死ぬまで生きます。

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